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01 第1章:クビになった勇者と、クーデターに遭った魔王

第1巻:W追放と、伝説の「コタツ&温泉」開眼


第1章 第1節


王都の王宮大広間。絢爛豪華なシャンデリアが眩しい光を放つその場所で、最高峰のパーティーと称される「勇者パーティー」のメンバーが集結していた。しかし、そこに漂う空気は氷のように冷え切っている。


「――レオン。もうお前をパーティーに入れておくわけにはいかないのよ」


そう冷ややかな声で告げたのは、聖女マリアだった。純白の聖衣に身を包み、人前では慈愛に満ちた微笑みを浮かべる彼女だが、いまレオンに向けられている瞳には、冷ややかな侮蔑の色しか宿っていない。


「そうだ、レオン。お前の戦い方は地味すぎる。派手な魔法で敵を焼き尽くすわけでもなく、神技のような剣閃で一刀両断するわけでもない。ただ地味に敵の隙を突き、いなし、ひっそりと片付けるだけ。そんなの、見ていて映えないんだよ」


それに続くのは、王国最強の「剣聖」と謳われる青年、レイガーだった。彼は手入れの行き届いた聖剣を肩に担ぎ、鼻で笑うようにレオンを見下ろしている。


当事者であるレオンは、使い古されたボロボロの銅の剣を腰に下げたまま、ぼんやりとした目で二人を見つめていた。

(ええっと……何だっけ。確かに出発したときは『魔王を倒して世界を救う』とか息巻いてた気がするけど……もう何ヶ月も歩き回って、正直めちゃくちゃ面倒くさいんだよな……)


レオンの本音は、顔の筋肉や瞳の奥に微かに滲み出ていた。しかし、彼が使えないのは派手な大魔法や天変地異を引き起こすようなチートスキルではない。彼の能力は、地味なパッシブスキルばかりだった。周囲の環境をわずかに快適にしたり、仲間たちの体調や精神の調子を常に一定に保ったり、戦闘における不快な疲労感を極限まで緩和したりする――いわば「だらだらと快適に過ごすための環境づくり」に特化した力だったのだ。


実際、レオンがパーティーにいる間、剣聖も聖女も一切の肩こりや疲労を知らず、ダンジョンの中でも常に万全のコンディションで戦うことができていた。しかし、彼らはそれを「自分たちの才能と努力の結晶」と勘違いし、レオンの存在価値を「何の派手な技も使えないお荷物」と切り捨てたのである。


「魔王城まであと一歩というこのタイミングで、お前のような足手まといを連れていくわけにはいかないの。幸い、私たちの実力はすでに世界最高峰に達しているわ。これ以上、お前の泥臭いサポートなんて必要ないのよ」


マリアはそう言い放つと、懐からずっしりと重い金貨の入った革袋を取り出し、レオンの足元に放り投げた。チャリン、と乾いた音が大広間に響く。


「これは手切れ金だ。この国から今すぐ出ていけ。二度とその冴えない顔を私たちの前に見せないでくれ」


レイガーも鼻で笑いながら言った。

「せいぜい、田舎の畑でも耕して一生を終えるんだな。お前にお似合いの場所はそこだ」


二人はレオンの返答すら聞くことなく、背中を向けて歩き去っていった。華やかなマントを翻し、次の決戦地である魔王城へ向けて気宇昂然と旅立つ二人。その背中を見送りながら、レオンは心底ホッとした息を漏らした。


(……やった。これで、あのめんどくさい魔王討伐の旅から完全に解放されたぞ……!)


レオンにとって、世界を救う英雄の称号も、数々の美女や英雄たちに囲まれるプレッシャーも、すべてが重荷でしかなかった。戦う必要がないのなら、これほど嬉しいことはない。


レオンは足元に転がる金貨の袋を拾い上げると、トントンと埃を払い、嬉しそうに懐にしまい込んだ。

「よし。それじゃあ、どこか誰もいない、めったに人が来ないような遠くの農村へでも行って、死ぬほどだらだら暮らすとしようか」


こうして、勇者レオンの「世界一ハードな戦いの旅」は終わりを告げ、誰にも邪魔されない「極上のスローライフ」への第一歩が、静かに、そして盛大に幕を開けたのだった。

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