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虚しい聖夜と神様との邂逅

「――チアキ、その、早くしてくれないと私も恥ずかしいです……」


 神父の誓いの言葉が終わり、ゼフィが恥ずかしそうにこちらを見つめてくる。

 周囲の民衆は今か今かと私たちの式の様子をかたずをのんで見守っていた。壁際で立っている騎士の人々も同様だ。私たちの方をうかがいながらも、何かがあったときにすぐ行動できるようにひと時も気を緩めてはいない。特に騎士団長はいつも以上に気が立っているように思う。それが誰に向いているかは言うまでもないが。

 そんな中、私は何をしているのかというと、ただ単純に今の状況に陥ったわけを順番に振り返っていた。大切なのは落ち着いて考えることなのだ。どんなことが起ころうとも考え直せばきっと解決策が見つかる、なんてことはなかった。

 目の前のゼフィ、そしてすべての元凶であるあいつの話を聞く限りではここは私のいた世界とは違う世界、つまり異世界というものらしく魔法も女神も魔物までいるとんでも世界だった。

 私が今いるのはこの世界の中にある国の一つ、都市国家『リリウムレンジ』。今目の前にいる少女が治めている、小さく、だけど国民の皆が幸せいくらしている国。年端もいかぬ少女に国政を任せるのはどうかと思うのだが、この国では代々天命を聴ける人が国主を務めるという方針らしい。だからこのことに誰も違和感を覚えることはないようだ。先代が早くに亡くなって彼女は私がこちらに来るはるか前からこの国を統治してきた。今の民衆からの慕われようを見る限り、あいつの加護があったにしろ問題なく国を動かせていたようだ。とはいえ、実質的な政治はあの騎士たちがやっていたのは確かだろうけども。

 私はもう一度彼女に目を向ける。教会につるされたシャンデリアが彼女の銀色の髪を輝かしく染め上げている。髪と同じ色をした瞳にはこれから起こるであろう苦難や試練を覚悟しているように見えた。いや、確かに私は頼りなく見えるし、見ず知らずの人と結婚することになったら私だって緊張の一つはするけどさ、この婚約推し進めたのってゼフィ本人なんだよなぁ。騎士の言葉に耳も貸さずにさ。まぁ、彼女がそう言ってくれなかったら私はこの世から旅立っていたかもしれないんだけどね。異世界に飛ばされてすぐに殺されるとか笑いものにもならないよ。

 なぜ私がこんなことになってしまったのか。

 始まりは、傷心気味のところ突然現れたあいつとの出会いだった——。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「――君とはもう一緒に入れないよ。もう別れよう」

 十二月二十四日。世間ではクリスマスに当たる日で、私も世間のリア充同様恋人と一夜過ごそうと思ったのだが、出会ってそうそうフラれてしまった。彼はそれだけ告げると早々に去ってしまい、私は冷たい夜風の吹く公園で呆然と立っていた。

「……一体、何が駄目だったんだろ」

 あることをしでかして追い出される形で会社を辞め、親の言うように家庭を持とうと思ってアタックし続けてはきたのだが、早や二十連敗。さすがの私も気がめいってしまった。今回の彼は私の性癖も多少は理解してくれたから行けると思ったんだけど、二週間もしないうちにこの結果である。

「また仕事でも始めようかなぁ」

 しかしこの希望が彼氏を作ることよりも難しいことはよくわかっている。私がしでかしたことはすでに私がいたところからほかの会社にまで伝えられ、徹底的に手回しされてしまった。よっぽど閉鎖的な会社でなければ面接すら受けられずに追い出されてしまうだろう。

 だって仕方ないじゃん。据え膳食わぬはなんとやらっていうじゃん。あんなに無防備なの見たら手を出したくなっちゃうじゃん。

「はぁ、どこでもいいからに私のような人が生きやすいところに行ってみたいよ」

 こんな目にあっているのはこの世界が悪い、なんて子供が考えるようなことをつぶやきながら私はワンカップ片手に帰り道についていた。飲まなきゃやってられっか。あとのことは明日にでも考えて今日のことは忘れよう。そんなんことを考えながら道を考えながら道を曲がった時、私は突然現れた白い光に包まれてしまった。

 気が付けばそこは何もない白い空間……。なにこれ。もしかして私死んだの? 曲がり角でトラックと衝突してあっさり絶命? いやだよ、私まだ死にたくないよ。でもまだ三途の川見えてないからまだワンチャンあるかな。いや、むしろここまで何も見えないのならすでに渡り終わった後だったりして―—。

「――君の望みはわかったよ! その願い、叶えてあげる!」

「ふぇっ?」

 あることないこと考えていた私は背後から声を掛けられて変な声をあげてしまった。うら若き少女が言うなら可愛げがあるものなのだが、20を超えた私が言うと何とも言えない気持ちになる。しかしまぁ、後ろの誰かさんは何も気にしていないようだし、素直に現実に向きなおろう。

「僕の名前はルピナス! 君たちの言う異世界から来た女神さまだよ!」

 私はそう名乗った人物(神物?)からそっと目をそらした。

「ちょっと、そんなことされるなんて心外だよぅ。僕は悩んでいる君のためにわざわざこんな世界まで来たんだよ。まぁ、僕の一つ頼みごとがあったんだけどね」

 その女神さまは私の対応の小言を言いつつも勝手に話を進めくる。心当たりは……、なくもないのだが、まさか本当に私を別世界に連れて行ってくれに来たのだろうか。確かにそうと考えれば私の今の現状にも納得がいく。でもどうして私なんだろうか。この世界において別の世界に逃げたい思う人はごまんといるだろう。むしろ若者の多くはこの社会から解き放たれたいという願望にまみれているものだ。最近は特に異世界転生やら、異世界召喚やらが巷で流行っているから私が子供のころよりもそういった考えの人は多いだろう。となると――。

「じゃあ、私を選んだっていうのはその頼みごとが関係あるってことですか?」

「端的に言えばそういうことになるかな。えーと」

「……ああ、まだ名乗っていませんでしたね。私は桃瀬千秋といいます、ルピナス様」

「うん、ありがとう。あと、別に呼び捨てでもいいからね、チアキちゃん」

「いえいえ、さすがの私も女神さまを呼び捨てにするなどおこがましいですよ。それに私たちまだ出会ったばかりですし。

 それで、頼み事とはいったい何でしょうか?」

 いくら許可をもらったといっても神様相手に呼び捨てするほど落ちつぶれてはいません。まだ何をされるか分かったものじゃないし、多少猫かぶっておいた方が得策だろう。

「……みんな僕のこと敬称つけて呼んでくるからなんか壁で隔たれているみたいでちょっと寂しかったんだよね。

 まぁいいや。頼み事の話だったね」

 女神は悲壮感漂う顔を見せていたが、急に真剣な顔をして私を見つめてきた。

 わざわざ異世界まで来て私を迎えに来たって、いったいどのような事情があってのことだろうか。よく聞く話では魔王が現れたとかそういうの聞くけど……、まさか私、実は特別な力を持っていたとか!? 昔彼女のいる世界で強大な力を持っていて、それが原因で記憶を抜かれて今の世界に飛ばされてきたとか――。


「君に、ゼフィちゃんのお友達になってほしいの!」


「へっ?」


2週間に一度上げるつもりでしたが、遅れてしまいました。

基本このような感じで1話を3つに分けて投稿していこうと思います。ほかの人がどうかは知らないけど、下書きプロットはすべて脳内です。

('ω')ノこれからもよろしく

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