第1話 ドラゴン退治スープ
聖女エミリアは、神聖な使命を帯びた存在として知られていた。
人々を癒し、悪を退治し、王国に平和をもたらす――それが彼女の役目だった。
しかし、エミリアには誰にも言えない秘密があった。
彼女は、実は料理に夢中だったのだ。
「聖女様、東の国境でドラゴンが暴れています!」
「ちょっと待って、このスープの味が決まるまで!」
エミリアは真剣な表情で鍋をかき混ぜていた。
銀の聖女ローブの上には、派手なチェックのエプロンがかけられ、頭にはシェフ帽がちょこんと乗っている。
周りの騎士たちは困惑しながらも、すでに慣れた様子だった。
「でも聖女様、ドラゴンが村を焼き――」
「火加減が大事なのよ!強火すぎると焦げるし、弱火すぎると味がしみこまないの!」
エミリアはそう言うと、魔法の杖を鍋の横に立てかけ、スプーンでスープを味見した。
「うーん、もう少しハーブが必要かしら…」
騎士団長のレオンはため息をついた。
「聖女様、料理は後回しにできませんか?ドラゴンは待ってくれません」
「レオン、あなたも試食してみて」
エミリアはにっこり笑い、スプーンを差し出した。
「新しく開発した『ドラゴン退治スープ』よ。辛さでドラゴンも涙目になるはず」
仕方なく一口味わったレオンは、目を見開いた。
「……これは美味しい!でも、聖女様――」
「ほらね!」
エミリアは嬉しそうに手を叩いた。
「さあ、みんなも試食して。そのあとでドラゴン退治に行きましょう」
こうして、聖女と騎士団は、まず厨房で試食会を開き、その後でようやくドラゴン退治に出発することになった。




