20話:邂逅と初恋 ~ルークとの出会い~
前回の簡単なあらすじ:クインテット全員登場!
回想回になります。プロトン視点でお送りします。
普段より長いです。それでも7000字超えないとは…
遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
これからしばらくは、定期更新いたします。
詳しくは、13:00に掲載予定の活動報告に書きます。
祝、20話\(^o^)/
ブックマーク&評価、ありがとうございます!
これからも、よろしくお願いします(o^O^o)
「…ついにルークが婚約か。…しかも相手は、あのフェリシア様とは。…この国の未来は安泰だな。」
「あはは!もうエリックってば、言ってることがおじさんみたいだよ?」
会議が終わり、陛下とライセン様が退出されてから、エリックとマオがそんなことを言い出す。『無口で強面』の印象が強く持たれているエリックだが、それは普段から考え事をしていて、話す前に話題が変わってしまっていて、会話に加わる機会を失っていただけだったりする(強面の事実は変わらないけどな)。実際は、話すまで待てば返答をちゃんと考えたうえで返してくれるし、今のように、マオと組んで場を和まそうとしてくれたりと、常に周囲を気遣う『理想の騎士』そのものだ。もっとも、それを教えてくれたのは、ルークなんだけどな。
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国立学園は、9~12歳の初等部、12~15歳の中等部、15~18歳の高等部があり、多くの場合、貴族は中等部からの編入となる(逆に平民の多くは、初等部で読み書きや計算といった一般教養を学び、より学びを深めたい一部の者だけが進学する)。
オレたちの学年は、一芸に秀でた者が多く、中でも飛び抜けて才能・家柄が良かったオレたち5人は、それはもう持て囃された。その当時のオレたちは、大小の差はあれ、何かしらの欠点を抱えていたのだが、あまり見ないようにしていた。
そうして最初の一年が経ち、年間の成績通知が行われた。以前は広場などに張り出しがあったそうだが、「己の成績を晒されるのは、なかなかにクるものがあるぞ?」という国王陛下の一言で、数年前から個人で通知表をもらうだけとなったそうだ。当時のオレの成績は、21位/400人。まあこのときのオレは、学問はともかく、体力に難があり、この順位に落ち着いた。一方のマオは魔術に優れ、学問も運動もまあまあこなせるが、実戦での動きがからきしであり、11位と奮闘したが、それでも10位以内には入れなかった。
そんななか、クラスの女子生徒の会話が聞こえてきた。
『さすがはシルフィ王女!入学時同様首席らしいわよ。』
『エリック様は8位だったそうよ。強いうえに学問でも優秀だなんて、憧れるわ~!』
『それを言ったらルル様もよ!特に芸術分野では、ほとんどの分野で一位だったそうじゃない!!学年第10席をお取りになるなんてさすがだわ。』
どうやら王女様はまた首席になられたらしい。というか彼女たち、どうして他人の成績を知っているんだろう。そこまで考えて、オレは疑問に思った。エリック殿とルル嬢は、オレやマオと違い、欠点らしい欠点はないはずだ。なのに“次席”ではないという。では、次席はいったい誰なのかーー。そのとき、廊下から二人組の男の会話が聞こえてきた。
『…そうか、ついに次席に…。さすがだな、ルーク』
『ありがとう。そういうエリックも、無事に10位以内に入れたじゃないか。』
『…これでも、5番手には入っていると思っていたのだがな…。』
『!!?』
その場の生徒全員が、その声の発生源に注視した。一人は当然、エリック・ヴェルト。もう一人の男は、あまり見慣れない男だった。黒髪黒目、背は13歳にして165はあるエリック殿より少し低く、それでも160はありそうだ。とはいえそれ以外に目立つようなところはない、きわめて平凡な容姿であった。この男が学年次席?最初はそう思えなかった。
学年が上がり、同じクラスとなったことで、そいつを近くで見るようになった。そいつの名前はルーク・ゼネル、“器用貧乏”の名で通っているゼネル子爵家の長男で、広く浅く、多くの分野に手を出していた。この学年では珍しいタイプであり、どの分野も中途半端で、1年次には、主に伯爵・侯爵家の生徒から後ろ指をさされていたとか。一方で、平民を含めた子爵以下の生徒からは信頼されているらしく、慕っている者は結構いた。その証拠に、このとき王女様とエリック殿、ルル嬢以外のトップテン入りしたのは、コイツに教えてもらっていた生徒だったそうだ。
