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最高の初恋。  作者: さんまぐ


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8/9

第8話 冬音と小夏。

俺は小夏を連れてウチに行く事にした。

突然歩き出した俺に小夏が「冬音くん?」と声をかける。

俺は「いいから行こう。とりあえず父さんに全てを聞いてもらって、小夏さんと少しでもいれるようにするんだ」と言う。


「なんで!?そんな!パパに悪いよ!」

「悪くない!俺のそばに居ないと夢を見るみたいな感じなら、ずっと居ればいいんだよ!」


「冬音くん…」

「付き合うとか、実際はよくわかんない。でも2人で居られる時間を付き合うって言うなら、俺は小夏さんと居たい。だから少しでも2人でいられるようにするんだ」


俺は立ち止まって小夏を見ながら思ったままを口にする。

薄着でも汗ばむ夏の夜。

花火帰りの人達が俺達を邪魔そうに見ているが関係ない。


「嫌かな?」

「嫌じゃない。嬉しいよ」


それから家までの道のりはとても遠く感じた。

それでも俺は小夏の手を握って離さないように歩いた。

小夏がいる事を感じたくて、たくさん話をした。

俺が知っている近所の話を小夏は全部知っていた。


小夏も途中から父さんに会える事を喜んでいて、足取りが軽くなる。


「小夏さん、父さんになんで挨拶する?」

「え?」

「あなたの娘です。って言う?」

「えぇ?パパに悪いしパパが驚いて冬音くんのお母さんにも怒られちゃうよ!」

「その顔見てみたい」

「えぇ?パパには笑っていてほしいよ」


確かに小夏の父さんからすればそうか…、でも俺の父さんは違う。

だから俺は「でも父さんはきっと娘が出来たって喜ぶよ!だから驚いた後で笑顔になる!」と自信満々に言う。


「…笑ってくれるかな?」

「うん!だから行こう!」


あと少し、この角を曲がれば家というところで、俺の手は軽くなった。

引っ張っていた小夏を感じない。


「小夏さん!?」


振り返ると小夏はいなかった。

代わりにスマホに小夏からのメッセージが入る。

そこには[ダメみたい。角を曲がったら部屋に帰ってきてたよ]と入っていた。


俺はどうするべきか悩んで家に帰る。

暗い顔から母さんは告白をして振られたと勘違いしたのか、「もっと男を磨いて再アタックよ」と言ってくる。

俺は首を振って「違うんだ」と言うと、母さんは「え?」と聞き返してくる。


「母さん、幽霊とか信じてくれる?」


俺の突拍子もない話に母さんは「なに?あの青海さんは幽霊とでも言うの?幽霊だから付き合えないって?断られたの?」と聞き返してくる。


「うん。小夏さんは幽霊だった。父さんと話を聞いて」


母さんは冗談を肯定されて驚いているが、真剣な俺の顔を見て父さんと並んで俺の話を聞いてくれた。


「父さん、青海 小夏さんの本当の名前は日向 小夏さんだったよ」

「え?日向?」


こうして始まった説明を最初はよく出来た冗談だと言ったが、真剣な俺の顔に父さんも母さんも聞き入ってくれた。


「ふぅ…にわかには任じられないけど、父さんは冬音も小夏さんも信じるよ」

「私も信じるわ。だって説明がつくもの。あの私と出かけた日のお父さんは、普段なら考えられない姿だった。お母さんをいいなと思っている人に気を遣って、お母さんと出かけようなんて思わないお父さんが私とデートに行く。小夏さんの説明通りなら、お父さんはそこが分岐点だったと思う」


母さんの言葉に父さんは「でも俺は何も覚えてないよ?」と言う。


「うん。あはたは覚えていない。でもきっと私との関係を進めるために一歩踏み出した覚悟は、その自動車事故で死んでしまったもう1人のあなたが、背中を押してくれたのだと思う。きっと死に瀕したもう1人のあなたは、あの日の私との事を悔いてくれたんじゃないかしら?一歩踏み出していたらと思った心残りや後悔が、今のあなたの背中を押してくれた」


