~プロローグ&エピローグ~
ぼくたちが生まれるずっと、ずーっと昔の話です。
日本は国が滅んでしまうかもしれないほどの大きな戦争を経験しました。
いっぱい攻撃して、いっぱい攻撃されて。
たくさんの人が涙して、悲しみました。
たくさんの人が傷ついて、苦しみました。
命が沢山、無くなりました。
人々は日本の平和を祈りました。
この国の為に死ぬことは、誇りだと言う人がいました。
けれどそれは呪いなのだと、そう言う人もいました。
どうして戦ったのか?
どうして止められなかったのか?
誰が悪いのか?
誰のせいなのか?
そこにはたくさんの理由がありました。
目には見えない思惑や事情が絡んでいました。
ぼくたち子供には分からない大人たちの都合。
ぼくら子供より頭が良くて、色々なことを知ってるのが大人です。
そんな大人たちが戦争を選んだのだから、それは正しい選択なのかと思いました。
でも、そうではありませんでした。
子供でも分かる確かなことは、"戦争は絶対にダメ"なんだということです。
戦争という言葉は、ただの言葉じゃありません。
国中がメチャクチャになって、町も人も、文化も、大切なものをいっぱい壊して、そして壊される。
それはとても悲しいことです。
戦争していた頃、天皇は神様として扱われていました。
皇族は代々、神様の血を継いできたと言われるからです。
天皇は日本という国の中心として、みんなを導く心の支えでした。
しかし、その神様がいても戦争中、日本はとんでもない道を突き進み、悲惨な結末を迎えてしまいました。
戦争に敗れた後も、天皇は残りました。
だけど天皇は神様からぼくたちと同じ人間になりました。
今ではこの国の象徴と言われています。
皇族は、国の鏡。
国の喜びも、悲しみも、痛みさえも映し出す器。
誰よりも祈り、誰よりも傷つき、誰よりも願う。
過去から現在、そして未来へと記憶を紡いでいく存在。
現代においても、天皇は日本の中心として、国民を導く心の支えとなっていることに変わりはないようです。
天皇は日本を代表する象徴ですが、ぼくらひとりひとりも、日本を形づくる「象徴」なんです。
なぜなら国とは大勢の人が集まり形づくるものだからです。
その点は天皇もぼくたち国民も変わりません。
ぼくたち国民ひとりひとりは皇族のような血筋は継いでないけれど、きっと日本の魂を継いでいます。
だからこそ、思いました。
ぼくらは、平和の象徴にならなくてはいけない。
目をふさぎたくなるような過去の戦争。
声にならなかった願い。
傷つき失われていった命の重み。
忘れた方が楽かもしれません。
でも、かつての戦争を無かったことにはできません。
ぼくらは知ってしまったからこそ、語り続けます。
語ることは、祈ることだから。
戦争の悲惨さ、数え切れないほどの悲しみを二度と繰り返さない為に。
怯えることはありません。
希望を信じ、平和を願う心さえあれば。
その想いが時を越えて、未来へ届くと信じて――