ある日、オレとマオが食堂で昼食をとっていると、ルークが突然やってきて、こう言った。
『私とお話ししませんか?』
聞くところによると、ルークは前々からオレの研究や発表に興味があったらしく、機会をうかがっていた、とのことだった。それで、『エリックと話せるならプロトンとも話せそうだ』と判断し、こうして話しかけたらしい。話してみると、ルークとオレは波長が合うらしく、オレが話した内容の大部分は理解してくれたのもあり、とても楽しかった。家族でもあまり理解してくれない構想も受け止めてくれ、かつ意見も述べてくれたときは、ここまでの人生で一番嬉しかった。
そうして互いにタメ口で話すようになってからしばらくして、ルークから『一緒に体力作りをしよう』と誘われた。それもマオと一緒にと。断ろうと思ったが、ルークから『体力つけとけば、成績もまだ伸ばせるよ』と言われて、はっとした。確かに以前オレは、自分の成績が伸び悩んでいることを相談していた。成績発表の頃から、同じ侯爵家の生徒からの視線が冷たくなっており、マオのためにもどうにかしなければと思っていると。そのときは特に何もなかったが、覚えていたとは思わなかった。オレはすぐに了承し、マオに話して、一緒に参加しようということになった。マオもマオで、もう少しどうにかしたいと思っていたらしい。
そうして迎えた体力作り開始日。
『………』
『エリック、しゃべらないと伝わらないよ?』
『…エリック・ヴェルトだ、です。……また、やってしまった…』
『こういうのは慣れだからね。少しずつ慣れればいいよ。ちょうどここに練習相手がいるし。』
『いや、これはどういうことだ?』
そこにはルークだけでなく、エリック殿もいた。
『せっかく体力つけるなら、そこはほら、専門家に聞くのがいいと思って。』
『それはそうだが』
『まあそれと、エリックの会話の練習だね。エリック、口下手だから。』
『『???』』
オレとマオは首をかしげる。エリック殿が口下手とは?
ルークが言うには、エリック殿は普段から思考を巡らせ過ぎてしまう傾向があり、話そうとする時には、もう話題が変わっていることが多いらしい。それを繰り返すうちに口数も減り、ついには今の寡黙なイメージがついてしまったらしい。
『最初学園長から頼まれたときはビックリしたよ。なんせいきなり、“公爵家次期当主と話せ”って、ねえ?』
ルークは同じクラスで、加えて要領も悪くないため、この話が回ってきたらしく、そこから交流が始まったようだ。そうして関わっていくうちに、ちゃんと待てば返答してくれることがわかり、そこから一気に仲良くなったらしい。今では、知り合い程度なら、あまりごもることもなくなってきたそうだ。
『ーーというわけで、エリックは話し方や教え方が学べる、二人は体力がつく、上手い具合に利害は一致したわけだ。』
ルークはドヤ顔で締めくくるが、今まで交流がなかった相手との会話は、オレでも緊張すr
『良かった!じゃあ、これからよろしくお願いします、エリック様!』
『…エリックで、かまわない。』
『良かったね、エリック。』
(もう打ち解けた!?)
マオは昔から、あまり物怖じしない娘ではあったが、まさかここでもそれを発揮するとは。
こうして始まった交流だが、エリック殿は本当に、ただ話すのが少し遅いだけで、話はちゃんと聞いてくれるし、自分の考えをしっかりと進言してくれる。たまにマオの勢いに面食らった表情をするが、必死に相づちを打っているのが、今まで思っていたエリック殿と違い、少し面白かった。ルークいわく、エリック殿はマオに気があるらしく、なんとか告白したくて、会話の練習をより頑張るようになったそうだ。え、なにそれかわいいかよ。
そんなこんなで交流が続き、オレとマオは体力がついてきたし、エリックも話せるようになったしで、結果はちゃんとでていた。おかげで今では、ルーク同様気軽に話せる仲となれた。ちなみにこの間、ルークはオレたちの様子を見つつも鍛練を重ね、エリックの稽古の相手が務まるまでになっていた。それもう器用貧乏の域じゃないからな!?
