第二十八部 真祖 第二章
「前も逃げたでしょ。ああだから、候補になっても誰も相手しないのよ」
陽菜さんが苦笑したる
「一応、大和朝廷に抵抗したから土蜘蛛とか言われてたんじゃないの? 」
「戦うだけが抵抗じゃ無いからなぁ」
槙の言葉に渡辺陸将補が答えた。
確かに逃げ続けるってのも戦い方の一つなのは間違いないからなぁ。
「で、どういうの? そのヴァンパイアの真祖が来たら? 」
「話すのなら、ヴァンパイアが先に手を出してきたと言う話で押す。とりあえず、先にこちらの身内に手を出したのはそちらだと。それで突っぱねる。それで押し通す」
陽菜さんの質問にとりあえず、こないだ考えてた話をした。
「「「「「大おおおおおおおおお! 」」」」」
皆が一斉に拍手して喜んだ。
はっ、しまった。
分からないからどうする? って頼りなく振舞うべきだったか。
ただ、有希が巻き込まれたのも、俺のせいだし、ぶち殺したのは婆ちゃんだし。
そこまで考えが至らなかったぁぁぁ!
などと俺が頭を抱えて、心の中で叫んだ。
やってしもうたぁぁぁ!
「馬鹿だなぁ」
などと槙が嬉しそうだ。
「お前は今後わしと一緒に我が君に仕えるんだから、そう言うのでなくて進言くらいしろ」
六兵衛さんが槙に厳しい。
でも、進言とかいらない。
それだと俺が妖の王に決まるじゃん。
「諦めたら? 」
陽菜さんと香織が言う前に付き合いの長い彩が呆れたように突っ込んできた。
「なんで、彩まで言うの? 」
「いや、向こうの指定だし。あっちでもそう言う認識ってことでしょ」
「それはあくまで御前が余計なことを言うからだし」
「いや、普通に<婆娑羅>様がいる時点でヨーロッパではそう言う認識だと思いますけど。結構、名前は知られてきているみたいですよ。神楽耶様の名前で」
「それはどこかのアニメとかかぐや姫から俺の名前がとられたとか言うので仕方ないのでは? 」
「いや、普通に情報通とかいますしね。特に今回は100年空位の妖の王の四代目って話になると騒がれますよ。闇社会の一角に王国の様にって話なら、ヨーロッパならヴァンパイアとか、そう言う感じで知られている妖のマフィアみたいなのはありますが、何といっても先進国の一つであるG7の国に妖の自治区ってのは話が大きいです。しかも、認識されると妖が凄い戦歴を元寇から第二次世界大戦までで弾き出してきた事も認識されますしね。普通に戦争で凄い戦歴出してますよ、我々はね」
<蒼月>さんに言い込められてしまう。
「いやいや、それは初耳だな」
槙が横で呑気そうにつぶやいた。
「まあ、妖の城が出る寸前あたりにお前に話すつもりだったからな。そういう訳で、妖が認識されたら人間として溶け込んでた連中はそれなりに有難い反面、ややこしい部分もあるわけだ。強かった分だけな」
などと六兵衛さんがしみじみと話す。
「まあ、強者が日本で良いように暮らせる時代とは違うからなぁ。今は人権とかあるし。逆に人権に対して妖権みたいなのを三代目の妖の王は提唱してたが、そういうのも四代目は必要になるかもしれん」
渡辺陸将補の話で顔が歪む。
面倒臭いな。
「そういや、間宮さんとか天狗さんは? 」
「県警本部長の警備と警察のバックアップ全般に回っているよ。どこでやるかわかんないからな」
彩の言葉に渡辺陸将補が答える。
「今回はうちも災害出動の名目で出てるからな」
「え? 陽菜さんと香織しか若い人いないね」
「いや、さくらもいるんだけど、今電車で向っているから」
「電車なんだ」
「予算が無いもの」
「予算は増えたんじゃないんですか? 」
「国会で決まってからだから、降りるまで時間がねぇ。しかも、名目は別で出る予定だから。まだ妖は正式には認知されてないのでね」
などと彩と渡辺陸将補が切ない話をしていた。
「とりあえず、小腹が空くと駄目だから」
などと婆さんが握り飯と沢庵を添えて作ってくれた。
「でっかいおにぎり」
など有希が驚いている。
昔の日本人は馬鹿みたいに白飯で栄養を取っていたので、昭和の戦前くらいまでは、たまに信じられないくらデカい御握りで食べている地方もあったらしいが、うちの婆さんの御握りはその流れを汲んでいるからでかい。
そして、自衛隊の妖特科の爺さん達もその時代の人がいるので懐かしそうに食べていた。
「えええええええええええ? 参ったな? 」
六兵衛さんがスマホを見て絶句した。
「どうした? 」
「何かあるのか? 」
「参った。当たりだ。一番やばい奴だと思う。ここに来るって」
「は? 」
「待ち受けてんのは分かってんのに? 」
六兵衛さんの言葉に爺さんと渡辺陸将補が驚いた。
つまり、それだけ自信があるという事か。
凄いぞくっとしたらしくて、槙がバタバタ初めて、それを<ひとつ>さんが力で抑え込んだ。
「本当に敵の強さを察するんだ」
彩が驚くより感心していた。