母さんの説明に父さんは「…そうだね。きっとそうだ」と言った後で、悲しそうな顔で「冬音、なんとなくだけどもうお父さんは青海…いや、小夏には会えないと思うんだ」と言った。


「父さん?」

「多分小夏が冬音に真実を話してしまったからウチに来られなかったんだと思う。だからお父さんの分まで、小夏の事を頼めないかな?」


そうして父さんは小夏に向けてムービーを撮った。


「小夏、こんにちは。冬音から聞いたよ。不安で怖い日々を過ごさせてごめん。お父さんは冬音の話を聞いても何も思い出せなかった。冬音のお母さんは慎重な俺が一歩踏み出して冬音のお母さんと付き合って結ばれたのは、小夏のお父さんだった俺の想いじゃないかと教えてくれたよ」


こうして始まったムービーは、父さんが小夏にどうしてあげたいかという想いなんかに続き、「冬音に任せるしかないから任せたから、少しでも冬音と2人で居て、少しでも心穏やかに楽しい想いをして。そしてもしウチまで来られたら、4人で食事をしよう。話をしよう。冬音のお母さん…桜子さんも、ぜひ小夏を娘にしたいと言っていたからね。遠慮はいらないよ。日向 小夏としてウチに帰っておいで。待っているよ」という言葉で締めくられていた。


小夏に「父さんから、とりあえず明日会おう」と送ると翌朝になって返信が来る。


「嬉しい。ありがとう。じゃあお昼ご飯行こう」


俺はメッセージを母さんに見せると「特別予算。気にせず使いなさい」と言われて小遣いを渡された。



・・・



俺はこの日から時間の許す限り…小夏が近くに居られる限り共に過ごした。


家族というよりカップルに近かったと思う。

普通に自然体に付き合う。


今日は公園でのんびりと過ごし、小夏のムービーを撮る。


この頃には俺達はくん付けさん付けを辞めていて、小夏は俺を冬音と呼んで、俺も小夏と呼んだ。


「えー…っと、パパ。私の言葉を信じてくれてありがとう。冬音のママも突然なのに信じてくれてありがとうございます。何回か冬音と家に帰ろうとしてみたけどダメで、冬音に頼んでムービーを撮ってもらっています」


そう、何度試しても小夏は家に来られなかった。

それでムービーになっていた。


「パパ、私は冬音がこうして会ってくれているから平気だよ。パパとご褒美デーが出来ないのが残念だけど、冬音が代わりにしてくれてて良かったよ。パパの笑顔の写真も、冬音のママと3人の写真や笑顔の写真も見せて貰った。笑顔のパパが見られて良かったよ。心残りはないかな?」


俺はたまらずに「小夏?何言ってんの!?」と口を挟む。


「ずっとここに居られるかわからないから…先にお別れも言いたくてさ。ムービーに残るけどさ…。冬音、告白してくれてありがとう。理由も言わずに断ったのに何回もしてくれて嬉しかったよ。本当食べ物の好みも一緒で困ってる人を助けたいのも同じで、困るポイントや喜ぶポイントが一緒、何時間居ても飽きないしずっと空を見ていられる素敵な人」


話しながら小夏が泣く。


「でもね…私が…、私が消えたら…ね…、冬音……ちゃんと…彼女…作ってね」

「小夏!」


小夏はボロボロと泣いていて震えながら「あった…心残り…」と言う。


「冬音と居たいよ。家に帰って、家の思い出が一緒か話して、笑って、リビングでパパと冬音と冬音ママと、将来の話がしたかったかも。幽霊だけど冬音と結婚したら、もう一度日向 小夏になれるし、パパをパパって呼べるのに…消えたくないな…」


泣きながら話す小夏に俺は何も言えずに肩を抱くことしか出来なかった。


このムービーは恥ずかしいけど、父さんと母さんにキチンと見せたら父さんと母さんは泣いていた。

泣いて小夏に会いたいと言っていた。


俺は初めて父さんの涙を見たかも知れなかった。

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