気がつくと、ここにルル嬢や王女サマも参加するようになり、それにつられて多くの同級生が来たりと、オレたちの周りはさらに騒がしくなった。『風国の五人之異才』とひとまとめに呼ばれつつ、今まで交流らしい交流をしてこなかったオレたちは、最初はギクシャクしたが、ルークが中継役になってくれたおかげで会話ができた。ホント器用なヤツだなあ。
このときの交流のおかげで、オレたち5人は交流することが増え、各々が苦手としていたことに向き合うようになり、2年次の成績は、オレたちが上位を独占することができた。それは在学中ずっと続くのだが、何度やっても、主席の王女サマと、次席のルークは超えることができなかった。ルークのヤツ、何が『ボクは中途半端な男だから』だ。器用貧乏どころじゃないからな、それ。教師陣がルークのことを『万能者』と呼んでいると聞いたときは、激しく同意したーー
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「ーー、プロトン、お~い、聞こえてる~?」
気づくと、マオの顔がすぐ目の前にあった。しまった、考え込んでいたようだ。
「悪い悪い。ルークに出会った頃を思い出しててな。」
「あ~、懐かしいね!あの頃のエリック、今よりもっとしゃべれなかったよね~!」
「…忘れろ。」
「やーだよー!だって、あのときのエリックが勇気を出してくれたから、マオはこうして、エリックのお嫁さんになれたんだから。」
「………」
マオが嬉しそうに応えると、エリックが顔をますますしかめさせた。他の人からは怖いと評されるこの表情が、実は彼が照れているときの表情であることを知っているのは、オレたちのような一部の人だけである。
高等部最後の夏休みに、エリックはマオに告白した。それをマオがオッケーし、そこから二人は付き合い出した。その足で両家に挨拶をし、時間を掛けたものの、無事に婚約をした。順調に仲を育み、学園卒業から半年後の結婚式では、多くの人から祝福された。いやー、良い思い出だなあ。
「で?こっからは『一騎当千』エリックに聞くが、今回の任、どうなる。」
「…どうなる、とは?」
「実際のところ、ルークと女性騎士だけで、魔獣の大量発生に対処できるのか?」
今回の任務では、王女サマとルル嬢が周辺地域に赴き、人々の不安を取り除く担当。オレがその地域でなぜ魔獣が大量発生したのかを調査する担当。そして、ルークと女性騎士数名は、その大量発生した魔獣を退治、もしくは無害化する担当。以上3つの担当に分かれて、任務を遂行する。
ルークに表立った功績が必要なときに、ちょうどいい任務ではあるが、いかんせん数が多いと聞く。オレも含めた今回同行する3人は、全員が戦闘を苦手としている。多少戦えるとはいえ、戦闘はほとんどがルークと女性騎士に頼ることとなる。ルークがなんでもできる男なのは知っているが、できることに限度があることもまた知っている。大丈夫なのか、少し心配になる。
「……俺の二つ名には思うところはあるが…、ルークなら大丈夫だ。」
オレたち5人の二つ名は、すべてルークが考えたものだ。それを他のヤツに教えて浸透させていき、今に至る。オレは二つ名に意味があるのか疑問に思っていたのだが、ルークになぜつくったのか聞くと、
『だってカッコいいでしょ?』
と返された。ーーこのときはじめて、オレはルークとタメなんだと実感した。普段のほほんとしているため、あまり実感がないのである。
閑話休題
「…ルークは確かに、俺ほどの武力はないし、マオほどの魔術は扱えない。…だが、ルークは判断までが迅速で、そのほとんどは最適解だ。…加えて、少数で多勢を相手取るのは、ルークの得意とするところ。…そう心配することではない。」
「そうそう!それにルーくんは、私やエリックと、条件付きでもやりあえるんだから!」
「そう言われるとそうだな…」
重ねて言うが、ルークの技能は、どれもこれも一流と差し支えない水準だ。剣術だけでもエリックと数分はやりあえるし、中~遠距離からでも、マオと撃ち合えるだけの技量がある。そんなヤツが“制限無し”で遂行するんだ。そりゃ、うまくやるか。
「まあ、オレが今うじうじ悩んでも仕方ねえ。当日はルークを信じて、自分の仕事に専念するとしようかね。」
「…うむ、それがいいだろう。」
「3人とも頑張って…ね?」
マオはオレたち3人に声をかけようとして、しかし途中で違和感に気づいた。先ほどから、王女サマとルル嬢が一言も発していないのだ。というか、もう少し早く気づいて欲しかった。
「二人とも、初恋の相手が婚約したからって落ち込むの、もう少しあとにお願いしてもいいか?」
「「!?」」
「え、ウソ!?そうだったの!?」
「…そうだったのか…?」
