表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/31

23話:詰所にて

前回の簡単なあらすじ:任務前日、お客さん来訪。


更新遅くなりました。申し訳ありません…


2020年 11/4(水) 改稿しました。

 そして迎えた翌日。


 集合場所に指定された『翠の風』の詰所に、ボクは1人で向かっている。ルアーノとアニーはボクがいない間はお留守番だ。いかにあの別宅が借り物とはいえ、国王陛下からお借りしている以上、何かがあってからでは遅い。そんなわけで、三人で住むようになってからは、誰か1人は残って守る、ということになった(ライセン様のお屋敷に行ったときは、父さんたちについてきた人たちに残ってもらっていた)。


 2,30分ほど歩くと、目的地が見えてきた。現在は朝の7時、指定された時間までまだ30分ある。迷惑を掛けずにすみそうだ。

『翠の風』の詰所は、高校の体育館くらいの面積の中庭を、建物で囲っている形状となっている。団員が100名に満たない騎士団相応の大きさと言える。

「お~い、ルーク~!」

 ボクがこの詰所の構造について考えていると、入り口のほうからこえをかけられた。そこを見ると、学生時代に見慣れた顔があった。

「アリサ、久しぶり。」

「久しぶりだな、ルーク!卒業式以来じゃねえか。」


 彼女はアリサ。ボクが学園に入って最初のクラスメイトの1人で、あちらから気さくに話しかけてくれたのを、今でも覚えている。平民出身で、素の口調は荒いところはあるが、困っている人に積極的に声をかけたり、貴族の生徒にも意見を言えたりと、同じ平民の生徒から信頼されていた。学年が上がるにつれて平民出身の生徒は人数が減るので、彼女は貴重な存在だった。


「ネネから聞いたよ、今日の任務、キミも来るんだね。よろしく。」

「ああ、にしても驚いたぜ、ネネの大手取引先、王家と公爵家になんでお前まで並んでるんだよ。」

「あ、その話聞いたんだ。まあネネとは領地が隣接してて、家同士の交流があったからね。昔から、よく知ってることを交換してたんだ。そしたらいつの間にか、って感じだね。」


 ネネは『風国の耳』と呼ばれるアドヴァ子爵家の娘で、現当主の年の離れた妹である。彼女は学校でこそお調子者のネタキャラ扱いだったが、情報収集能力と投擲のスキルは当代随一と言われており、自分の家に引き抜きたい、と考える貴族は、一定数存在する。

「ホント驚いたぜ。一緒にココに入団してから、アイツがいろいろやらかすものだからよお。」

「まあ、学生時代は目立たないように、中の上くらいまでセーブしてたっぽいからね。」

「あ、そうだ!お前、実技試験手ェ抜いてたってホントか!?」

 ネネのヤツ、どうやらいろいろしゃべったみたいだね、これは。今説明してもいいけど、詰所の入り口前で話すことでもないしなあ。


「アリサ、今はひとまずおいといて、中に入ろうか。」

「おお、悪い悪い。それもそうだな。」

 ということで、二人で中に入ることになった。ちなみに、この詰所の入り口は、学校の事務室のようになっており、そこで要件を告げて入ることになっている。



「よ、ルーク。数日ぶりだな。」

 中庭に行くと、そこには大勢の女性騎士とフェリシア様、そして見覚えのある1人の青年がいた。

「これはノートレッド侯爵家次期当主さま、お久しゅうございます。」

「おいコラ。」

「いやゴメンゴメン。久しぶりプロトン。」

「やっぱりお前はこうでなくちゃな。」

 そう言ってにかっと笑うのは、ノートレッド侯爵家次期当主、プロトン・ノートレッド。おもに理系分野に秀でていて、なかでも開発や調査に関してはこの国一番であり、《理系の申し子(ザ・サイエンス)》の2つ名で知られている。


「来たわね、ルーク・ゼネル。」

 プロトンと話していると、フェリシア様がこちらに向かってきた。こうして改めて見ると、凛々しい顔立ちに騎士団の制服がキマっていて、見ていて惚れ惚れする。

「「おはようございます、フェリシア様。」」

「ええおはよう。プロトンくんも、今日はよろしくね。」

「おまかせあれ。」


「さて、まだ何人か来てない人がいるけど、先に今日一緒に向かう子たちを紹介するわね。」

 そう言ってフェリシア様は、騎士団の人たちを手招きした。昨日ネネから聞いていたボクと違い、おそらく今日はじめて聞いたプロトンは、一緒に行くメンバーを見て一言。

「いや知り合いばっかじゃねえか。」

 今回一緒に行くのは、ボクと一緒に魔獣討伐をする5人と、地域住民に訪問する人の護衛に10人の計15人で、そのほとんどが、ボクたちの同級生だったり、学園で関わりのあった人だったりと、とにかく知り合いがほとんどだった。で、その知り合いでない人というのが、

「二人とも、この人はフレデリカ・フォトレスさん。私のひとつ上で、今回一緒に行く子たちのなかで最年長の1人でもあるから。」

「よろしくお願いします。」

 そう言ってフレデリカさんは、ボクとプロトンに一礼した。ストレートの金髪は美しく、顔立ちも綺麗なのだが、先ほどからずっとむすっとしており、どことなく機嫌が悪そうだ。

