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84.ゴリラと神の試練

マリーさんに来客です。

「一体どういう事なんですか!?私の目に聖女っぽく映る方はこの方くらいなんですけど!?」


 指をさされたリシュは目を丸くしている。

 別にリシュを(あが)めても私的には問題ない。



 晩餐前にやってきた少女は、シスターの座から上に上がる為、聖獣や聖遺物、聖人や聖女を訪ねて回る巡回修行をしているらしく、うちにやってきた。そして、「こちらに聖女様が御座すと聞いてきました。一目逢わせて下さいませんか?」と言った。


 リクハルトが対応していたものだから、「マリー、お客様だよ」と声を掛けてくれた。


「はーい、誰~?」


 と、軽装で出て行くと、知らない子が居たので、素直に疑問を口にした。


「あんた誰?」


 言われた瞬間に、少女は爆発した。


「あ……あなたが、せ、せせ聖女!?」

「はあ。そーだけど」

「偽聖人と逆――!!!!!」


 聖人と聞いて出向いた先に居たのはただの詐欺師で、ただ、立ち居振る舞いなどが如何にも聖人っぽかったのだという。

 そして冒頭の台詞に戻る訳なのである。


 知らんがな。どういう想像して此処に来たんだか。


「聖女って言うからにはこう…容姿は儚くて空気にとけ入りそうな美しさで、令嬢よりも令嬢らしい洗練された仕草で、淡く微笑んでいる、そういうイメージあるじゃないですか!!」


「まあ言いたい事は解るけど現実ってこんなもんだ。諦めろ」


「諦められませんよ!!せめてもうちょっと上品に喋ってください!!!」


「別にリシュさんが聖女という事で何一つ問題ございませんので、それで結構ですわ」


「マリ~?」


 私の肩に置かれたリシュの指が食い込んでくるあいたたたた。


「…、一応、貴女を聖女とするとして、良くダンジョンなどに行かれると聞いていますが、やはり後ろから仲間を鼓舞したり癒したりするんですか?」


「前衛で刀持って真っ先に敵に飛び込む方だな」


「聖女に喧嘩売ってんのか聖女ォオ――!!!」


 少女は四つん這いになり、地面を両拳で叩く。


「一応…、法王のお墨付きがあるのは知ってますが、一応鑑定させて下さい」


「別にいいよ」


「鑑定」


 少女は白目を剥いてその場にぱたりと倒れた。ヤバイ。息してない。


「キュア」


 光が少女を包むと、やっと呼吸出来たのか、ぜえはあと肩で息をしながら此方を恐ろしそうに見る。


「り…龍を素手で(くび)り殺しそうなゴリラ系聖女様!?せ、世界の半分は要りません…!」


「待て待て待て、守護女神って書いてあるだろうが!」


「ハッ!?な…なるほどそういう手で敵を懐柔しようと言う…なんという手練(てだ)れ…」


「お前ん家の女神が付けたんだが」


「ハッ!?…………………人ではない、という事は解りました」


「其処だけかよ」


「ええ、放置は出来ないという事が解りました」


 バチン!という音を立てて少女は結界に阻まれ、入り口へと追い出される。


「!?」

「っあいった――ッ!!!!」

「………」


 さっきまでの喋り方は油断させる為の擬態だと思いきや、素であったようである。


「どうせ追い出すなら結界をこんなに痛くする必要あります!?」


「敵にしか適用されないんだから、痛くなくする必要こそないと思うが」


「ハッ!?それもそうでした!?」


 少女はごほん、と咳払いすると、ファイティングポーズを取る。


「私の主は天秤の君!よって貴女は敵という事になります!でも殺さない程度で闘って下さい!」


「…いくらなんでも虫が良すぎないか?」


「痛いのも死ぬのも嫌なので…」


「誰でも嫌だけどな、確かに。でも、私が手加減する理由にはならないな。バインド」


「ぎゃー!嫌でもごもごっ」


(かぶり)落とし」


 すぱっと少女の頭が落ちる。それを更に九の型・無限乱刃で微塵に切り刻む。


「油断した。こっちの情報があちらに漏れたかも知れない」


『安心せい、ほんの一瞬結界から出て直ぐに命を絶たれたのじゃ。死の間際に強く考えた事くらいしかあちらに情報は渡っておらぬ。…因みに先ほどの者が最後に強く思ったのは「ゴリラ聖女」じゃよ』


「それはそれで抗議したい程には嫌なんだが」


 すっと黒曜を見る。

「参考になったか?口、足、胴の順だ」

「ああ。ありがとうマリー」


 その頃天秤の神は、聖女がゴリラである事に深く悩んでいた。人間ではダメだったのか?



