side.M
面接当日、ハンガーに掛けていたスーツは綺麗にアイロン掛けがされていた。
親の優しさを感じながらも、どこか息苦しい。
スーツに袖を通しながら、深呼吸した。
大丈夫。
自分に言い聞かせた。
面接場所は車で15分程度だったが、1時間も前に家を出た。
9時15分からの面接で、40分も早く着いてしまった。近くの24時間スーパーでパンとコーヒーとフリスクを買った。
会社の前にあるコインパーキングに車を停めて、朝食を食べた。タバコタイムに入る頃、ちょうど従業員の出勤時間らしく、バックミラー越しに会社に入って行く人の姿を見た。
男性が多いなという印象だった。
スーツ姿の人は多分営業。私服の人は内勤。パッと見てすぐ分かるような雰囲気だった。
営業職は初めてではない。人と話すのは上手い方だった。
9時10分に会社に入り、面接を終えたのが9時50分。
大体の経歴を聞かれ、最後に女性の社長から車の持ち込みを了承するか聞かれた。
40分でここが私の勤務先になった。
愛車の“ボレロ”に結果を報告した。
今後一緒に営業に出るパートナーだ。誰よりも信頼できるパートナー。
就職の前祝いにドライブに出掛けた。入社は明後日。私が最後の面接で5人目の内定者だそうだ。
今後5人で営業活動をする。
Web広告の広告主を集めるのだ。地域に根差した事業をもともと展開しているので、その顧客への勧誘がメインだという。以前の飛び込み営業とは違うという点で少し安心した。
最初の1ヶ月はWeb事業部での研修なので、初日以外はスーツで無くても良いとのこと。
実家でのんびりする気になれなかったので、肩の荷が下りるような気分だった。
一応、伸也には連絡を入れた。付き合っているのかはよく分からないが、そこをハッキリしたいとも思わない。ただ、お世話になっていることと、私のことをしっかりと見てくれているのは確かだった。
今回の仕事は基本、日曜日休みで土曜日は月に一度だけ部署内で休みを順番に取るというスタイルだ。
年間休日125日以上無いと伸也は賛成しないだろう。
彼は固い人だった。
電話ではなくメールで済ませた。電話だと面倒なことになるかも…という防衛本能だ。
仕事で必要になりそうな物を買い揃え、入社日を待った。伸也はやはり賛成していないようだった。