「まあ、オレも報告受けるまで気付かなかったし。二人とも、よく隠し通してたよな。」
「いったいいつから知ってましたの、プロトン!?」
「正直、誰も気付いていないと思ってました。」
ここで、ようやく王女サマとルル嬢がしゃべった。二人とも確かにうまく立ち回っていたように感じた。しかし、
「いや、ほとんどの女子にはバレてたみたいだぞ?考えてみれば、学年が上がるごとに、ルークに声かける女子減ってたし。」
「なっ!?」
「言われてみると、思い当たる節はありますね…」
普段は聡明な二人が気付かなかったとは、“恋は人を盲目にする”というのは本当のようだ。
ルークは学生時代、主に子爵家や男爵家、平民の女子からの人気が、密かに高かった。ルークは基本温和な性格で、女性には特に丁寧に接することが多く、加えてどの分野もまんべんなくこなせるため、家柄以外での評価は高かった。
ただ、王女サマとルル嬢が、ルークに気付かれない範囲で牽制していたため、一歩踏み出そうとする者はなかなかいなかった。いくら学園に、家柄の優劣で判断しないという建前があっても、公爵令嬢と第二王女に立ち向かうのは、さすがに無茶がある。ーーもっとも、二人とも結局自分の気持ちが伝えられず、こうしてシルエイティ公爵家に盗られたわけだが。
オレとしては、家の跡継ぎでない二人が、ルークのところに嫁ぐのは悪くないと思う。友人として、せっかくの初恋を実らせてほしいと思う。しかしライセン様の話だと、ルークが婿入りするフェリシア様は、『重婚は認めない』と言っているらしい。フェリシア様は『風の戦姫』として、オレたち5人以上の人気を誇る。そんな人物の宣言をねじ曲げることはほぼ不可能であり、事実上二人の初恋は“敗北”が確定した。
「こんな状態で、二人ともまともに任務遂行できるのか?」
「それは問題ありませんわ。私の民を思う心に偽りはなくってよ?」
「わたしたちが行くことで、少しでも不安を取り除くことができたらと思います。」
なるほど、二人の民を思う気持ちは理解した。
「で、本音は?」
「これはあんまりですわ~!!!!!!」
「さすがに、明日どうルーク様と会えばいいか…」
「防音壁、張っといて良かったよ。」
「…二人とも、すまない。」
なんか居たたまれない空気になってきた。ーー思えば、こういうときは決まって、ルークが場を取り持ってくれた。器用過ぎるだろアイツ…
「…俺は計画通り、領地に戻り、国境の警戒にあたる。…すまない、俺にはこの空気、どうすることも…」
「私はこのまま王都に残って、いつでも防御壁が張れるようにしておくよ。
…ゴメンね、二人とも。プロトン、あとは頼んだ!」
そう言って、エリックとマオは会議室を出ていった。エリックは当然、社交的なマオですら、この空気はどうにもできなかったというのに、オレにどうしろと言うんだ…
「はあ、いつかこうなることは考慮していたとはいえ、ここまでクるものだったとは、思いませんでしたわ…」
「そうですね。お互い、意地になっていたのがよくありませんでしたね。」
二人は反省会のようなものをしており、話しかけづらい。気まず過ぎるのだが。
数分後。
「仕方ありませんわ。まずは近隣住民の方への訪問が優先事項。それに集中しますわよ。」
「はい。そしてそれが終わったら。」
「「全力でフェリシア様を説得!!」」
どうやら、任務終了後に、シルエイティ公爵家に自身の売り込みをすることに決定したらしい。逞しすぎるだろ、アンタら。
「プロトンもすみませんでしたわね、私たちに付き合わせて。」
「この埋め合わせは、必ずしますから。」
まあともあれ、二人が持ち直せたようで良かった。今回の任務は、失敗すれば被害が拡大してしまうような案件だ。参加者には、できるだけ万全の状態で臨んでほしいからな。
「いや、全然構わねえよ。二人が持ち直せたならそれで。第一、オレの役割が結構重要な担当だからな、それに全力で取り組める環境を整えるのも、仕事の内だ。」
こうして、オレもようやく帰れるようになった。とりあえず、明日ルークに会ったら一発小突こう、それくらいは許されるだろ、うん。
一方その頃。
「ぶえっくしょん!!…誰かウワサしてるのかな…?」
ルークは一人、明日の準備をしていたのだった。
読んでくださり、ありがとうございました。
詳しい5人のキャラ掘り下げはまた今度に。
何気に、ルークの身体的特徴の描写って、はじめてですね。
よくよく考えると、ライセンさんと国王陛下もまだです。
最初に登場したキャラの描写がまだとはこれいかに…
やっぱり執筆って、難しいですね。
13:00投稿予定の活動報告にも書きますが、
今後は週一投稿にしようと思います。
日・月曜日のどちらかを予定しています。
たまに短い回は他の日にも投稿します。
今後も本作を、よろしくお願いいたします。




