第0話 0−0 一目惚れ
私たちのいる世界とは違う日本で物語が進んでいきます。地名や団体、作品などはすべてオリジナルのものです。
ああ、僕のこれは一目惚れ。間違いなく一目惚れ。だけど顔だけで君に惚れたわけじゃない。
綺麗で長い黒髪をなびかせながら、1人駅前のバス停で座る君はとても美しい。君がいるだけで、残暑というには強すぎるこの頃の暑さも、今日は少し柔らかい。
日本人らしく彫りは深くないけれど、大きい目と艷やかな唇が目を奪って離さない。君がいるだけで、駅周辺の嫌な排気ガスの匂いでさえも、群衆に満ちる悪の気配でさえも、何も気にならない。
白く美しい制服と、わずかに焼けた肌のコントラストが美しい君を見ると、胸がドキドキして止まらない。こんなのってある?早くしないと誰かに……。いやもうすでに?
だけれど、そんなにも綺麗な君だけれど、見た目の美醜なんてもはや些細なことすぎて。君の全てが好きすぎて。
君の所作から、隅々から全てが分かる。知的なこと。運動が苦手なこと。不器用なこと。優しいこと。強い意志を持てること。自信がないこと。恥ずかしがり屋なこと。でもちょっと傲慢なこと。
そういうことが、小説一冊にしたって語りきれるかわからないようなことが、手に取るようにわかるよ。だって僕と君は同じニンゲン。あぁ、君の手を取りたい。




