2 ファンタジーな世界
高級車もそうだけど、高級そうなソファの座り心地、神だな、と拓斗は悦に浸っていた。
学校が終わり、校門に横付けされた車に乗り込み、よくわからない道をしばらく通り、見上げるほどのビルの前で栗毛と一緒に降り、2階の部屋に通された。出されたお茶もなんだか美味しい。
「今日の出来事に関して、会ってほしいひとがいるんだ。」
栗毛が窓際からこちらを見る。
「キノコモドキのこと?」
「そう。」
あの身体のどこに双剣が収まっているのか若干気になる。
「これから来る予定なんだけど、ちょっと手間取ってるみたいだね。」
「へえ、どんなひと?」
「会えばわかるよ。」
あまり会話が続かない。今日会ったばかりだし、栗毛は余計なことはしゃべらない。
そうこうしてるうちに、ドスドスという音と振動がこちらに向かってきた。お茶が零れそうになるので慌てて拓斗は自分の分を飲み干した。
「悪いな、遅くなった。会議が長引いちまってよ。」
現れたのは非常にでかいグリズリーっぽい熊だった、しかも目の周りだけ白い。アロハシャツに短パンだ。
「会議お疲れ様です、熊さん、こちら鈴原 拓斗君です。」
「おう、拓斗、俺のことは熊さんって呼んでくれ。今日のことは栗栖から報告受けてる。怪我はないか?」
「栗栖さんのおかげで怪我ないっす、はじめまして、熊さん。」
「おう、そりゃ良かった。急に呼び出して申し訳なかったな、だが、こういうのははやいほうがいいからな。簡単なテストしてもらうぜ、この瓶の中に何がいるかわかるか?」
熊さんが取り出した手のひらに乗った瓶の中には某有名アニメーションのキャラクターそっくりなモノが浮遊していた。
「まっくろくろ●け?」
「正解、正式な名前はちがうけどな。お前は見えるってことの確認だ。こっちの世界で言うとこいつは胞子だ。」
それもまたナウ●カっぽい。言えないけど。
「こいつらが人間に取り付く。何ともないやつもいるし、今日お前が会ったやつみたいに取り込まれておかしくなっちまうのもいる。で、何故か見える人間を襲う。」
「見えなきゃよかったっすね。俺。」
「まあ、そうとも言えるが、見えなきゃ自分に胞子ついてても分かんねえぞ。気がついたら取り込まれるかもしれねえ。」
「あの、いつからそういう世界になったんすか?」
『最近。』
熊さんと栗栖の声が被った。
「で、こっから本題だ。拓斗、お前、もう見えちまって、あのキノコからしたら襲う対象になってる。うちはそいつらを狩る人材が欲しい。お前を鍛えるし、給料も出す。ただ、今の学校じゃ、緊急の呼び出しに対応出来ねえし、色々不都合だから、こっち指定の高校に転校してもらいたい。寮生活になっちまうけどな。」
「いいっすよ。」
拓斗は簡単に答えた。元々母親と二人暮らし、その母も昨年亡くなり、それからは母親が勤めていたキャバクラの女主人が何くれとなく世話を焼いてくれてここまで育った。
「良し、じゃあ、ここにサインくれ。」
熊さんの手際が良い。何枚かの書類にサインし、よくよく確認してからサインしろと注意を受けながら手続きは終わった。
「後は栗栖に聞きな、よろしく頼むぜ。」
やっと人心地ついた熊さんは、用意させたグラスにオレンジの輪切りが挟んであるトロピカルなジュースをストローで飲んでいた。




