表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最高の初恋。  作者: さんまぐ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/9

第9話 (最終話)最高の初恋。

そういえば、あの花火の夜に小次郎と晴子は付き合った。

メッセージを読んだのは少し後で、俺と小夏は「おめでとう」と祝福をした。


それ以来「今日は会うか?」と小次郎に聞かれると、俺は「小夏と居るから晴子と居なよ」と返す。


その返信に小次郎からは「お前も小夏とかよ」とツッコミが入る。

これは毎日の朝の挨拶みたいになっていて「また小夏かよ」、「小夏小夏って小夏一色か」と言うメッセージで締めくられていた。


そのおかげで俺と小夏は2人で居てもおかしくなかった。朝も早くに起きて朝ごはんをコンビニおにぎりでもいいから2人で食べて一日中過ごした。

何度試しても小夏は家に向かうと最後の曲がり角で消えてしまっていた。


ムービーは沢山撮ったし写真も撮った。


俺は小夏とお揃いの木製アルバムを買って、同じ写真をプリントしてアルバムに入れる。


本当に時間の許す限りプラネタリウムも水族館も行った。

もうあの花火の日から10日も過ぎていた。


俺達は手を繋ぐのも、いつの間にか恋人繋ぎになっていて、小夏は「好きだよ冬音」、「もっと居て冬音」と言ってくれて、俺も「俺もだよ小夏」、「ずっと居て」と返すようになっていて、別れを惜しみながら夜を迎える。


夜になると小夏は急に消えて「あ、また家にいる」とメッセージが入る。


一日中河川敷で空を見ながら2人で雲を見て喜ぶ。

そんな中、好きと言い合っていればその先を意識してしまう。

俺の目線はどうしても小夏の唇に向かっていて、小夏は俺の目線に気付くと真っ赤になりながらも、拒絶をする事もなく小夏も俺の唇を見ていた。


どちらともなく近付く。

今冷静になると同じ考え方の人なのだから同じタイミングになる。


息の当たるその距離で後一歩の所で小夏は消えていた。


「あー…ここで?」


そう小夏からメッセージが入り「本当、残念だったけど…また明日」と返す。


「なんか普通の文章なのにやらしいね」

「本当、また明日ってエッチな言葉なのかな?」


俺達はそんなメッセージを交わして家に帰る。

母さんは「小夏さんは来れなかったのね」と聞いてきて、「うん。今日はいつもより早く消えてた」と返してメッセージを見せる。


特別予算を貰う為に証拠提出がルールになっていたから、なんの気無しに見せたら母さんが「冬音?」と言う。


「何?」

「何をしようとしたのかしら?また明日ってエッチな言葉なの?」


これには驚いた俺が「うぇ!?あ!?」と慌てると「武士の情けよ。まったく…。でも好きな人に会えて良かったじゃない」と母さんは言ってくれた。


父さんは「お父さんより早いなぁ冬音は」と笑いながらやってきて、小夏と何をしていたかを聞いてくれた。


「まだ夏は長いから沢山冬音だけの夏を見つけるといいよ」


父さんの返しにまったくと思いながらも確かにまだ夏は長い。

明日はまた小夏と何をして過ごそうか考えながら今日の続きをしたいと思っていた。



・・・



翌朝、お決まりの小次郎メッセージで起きる。


「今日はどうする?」

「晴子と居なよ」


お決まりの文章で始まり、小次郎からの「また小夏と2人きりかよ」と言う返事を待っていると、「何言ってんだよ。もういい加減いじけるのはやめにして3人で会おうぜ?」と返事が来た。



なんだ?

この気持ち悪い文章はなんだ?


俺が慌てて「3人?」と聞き返すと「だから謝ってんじゃん。俺と晴子と冬音の3人きりなのに、抜け駆けして花火の日にトイレではぐれた俺が、晴子に告白して付き合った事が面白くないんだろ?晴子も気にしてるから会おうぜ?」と小次郎が言う。



なんだ?気持ちが悪い。

グラグラと地面が揺れた気がする。

とにかく気持ちが悪い。


俺は小次郎に返信をせずにリビングに行くと、母さんが「また?今日も?いい加減機嫌を直して小次郎君と遊びなさい。毎日毎日1人で豪遊するってお金をたかるんだから」と呆れ顔で言う。


気持ち悪さは加速する。

俺は何が起きたかわからずに「か…母さん?何言ってんの?俺、小夏と…」と言うと母さんは「小夏?誰それ?」と聞き返してくる。


「小夏だよ!青海 小夏!日向 小夏!」

「知らないわよそんな子」


俺は慌ててスマホを取り出してフォトフォルダを見ると、小夏を撮った写真は何もない景色になっていて、2人で撮った写真も俺1人が写る気持ちの悪いものになっていた。


部屋に戻り木製アルバムを開いたがスマホと同じだった。

夏祭り、誕生日会、プール、花火大会、それから先の日々全部の写真から小夏が消えていた。


俺はその瞬間ショックで倒れた。



・・・



目覚めると病院に居た。

母さんは夏休み前の高熱の後遺症を疑い、父さんは仕事を早退して病院に来てくれた。


俺はまずスマホを取り出してメッセージアプリを開いたが小夏とのメッセージは無くなっていた。

小次郎と毎朝交わしていたメッセージも「抜け駆けしてごめんって、会おうぜ」、「怒ってないよ。晴子と居てあげなって」になっていた。


何が起きたかわからずにスマホを抱えて大泣きする俺に、「せん妄の可能性がありますから、話を合わせて」と聞こえてきた。せん妄がなんなのかわからないが、倒れた俺のことを言っているのだとわかった。


