24話 藤野 玄人、渡されました。
ガンガンガン、といきなり、音。
「なんだよ、こんなに早くから……」
「おおーい玄人!起きろー!」
外から聞こえてきたのは、ジャックの声。俺は寝ぼけ眼で玄関へ向かう。
「なんだよ……」
「お前、いま何時か知ってる?」
「何時って……8時だけど?」
「じゃあこっから第2闘技場まで何分かかるか知ってる?」
「…………なにそれ」
「やっぱりか……集合時間は午前八時半、こっから第2闘技場までは三十分だ。早く支度しろ」
なーるほどね。つまり、俺はいまピンチとな。
「あいわかった」
俺は踵を返し、クローゼットから服を取り出し、今着ている服を脱ぎ捨て、出した服を着ながら顔を洗う。その二つが終わったところで、パンを口に押し込む。そしてまた、玄関へ向かう。
「ほっへ、ひへふほ!」
「すまん、なに言ってるか分からんがもう行けるのか?」
あれで伝わらなかったのか。
俺は、ぶんぶんと頭を縦に振りまくる。
「わ、分かった分かった、じゃ、飛ばすから手掴んでろ!」
俺は言われるがままにてを掴む。そして、次の瞬間。
「《レフォースα》《レフォースα》《レフォースα》!」
あっこれやべえやつだ、と思い、パンを食いちぎり、《冷蔵庫》に仕舞い、口の中のパンを飲み込む。
「いくぞぉぉぉぉぉ!!!」
「おいまっ…………でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
死ぬ。やばい。
「ひゃっほーーーぅ!」
え?なんで平気なの?てかみんな頭大丈夫なの?キャルロットといい、ジャックといい……
それから数分間地獄を体験した後、俺たちは第2闘技場についた。
「あ゛ーー……死ぬ」
「しっかりしろー」
こいつ、誰のせいだと思ってんだよ……
「ほら行くぞ、向こうだ」
そう言って、ジャックは俺を引きずっていく。
「ちょ、まて……吐く……」
「そうか、トイレはあそこな」
「……行ってくる」
くっそ、他人事かよ。あー、ヤバい。スッキリしとくか。
「@#vumyjgh?"p#×+☆49|6○78〜×」
……ふぅ。これでよし。
「ごめん、もう大丈夫だ」
「そんじゃ、行くか」
「あ、ちょっと待って」
「ん?どうした?」
「小」
「わかった、早くしろよ。もう直ぐ始まるから」
俺は再びトイレに戻ってきた。
「めがみさまー、今日もお見守りください」
と、お祈りしておく。さっきジャックに嘘をついたのは、この世界の人がお祈りを捧げるのが一般的か分からないから。もしそうでないなら、変な目で見られてしまう。
「今度こそ行けるぞ」
「おう」
「そういえば、ジャックは控え室のところまで入っていいのか?」
「参加者だから大丈夫だ」
と、俺たちが控え室に向かおうとすると。
「おーい」
後ろからキャルロットの声。
「おはよう。どうしたんだ?」
「おはよう玄人、校長先生が呼んでるわ」
「あー、分かった。どこにいる?」
「校長室。場所、分かる?」
「おう、大丈夫だ」
「ならいいわ。じゃ、私観客席で玄人試合観るから、負けちゃダメよ?」
「頑張るよ」
「失礼します……どうしました?」
「君にこれを渡そうと思ってな」
そういうと、校長先生は小さな四角いケースを渡してきた。その中には、紫色のなにか。
「なんですか?これ」
「魔力の塊だ」
「なんで俺に?」
「昨日君が帰ってから教員で話し合ったんだが、とある結論が出てな。強い魔法力を持つ犯人が、【暴化】を付与させて終わりだと思うか?」
「確かに、そう言われると」
「おそらく、今日から明日、何か仕掛けてくるだろう。その時に備えて、だ」
「これを俺に渡したってことは、俺が解決するんですか?」
「いくらなんでもそれは危険だ。だから、ほかの教師が君たちのところまで着くまで、時間稼ぎをしてほしいということだ」
「……わかりました」
「くれぐれも悪用はしないでくれよ?」
「しませんよ、そんなこと」
犯罪みたいなことはしたくないしな。
「他の人には渡したんですか?」
「いや、君だけだ」
「なんで俺だけなんでしょう?」
俺は気になったことを素直に聞く。
「それは、君が《転生者》だからだ。他の者と比べると、一番君に動機がないからな」
「なるほど」
その過程を知りたいものだが。
「おっ、そろそろ時間になる。君ももう行くといい」
「わかりました、ありがとうございます」
「健闘を祈るよ」
『Aブロック準決勝を行います』
「Aブロック準決勝、藤野 玄人対デウキス=アイク……始めっ!」
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