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カーテシー・クラブ3 女帝陛下の思いつきで男たち八十人がウェディングドレス姿に!? 宮廷疑似結婚式イベント「花嫁作戦」始まります  作者: 真城 悠


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プロローグ 普通のドレスでは、もう驚かない


 最近、少し困ったことが起きていた。

 ミハイルが、カーテシーを普通にできるようになってしまったのである。

 それだけではない。大きく広がったスカートを着たままでも歩ける。階段も上れる。座る時には自然に裾を処理する。相手に合わせて踊ることもできる。

 アレクサンドロも同じだった。コーリャも。

 もちろん完璧な女性に見えるわけではない。だが、少なくとも最初の頃のように、

 ――どうやって歩くんだ、これ!

 ――裾を踏んだ!

 ――何で俺がこんな礼を!

 などと騒ぐことは、ほとんどなくなった。

 ある夜。いつものメタモルフォーゼ舞踏会。

 深い色の宮廷ドレスをまとったミハイルが、何事もなかったように膝を折った。スカートの両端を軽く持ち、姿勢を崩さず、滑らかにレヴェランスをする。

 少し離れたところから、それを見ていた人物がいた。

 エリザヴェータ女帝だった。


エリザヴェータ「……上手になったわね」

ナターシャ「誰がです?」

エリザヴェータ「あの子たち」


 ナターシャも視線を向けた。ちょうどアレクサンドロとコーリャまで、女性役として普通に踊っている。


ナターシャ「ずいぶん練習しましたから」

エリザヴェータ「そうなのよね」


 女帝は少し不満そうだった。


ナターシャ「何かお気に召しません?」

エリザヴェータ「最初はもっと嫌そうな顔をしていたのに」

ナターシャ「そこですか」

エリザヴェータ「最近は普通にドレスを着せたくらいじゃ驚かなくなったじゃない」

ナターシャ「陛下が何度も着せるからですよ」

エリザヴェータ「面白くないわ」

ナターシャ「本人たちに聞かせない方がいいですよ」


 エリザヴェータは扇を動かした。


エリザヴェータ「何かないの?」

ナターシャ「何か?」

エリザヴェータ「あの子たちが、久しぶりに言葉を失うようなもの」

ナターシャ「無茶をおっしゃいますね」

エリザヴェータ「あなた、こういうことを考えるの好きでしょう?」

ナターシャ「否定はしませんけど」


 ナターシャは大広間を見渡した。

 男女の衣装を逆転させた貴族たち。その中に、一組の若い男女がいた。

 男はきちんとした男性用の宮廷服。女は華やかなドレス。何か楽しそうに話している。

 ごく普通の男女だった。

 ナターシャが、しばらくその二人を見る。

 そして、何か思いついた。


ナターシャ「……陛下」

エリザヴェータ「何?」


 ナターシャが女帝の耳元で何かを囁いた。


挿絵(By みてみん)


 エリザヴェータの眉が上がる。

 一瞬、驚いた顔。

 そして、笑った。


エリザヴェータ「それは嫌がりそうね」

ナターシャ「でしょう?」

エリザヴェータ「やりましょう」


 決まった。

 この時、ミハイルたちは、自分たちの頭上で何が決定されたのか、まだ何も知らなかった。



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