第18話 侯爵令嬢クラウディア ⑦
「あの、第二王子殿下。わたくし、こうやって学院に聴講生として通うことができるようになりましたが。それは、生徒の皆さんと交流するため……と申しますか、一般的な社会を学ぶためのものであり、試験に合格するですとか、婚約者を探すとかの目的はないのです」
というか、わたくし自身は学校何て通わなくても、家で兄と一緒に商品開発の日々で大満足なんだけどね。
「正式な入学というわけではなく、聴講としているのは……」
「ええ。家族とだけ過ごしているのは、その、何と申しますか、世界が狭く、また、気持ちも偏りがちになる。かといって、新入生として入学年度から学び直しても、まともに卒業できるとも限らない。単に社会の見学程度なら、毎日すべての授業に参加せずとも構わないのです」
はい、半分嘘です。
お父様とお母様が、わたくしにフツーの学校生活も体験しなさいって思っていらっしゃるから、ですね。
愛されている故なので、わたくしも素直に従いますが。
別に、学校生活、必須じゃない。
引きこもりの不登校でいいじゃない!
兄と一緒にだけど、商会作って稼いでいるんだから‼
「と言いますと?」
「見聞を広めるためにの学院生活なのですから、毎日通わなくても良いと思っております。ですので、週に一回程度、王太子殿下は公務なりなんなりをいれていただいて、学院には来られないようにしていただきたいのです。王太子殿下がこちらに来ない日だけ、わたくし、授業に参加させていただきますわ」
「あ……、しかしそれでは……」
「わたくしと王太子殿下が会わなければ、あのような奇行を起こすこともございませんでしょう?」
「た、確かに……」
「王太子殿下も在学期間はあと半年。その間を乗り切れば良いだけではないかと」
「わかりました! 父王と早急に話をして、対策を練ります!」
おお! 第二王子殿下は真っ当だし話も早いなー。
で、もう、次の日には。
一か月先までの王太子殿下の予定表を、第二王子が渡してくれた。
しかも、この日とこの日は国王陛下の御命令にて、王太子殿下を絶対に学院には行かせないから安心ですっていう日も、明記してくれて。
仕事が早い男性って素敵よねえ……。なーんて、うっかり恋に落ちそうだったけど。
第二王子と結ばれちゃったら、あの阿呆……えーと、王太子殿下と義兄妹関係になってしまう……。
絶対に、嫌!
第二王子には素敵な婚約者が出来ますように……。
『原作』では心優しい奥様がいらっしゃったもんね。多分大丈夫。
そして願わくば。
オルランド王太子殿下なんか蹴飛ばして、第二王子が王太子になってくれますように……。
そうして、ミゲル第二王子のおかげで。
オルランド王太子殿下と貴族学院で会うことは皆無だったの!
さすがに『原作』のヒロインであるはずの男爵令嬢ソニアとは、出会わないようにはできなかった。
だけど、ソニアがわたくしのほうをチラチラとみたり、わたくしに近寄って来ようとしても、護衛と侍女の壁で阻ませてもらった。
そのために、侍女は一人だけではなく、三人に増やした。
わたくしの前、右、左に一人ずつ配置。
護衛は後ろというか、車椅子を押してもらう。
近寄ろうとしても、近寄れない体制。
無理やりソニアがわたくしに近寄ろうとした時もあったけど、侍女が両手を広げ「何用ですか?」と眼光鋭く問いかける。
ソニアは「い、いいえ……、あの。お話を……」とモゴモゴ。
侍女には冷たい笑顔で「下位貴族の娘が、侯爵家のご令嬢に、なんらかの直訴でしたら、まずは正式な書面をお出しくださいませ。こちらに有益な話であれば、検討の上、お返事を差し上げます」と言ってもらった。
無視はしてないよー。
でも、話は聞かないよー。
どうしてもって言うのなら、書面で提出お願いしまーっす。
こちらからは話すことなどない。
二人きりで話したいなんて言われてもね。
全く接点のない、爵位も違う、しかも寄り親と寄り子の関係でも全くない、そんな完全に接点のない相手から、話とか、相談とか言われて、ホイホイ付いて行く高位貴族はいない。
暗殺者とか誘拐犯だったらどうすんの。
「そんな……、あたしを信用してくれないんですか……⁉」とか、ヒロインぶったって、知らない人に付いて行くような危機感のない貴族の令嬢はいないと思うよ?
というわけで、無視まではいかないけど。
用があれば、まず書面で! 一択です。はい、お帰りはあちら。
といいうわけで、卒業式まで、王太子殿下のこともソニアのことも、避けまくり。
無関係にほぼ近い相手を断罪できることはない……と思っていたのに。
まさか、卒業パーティであんなことを言われるとは……予想もしていなかったわよ……。




