↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神のご褒美  作者: まーひろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/10

第十話 お風呂

 夜が明け朝が来る。

 目を覚ました優人は大量の汗をかき、Tシャツと布団はぐっしょりと濡れていた。

 優人は体を起こし、洗面所に向かうと鏡に映る自分の顔を見た。


「ひどいや……」


 顔色は昨晩よりも悪かった。優人は顔を洗いリビングに向かうと、ティナは一人でテレビを見ていた。


「おはよう」


「おはよう……てっ、優人どうしたんだその顔は!」


「あまり良く眠れなくて……レナさんは?」


「レナはライラに用があるから出かけた」


「そうなんだ。とりあえず朝ご飯用意するね」


「朝ご飯は私が用意するから、優人は座ってろ」


 そう言ってティナは家を飛び出した。


 リビングに一人残された優人が、つけっぱなしのテレビを見ていると、昨晩の通り魔事件のニュースが始まった。

 ニュースキャスターは淡々と事件を伝えた。昨晩の一件を思い出した優人は胸が苦しくなった。


「待たせたな優人」


 コンビニの袋を手にさげたティナが帰ってきた。


「私は料理できないから、代わりにおにぎりとパンを買ってきた。さあ食べろ」


「ありがとう、けど僕あまり食欲がないから……」


「ダメだ。とにかく食べろ」


 二人はテーブルを囲み、食事を始めた。


「ごちそうさま」


 優人はおにぎり一つ食べるのがやっとだった。


「もういいのか?」


「うん、もうお腹いっぱいだから。さあトレーニング始めよう」


「そんなに顔色悪いのに、トレーニングなんかできるわけないだろ。今日は休みだ」


「ちょっと体は重いけど、大丈夫だよ」


「だめだ、今日は休みだ。少し待ってろ」


 ティナはおにぎりを咥えたまま、リビングを出て行った。

 待つこと数分、ティナが帰ってきた。


「お風呂沸かしたから入れ」


「えっ、どうして」


「汗いっぱいかいてるだろ、さあ入れ」


「ティナ、僕に気をつかってくれてるのかな……」


 優人は、朝からお風呂に入ることになった。


「優人、入るぞ。前、隠せよ」


 スクール水着姿のティナが、突然バスルームに入ってきた。


「ななななにっ、なにっ?」


「背中流すから、そこに座れ!」


 恥ずかしそうにティナは語気を強めると、バスチェアを指差した。


「別にいいよ、自分で洗えるから」


「いいから、座れと言ったら座れ!」


 ティナの剣幕に押され、優人はバスチェアに腰を下ろした。


「じゃ、洗うぞ!」


 うわずった声で言うと、ティナは背中を洗い始めた。


(おっ、女の子に背中を流されている)


 優人の心拍数は急上昇した。


「無理矢理、使役者にして送魂を手伝わせて、本当にごめんな優人」


 罪悪感に満ち溢れたティナの言葉が、優人の心拍数を一瞬にして正常に引き戻した。


「もういいから、謝らないでよ。僕が手伝うって最初に決めたことだから。昨日も言ったでしょ、初志貫徹って」


「初志貫徹、いい言葉だな。ありがとうな、優人」


 ティナは感謝を込めて、優人の背中を洗い続けた。


「ほら、終わったぞ。後は自分で洗って湯船に肩まで浸かるんだぞ」


「うん、ありがとう」


 優人がそう言うとティナはバスルームを後にした。


 それから優人は背中以外を自分で洗い、ゆっくりと湯船に浸かった。


 ほどよく体が火照ったところで風呂から上がると、脱衣所には真新しい着替えが用意されていた。


「湯加減どうだった?」


 廊下に出ると、ティナに声をかけられた。


「ちょうど良かったよ」


「そうか、じゃもうひと眠りしろ。今、優人の布団干して、シーツ洗濯してるから、私の部屋と布団使え」


 有無を言わず、優人は背中を押されティナの部屋に押し込められた。


「しょうがない寝るか」


 ティナが使ってる布団の上に横になると、ほんのりと甘い香りがした。


「ティナっていい香りがするんだな……」


 優人はゆっくりと、微睡(まどろみ)の中に落ちていった。

 十四時を過ぎた頃、優人は目を覚ました。

 体を起こしリビングに向かうと、レナが心配そうに駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか、優人さん」


「もう大丈夫、心配かけてごめんね。ティナは?」


「姉さんならお庭でトレーニングしています。姉さんー」


 レナに呼ばれたティナが、庭に面した窓を開けてリビングに入ってきた。


「優人、大丈夫か」


「うん、体も軽くなったし大丈夫」


「そうか、顔色も良くなったみたいだな。お腹は減ってないか」


「そうだな、少し減ったかな」


「レナ」


「はーい」


 レナはキッチンからサンドイッチを持ってきた。


「私がお昼に作ったんです。姉さんも少し休憩したらどうですか」


「うん、そうする」


 三人はテーブルに着いた。


 ティナはオレンジジュースで喉を潤し、優人はサンドイッチを口に運んだ。


「おいしい、レナさん料理上手なんだね」


「いえいえ、優人さんにはかないませんよ」


 あっという間に、優人はサンドイッチを完食した。


「ごちそうさま。僕もトレーニングするよ」


「ダメだ、今日は大事を取って休め」


「そうですよ優人さん、無理は禁物ですよ」


 ヒメール姉妹に止められ、優人はトレーニングを休むことになった。


「それじゃ、僕は夕飯の買い物に行ってくるよ」


「私が行きます。優人さんは家にいてください」


「いいから、僕が行くから。外の空気吸って、少し体動かしたいから」


 レナの申し出を断り、優人は買い物に出かけることになった。


 家の外に出た優人は、夏の強い日差しを浴びながら、両手をいっぱいに伸ばした。


「待って、優人」


「なに?」


「私と優人が一緒にお風呂に入って背中流したことは、レナには内緒だからな、二人だけの秘密だぞ」


 ティナは頬を桜色に染めて言った。


「うん、わかった、誰にも言わないから。それじゃ、行ってきます」


 つられるように頬を染めた優人は、自転車に乗り走り出した。


「行ってらっしゃい」


 ティナは小さく手を振り優人を見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。