「ん?フォトレスってことは」

「その通り!ワタクシのお姉さまですわ!!」

 プロトンの言葉に反応したかのように現れたのは、カミーユ・フォトレスさん。金髪ツインドリルと“いかにも”な髪型で、よくも悪くも目立つ。


フォトレス伯爵家は騎士の名門のひとつで、拠点防衛や人身警護など、守り(護り)に定評のある家である。カミーユさんはその中でも群を抜いて守りに特化しており、成人男性ほどはある大楯を巧みにあやつり、攻撃ひとつとて通さない。フォトレス家の2つ名である『堅牢』の体現者だ。ーーその分盾の扱いに特化し過ぎてて、学園では(もっぱ)ら魔法と学問でカバーしていたが。


「久しぶり、カミーユさん。元気そうでなによりだよ。」

「おっほっほ!元気と頑丈さが取り柄のワタクシですわよ?常に全力全開ですわ!!」

 こうした常に明るく元気なのが彼女の持ち味で、彼女の周りは笑顔で溢れていることが多い。



「ルークくん久しぶり!」

「婚約おめでとうございます、先輩!」

「ま、ルークくんなら安心ね~。」

 カミーユさんを皮切りに、他の団員の人たちとも挨拶を交わしていく。まだ決まったわけじゃないし、今回の任務の結果次第とはいえ、こうして祝ってもらえるのは嬉しい。最初は反対されると思っていたから。

「みんな、反対とかないの?」

「ここであなたと結婚しないと、団長は婚期を逃すおそれもあるので。」

「うわっ!!」

 突然の声に、プロトンが驚いてこけそうになる。ずっとそこにはいたんだけどね。

「久しぶりだね、レナさん。」

「久しぶりです、ルーク。」

 この影の薄い人は、レナ・マイヤー。マイヤー男爵家の娘で、カミーユさんやアリサとともに、学園では6年ずっと同じクラスだった。本人は影の薄さを気にしているが、顔立ちは人形のように整っており、雰囲気は「黒髪の我が妹(フィーア)」といった感じだ。あまりしゃべらず、自分に自信がないようだが、学年20位に入るくらいには優秀だ。

「やはり、あなたはすぐに私に気づいてくれますね。」

「まあ、そこにいるし。」

「団長でも気づかないのに。」

「……」

 フェリシア様が申し訳なさそうに視線をずらす。本当なんだ…



 それからも挨拶を交わしていき、まだ来てなかった人たちもやってきた。料理担当のクミン・クックさんも来たときには、ちょっとした歓声がおこった。彼女はこの国が誇る料理人、キャサリン・クックさんの一人娘で、その料理の腕のみで、平民でありながら、陛下から称号として『クック』の姓を賜った人だ。中等部までは通っていて、よく試作品を食べさせてくれたが、とても美味しかった。

 短めの茶髪を2つ結びにし、くるくると機敏に働くようすは、おもに仕事帰りの中年男性から人気なのだとか。おかげでキャサリンさんが経営する食事処は、連日大盛況である。

 ちなみに歓声がおこったのは、彼女の料理を食べられるかもしれない、と思ったであろう一緒に行く組からで、残りの団員の人は少し涙目だった。



 そうして集合の5分前になったあたりで、最後の二人が到着した。それを受けて、みんなが一斉に姿勢を今まで以上に正した。そしてその姿を見た瞬間、息を飲んだ。


 1人は、五大公爵家のひとつ、エメラル家の長女、『歌姫単独舞台(ワンマン・ディーバ)』ルル・エメラルさん。今日は蒼いドレスを着ており、翠の髪がよく映える。色香と清廉さを併せ持つその姿はとても美しく、ヒレとかあったらまんま人魚姫だ。あれ、これ誉めてる?


 もう1人は、ここエアリス王国の第二王女、『才媛なる美姫』シルフィ・ウィン・エアリス様。こちらは淡い緑のドレスを着ており、光輝く金色の髪とその美貌も相まって、神秘的な印象を与える。


 みんなが息を飲んで固まるなか、ボクとプロトンはいつも通りに挨拶を交わしていく。

「お久しぶりですわね、ルーク。」

「また会えて嬉しいです。」

「はい、お二人とも元気そうで良かったです。」

 シルフィ様、ルルさんの順で挨拶を交わす。

「プロトンは昨日ぶりね。」

「ま、昨日宰相閣下に呼ばれたからな。」


 しばらく挨拶を交わしていると、フェリシア様がこちらにやってきた。

「ルルさん、そしてシルフィ王女、お待ちしていました。」

「ありがとうございます、フェリシア様。」

「感謝しますわ。」

 …うん、字面にするとなにもなく思えるのに、見ていてなぜかプレッシャーを少し感じる。プロトンや他の人たちにいたっては、程度の差はあれ、顔を青くしている。いったいどうしたんだろう。

「プロトン、大丈夫?」

「ああ、なんでもない。というかなんで当事者のお前はピンピンしてんだよ。」

「え、ボク?」

ボクが当事者とはいったい…

読んでくださり、ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ルークさんに二つ名を付けるなら『器用貴族』か『恋愛不器用』でしょうか? 格好付かないことこの上ないですね。 [一言] 慎重というか立ち位置を考えながら行動させていることに好感が持てます。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