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三人目のSランク


「こんなところね。後は任せていいかしら?」

「オッケーよ。任されたわ」


 ダンジョン調査についての話し合いが終わったみたいだ。

 横で聞いていた限りでは、調査が終わるまで10階層は立ち入り禁止になるらしく、俺達は先の階層に進めなくなってしまった。

 ダンジョン攻略はしばらく休むことになるが、異世界に来てからほとんど休みなしだったから丁度良いかもしれない。


「それからカナタとイノリのランク昇格は通りそうかしら?」

「そっちは問題なし。ゴブリンジェネラルを倒した時点でEランク以上は確実だもの。後は試験さえ受けてもらえばすぐに昇格できるわよ?」

「「……ランク昇格?」」


 ギルドでの用事は全て終わりかと思いきや、急に知らない話が出てきたので思わず祈と声を揃えて問い返す。


「本当はダンジョンの攻略階層とか依頼の達成度を見て、昇格させるかどうかを受付嬢(わたしたち)が判断するんだけど……今回の件で二人の実力がFランクに収まらないって証明されたからね」

「なるほど……試験っていうのは?」

「ギルドが依頼した冒険者との一対一の模擬戦よ。大体は一つか二つランクが上の冒険者と戦うことになるけど、あくまでも実力を見る試験だから勝敗は関係ないわ」


 なら、俺達の場合はEランクかDランクの冒険者と戦うことになる訳だ。

 普段からリアと戦ってることを考えれば、そんなに難しい話じゃ……


「おいおい、随分と面白い話をしてるじゃねぇか」


 勢いよく部屋の扉を開け、話しに割り込んできたのは大柄な男だ。

 ……いや、本当にデカいな! 2メートル近くあるんじゃないか?


「面白いって……まさか自分が相手するなんて言い出しませんよね?」

「良いじゃねぇか。俺だって冒険者だ」

「その前に()()()()()()()でしょうが! ちょっとは立場を考えてください!」


 ……えっ、今ユリナさんギルドマスターって言わなかったか?

 このおっさんが……?


「相変わらずね、バルド。遠征はどうだった?」

「おお、姫さん。久しぶりだな! どうもこうも、若い連中を鍛えなおしてたらあっという間だったな」

「ん、誰?」

「この人はバルド・ロドメロス。ここカディア支部のギルドマスターでお母様やお兄様に並ぶSランクの実力者よ」

「おう、よろしくな!」

「ん、よろしく」

「よろしくお願いします。俺達は……」

(あん)ちゃんがカナタ、(じょう)ちゃんがイノリだろ。()()と話は受付の連中から聞かせてもらった」


 色々……ゴブリンジェネラルの件か?

 パラライズワスプに関してはユリナさんに口止めしてもらってるから知られてないはず。


「にしても、大物喰いをやってのけたにしては案外普通だな」

「どんなのを想像してたんですか……」

「そりぁおめぇ……なんか凄い感じだよ」


 豪快な人だな。

 でも、はっきり物を言う人は嫌いじゃない。


「それでどうだ? お前さん達の相手を俺がするっていうのは?」

「ですから……!」

「どうせ相手させる冒険者はこれから探すんだろ? なら俺が相手した方が探す手間が(はぶ)けるし、何より……」


 バルドさんがニヤリと笑う。


「俺がコイツらと戦ってみたいんだよ」











 結局、バルドさんの押しの強さにユリナさんの方が折れ、俺と祈の試験はバルドさんが行うことに。


「嬢ちゃんは斧、兄ちゃんは素手でいいのか?」

「構いません……そういうバルドさんも素手ですか?」

「おう、俺は昔から(これ)が武器だからな」


 ギルドの裏手にある空き地で俺と祈はバルドさんと対峙する。

 本来は一対一の模擬戦だが、『まとめて相手してやる』というバルドさんの言葉により、二対一の形式になった。


「では、始め!」


 リアが開始の合図を告げる。

 最初に仕掛けたのは祈だ。


「ん!」

「格上相手に真正面から突っ込んでくるその気概は悪くねぇ……が!」

「ん!?」

「ちょいと力任せが過ぎるな」


 白刃取り……しかも片手で止めた!?

 剛力の長斧でパワーアップしてるはずなのに……でも!


