side.K
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折り紙の鶴を本棚に戻し、肩に鞄を掛けた。
一年ぶりに帰省した実家はあまりにも心地よく、現実に戻るのが嫌になる。
少し大きくなった姪が折り鶴をお土産にくれた。パソコンのディスプレイが並ぶ自分の部屋にはかなり不釣り合いな物だった。
1月の冷たい風が頬を打つ。
今年こそは実家に戻ろうか。
俺の実家は香川県。家の周りは畑や山ばかりだが、仕事さえ選ばなければそれなりに就職が出来た。
でもIT関係の仕事に就きたくて2年通った専門学校で得た知識と技術を活かせる職場は地元にはなかった。
そんな理由をつけて、香川から単身大阪に出てきたのが5年前。
家を出た本当の理由は違う。
ただ都会への憧れを捨てられなかっただけだ。
今働いているのは広告代理店。Web部門のクリエイターというのも名前だけで、ほぼ事務と変わらないような仕事内容だ。しかも大阪の中心からはかなり外れた場所にある。
香川の実家暮らしでは問題無い給与と勤務条件だが、大阪の一人暮らしの若者には厳しいものだった。
親には充実した日々をアピールするが、実際は違う。
今の自分に夢などは無い。毎日を無難に過ごし、家族や友達の前では少し見栄を張る。
そんな毎日への不満と将来への不安だけが5年かけて大きくなった。
ただ、見栄でも負け惜しみでも無く、「まだやれる。これからだ。」と思っている自分もいた。
マフラーを忘れたことに気付いたが、戻る気も起こらない。戻れば会社に行く気持ちまで無くなってしまいそうだった。
気にせず自転車を漕ぎ続けた。寒さが身に滲みる。