「冬音、どうしたんだい?心配したよ」


そう話す父さんに「父さん、俺が熱を出して学校に行ってからの日々を聞いて、擦り合わせをしたいんだ」と話した。


学校の事はわからないが、スマホのタイムラインと合わせながら話すと、夏祭りでは俺がゴミ捨てに行って迷子を助けていて、助けた子供のお婆さんと晴子が謝ってくれていた。


誕生日会は無くなっていて、木製アルバムを買ったのは小次郎や晴子と食事会をする時に、プレゼント交換をしたことになっていて、俺の手元には晴子の折り畳み傘が来ていた。俺が買った木製アルバムは小次郎の手元に渡ったらしい。


「じゃあ駅地下の…甘党天国の素甘は?」

「お父さんと冬音で食べたよ」


その後は全て小夏のいない世界の話になっていた。


「父さん、青海 明子さんって知ってる?」

「知らないな。誰だい?」

「俺達の前に現れたその人の娘さんと、俺はずっと居たんだ」


俺はそうして小夏と会った時間を父さんと母さんに話した。

母さんは作り話にしてはリアリティがあると言ったが父さんは信じてくれた。


「確かに夏生まれの娘なら小夏にしたと思うよ。自分だけの小さな夏に感謝して、その気持ちを忘れないように小夏にするかもね。その子は本当に居たんだね。だから父さんと冬音の所に来てくれていた。だから冬音は何もない写真を撮っていたけど、それはそこに小夏さんが居たんだね」


この言葉で俺は声を上げて泣いた。


「小夏は好みが一緒だったからずっと一緒に居たかったんだ」

「うん。冬音の話を聞いて、なんで小夏はウチに入れなかったか父さんはわかるかな」


「なんで?」

「きっと小夏の家はウチと違っていたんだ。ウチは明るいから記憶と違いすぎて入れないんだよ」


「じゃあ外でなら会えたかな」

「そうかも知れないね。でも冬音のムービーでお別れは済んでいたんだから、今父さん達が覚えていないとしてもなんの問題も無いよ」


「本当?」

「ああ、でもね。病院の医師も冬音が熱のせいで何日も幻を見たかも知れないなんて言うから、外で小夏の話をして疑われても気分が悪いよね?だからこれは父さんと母さんと冬音だけの3人の秘密にしようね」



俺は父さんの言葉に素直に頷いて、日常へと帰っていった。

表向きは小次郎と晴子が付き合った環境の変化に耐えられなかった事にされたが、俺は普通の自覚がある。


それを裏付けたのはネットで青海 明子を検索したら、小夏の言った場所に青海 明子が住んでいたからだった。実名SNSに投稿されていて初めて見た青海 明子さんは、父さんの一個下で少しだけ小夏に似ている気がした。


俺は誰も小夏を知らない事が嫌だったので小夏とあった事を記した。


何回も文章を直したら夏休みは終わっていた。

始業式、俺の列は6個の机しかなく誰も青海 小夏を知らなかった。


秋になって晴子の友達から告白をされた。

だが少し付き合った後で断りを入れた。


その子に落ち度はない。

いい子だった。


でもどうしても俺の最高は小夏で、小夏よりいい人は居ない。

比べながら付き合って小夏を探す事が悪くて断りを入れた。


この頃から俺は別の考えを持つようになっていた。


俺は生きているのか?

幽霊なのか?

夢を見たのか?

幽霊に会ったのか?


そう思う中で、また別の可能性を考えた。

小夏は自身を幽霊と言ったが幽霊は俺で、小夏の中に生まれた存在で、小夏は回復して目覚めたからいないのかも知れない。


なんであれ小夏はいない。

小夏に会いたい。


口にしなくても同じ想いをもっていて、あえて口にして再確認をして微笑みあえる存在。


残りの人生で小夏のような存在に会えるのだろうか?


そんな事を思いながらも、ここが小夏が死にかけて出来た世界なら、二度と来ない方が良いと、現実で幸せになって欲しいと思った。


俺は生きているのか幽霊なのか?

ここは現実なのか?夢なのか?


もう何年も過ぎているが、なんであれあの暑い日々にした最高の初恋は本物だ。


今も泣きながら小夏の言った「私が消えたらね、冬音ちゃんと彼女作ってね」という言葉が耳に残っている。

思い返すたびに俺は空を見ながら「小夏、彼女を作るのは無理そうだよ」と、そう呟いた。


(完)

タイトルの「最高の初恋」は、冬音と小夏の立場になって考えた時、好みが全く同じ人間が目の前にいて両想いだったら最高だよなという事で、「最高の初恋」にしました。


とりあえず今回は人生をやり直す場合、やり直された側がどうなるかが気になっていたので書いてみました。


最初に考えた構想だと、子供が阻止をしにくるけど、やり直す両親の幸せそうな顔に何も言えずに消えていく悲惨なものもありましたが、書ききれなさそうなので辞めていたものを少し毛色を変えて出してみました。


今回、あえてハッキリさせなかった部分が何個かあります。


それはこの世界が


【死に瀕した小夏が見ていた夢の世界】

【日向 豊がやり直した世界】

【熱病のせいで冬音が見ていた妄想の世界】


のどれかであるという事です。


そこら辺は読者様にお任せしてみようかなと思いました。

モヤモヤを残してしまってすみません。


2022年9月。

2026年2月改稿。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