「ん!」

「お?」


 何らかの形で攻撃を止められるのは想定内。

 祈はすぐに長斧を手放し、バルドさんから離れる。

 そこに……魔力具現化で生み出した大剣を横薙ぎに振るう。

 距離的に俺が攻撃してくるとは思ってもみないはず。

 だが、


「おっと!」

「くっ!?」

「珍しい魔法……じゃねぇな。スキルか? 随分と馬鹿デカい剣を振り回しやがる」


 バルドさんは後ろに跳ぶことで回避。

 俺もすぐに距離を取り、祈の隣へ。


「素手と見せかけて大剣で不意打ちとはな……ちょっと驚いちまったぞ?」

「……どうやって避けたんですか?」

「あん? 見てから避けたに決まってんだろ?」


 祈の長斧を受け止めたのもそうだけど、どういう動体視力してんだよ……!


「さて、次はどうする?」

「……『岩よ、穿て、ロック・シュート』」


 祈が『ロック・シュート』をバルドさんに打ち込む。

 狙いは足止め……


「ふんっ!」

「にもならないか!」


 飛んできた『ロック・シュート』を殴って砕き、そのまま俺の方に向かってくる。

 すれ違い様に一太刀……いや、向こうに殴られる方が早い!

 甘い考えを即座に捨て、咄嗟(とっさ)に剣の腹で拳を受け止める。


「くっ!」

「剣でガードしたか……良い判断だ……が!」

「なっ!?」


 大剣に亀裂(きれつ)が走り、砕け散る。

 俺は後ろに吹き飛ばされてしまうが、


「ん!」


 バルドさんの背後には長斧を振りかぶる祈の姿が。

 死角からの攻撃。これなら!


「ふんっ!」

「んあっ!?」


 祈の渾身の一撃はバルドさんの豪腕に弾かれてしまった。

 そして、


「そこまで!」


 リアが叫ぶ。

 模擬戦終了の合図だ。


「中々やるじゃねぇか。まだまだ荒削りだが、大したもんだ」


 息一つ乱してない……か。

 リアもそうだったけど、俺達が目指す強さの壁は途轍(とてつ)もなく高いらしい。


「ど、どこが悪かったですかね?」

「悪いも何も、思ってたよりずっと良い動きだったな。ゴブリンジェネラルを倒したって聞いた時は魔物狩りばっかりさせてたのかと思ったが……しっかり対人戦のやり方も身に付いてやがる。息がぴったりと合ってて連携の練度も高い。だが……」


 じっと探るような目付きでこちらを見てくるバルドさん。

 な、なんだ?


「どうかしましたか?」

「……いや、なんでもねぇ。とにかく試験は合格。2人とも()()()()に昇格だ」

「ちょ、ギルマス!?」


 模擬戦を見ていたユリナさんがバルドさんの言葉を聞いて慌て出す。

 Dランク? Eランクに上がる為の試験じゃなかったのか?


「なんだ? コイツらの実力はDランクで間違いないねぇぞ」

「実力的にはそうですけど! 二人ともまだFランクなんで昇格はEランクにです!」

「飛び級でいいじゃねぇか。そんなもん」

「前例がありません!」

「ないだけで禁止はしてねぇだろ」

「そうですけど、手続きする私の身にも少しは……!」


 祈と一緒に言い争う二人を眺めていると、リアがこちらにやってきた。


「お疲れ様。二人共」

「……良いのか? 止めなくて」

「どうせバルドは言い出したら聞かないもの。しばらくすればユリナが折れるわよ……それよりも戦ってみてどうだったかしら?」

「デタラメだったな」

「ん、デタラメ」


 恐らく、二人がかりで比翼連理(エンゲージ・リンク)ありならリアには一撃当てられるかもしれない。

 でも、バルドさんにはそれだけやっても絶対に当てられない。

 AランクとSランクの力の差を思い知らされた一戦だった。

 だが、同時に一つの疑問も浮かぶ。


「……なあ、リア」

「何かしら?」

「あの人なら死の樹海を突破できるんじゃ……」

「無理ね。半日ももたないと思うわ」

「「それなんてスペラ〇カー?」」


 ……少し甘く見ていたかもしれない。

 オリアナさん、ウィリアムさん、そしてバルドさん。

 三人のSランクに加えて、冒険者や騎士団にAランクが数人。

 これだけの人材が揃っていて尚、出ることのできない森。


「ん、まとめるとしたら?」

「"始まりの街の外は高レベルモンスターがうろつくラストダンジョンでした"だな」

「……なろう小説?」


 まあ、冗談は置いとくとして……


「控えめに言って無理ゲーの類だな」

「ん、でも詰みゲーじゃない」


 ダンジョンでレベルを上げられるからな。

 それがなかったら間違いなく詰みゲーだ。


「勇者と聖女っていう前例もいるんだからクリア不能じゃない。なら、必ず攻略できるだろ」

「ん、燃えてきた」

「……ふふっ。本当に頼もしい限りね」


 へこたれない俺達を見て、リアは呆れた笑みを溢すのだった。


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