 すっと辺りが白一色に変わる。目の前には大きすぎて全長が解らない光り輝く竜が鎮座している。


『試練の5じゃ。この神竜と戦い、己を認めさせよ』


「鑑定」

 弱点は闇、斬撃、無効が聖・刺突か。

「ダークケージ」


 ぶるりと神竜が身震いするだけでケージは壊れた。そのままの勢いで巨大な顎がマリーに迫る。瞬歩でその場を逃れ、攻撃を避けつつ口の中で呪文を唱える。


「――夢幻の刻よ刻め、その足跡を。盤倉流奥義、無間不断刃(むげんふだんじん)!」


 一気に音速の世界に入ったマリーは、その中でもそこそこの速度で動く竜の首に一太刀入れて動きを鈍らせる。


「時よ永劫を刻め!我が敵の自由を奪え!永劫(エターナル)の枷(シャックルズ)


 巨大なUの字の枷が6つ、竜の四肢と首、胴を縫い留める。全て刺さった為、ガチリと固定される。


闇の(ダークネス)処女(メイデン)


「我が身に刃向けし反逆者。そなた等は内から弾けて消えよ。黙示録(アポカリプス)之大禍(ディザスター)


「九の型・無限乱刃」


 そこでスキルが切れた。流石の神竜も無傷とは行かず、あらゆる場所から出血している。


「グレーターヒール」


 両腕にヒールを掛け、ダークネスバリアを張ろうとした瞬間、首の枷を砕いた神竜の頭が、巨体に似合わぬ速度で突っ込んできてマリーの脇腹を食い千切る。


「ぐれーたー、ひーる!」


 なんとか一瞬で立て直し、神竜の頭に対峙する。

「バインド、ダークネスバリア」


「――夢幻の刻よ刻め、その足跡を。盤倉流奥義、無間不断刃(むげんふだんじん)!」


「時よ永劫を刻め!我が敵の自由を奪え!永劫(エターナル)の枷(シャックルズ)


 今度は首に集中して拘束する。6つの枷が(はま)った瞬間、がちりと固定されたのが解った。

 一気に瞬歩でその場を離れ、詠唱する。


「メテオフォール」


 枷で動けない神竜に向かい、メテオが降り注ぐ。


「ギュァアオオオオン!」 


 流石にこれは効いたのか、神竜から咆哮が上がる。こちらはその咆哮で鼓膜を破られる。


重力場(グラビティフィールド)

荒ぶる神(ディバイン)の厄災(パニッシュメント)!」


 重力場グラビティフィールドで己が巨体の重量を10倍増しにされ、更に其処へ重力で重さを増した見えない鈍器が振り下ろされる。竜の肋が圧し折れるのが解った。


太陽(サンフォール)落炎(プロミネンス)


 隕石とは比べられない大きさの擬似太陽が、追い討ちをかけるように、竜の体へと吸い込まれるように落ちていく。竜の表皮が焼け爛れ、太陽が落ちる音と竜の苦鳴が響き渡っているのだろう、ビリビリと肌に振動が伝わってくる。鼓膜が破れていて聞こえないが。竜の体の大半が焼け落ち、身じろぐ事もないまま竜はぴたりと動きを止めた。そこで音速スキルが切れた。両腕と耳に回復を掛ける。


「グレーターヒール」


『そこまでじゃ。もう神竜は死んでおるよ』


 女神様から蘇生の光とエクストラヒールが竜に注がれ、癒される。どことなく竜は居たたまれない風で、拗ねたようにこちらを見ない。


『そも。最初の連打で認めておる筈だったんじゃがな。なかなか頑固者でな。すまなかった愛し子よ』


 神竜は人間を認めるのが嫌で、なかなか認めて貰えなかっただけのようだ。

 そのとき、ふと女神が後ろを振り返る。


「そなたの相棒も無事4をクリアしたようじゃ。ではまた次の試練で逢おう」


 ふっと試練の部屋から家の門の前まで意識が戻ってきた。黒曜もほぼ同じタイミングで戻ってくる。


「成功したと聞いたぞ。おめでとう黒曜」


「マリーのおかげだ。私はまず足を止めるという考えがないから攻撃ばかりを覚えてしまうのだろうな」


「基本は私と組むんだから問題ないんだけどな」


 2人で笑い合い、晩餐を食べに家に戻った。


こういう敵も居ていいと思うんですよね。名前すら出てこなかったですがw

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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