表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひとかけの名残と紫苑の刃  作者: 紫木
大決戦
PR
85/111

ニーア・カロライン

「皆の者、配置に付け! これより我が軍は進撃を開始する! 遅れを取るな、我等には女神の加護が付いている!」

 兵長の怒号に押され、皆が三々五々と散り散りになっていく。

「ではな、必ず生きてまた会おう」

「うん、絶対に死んじゃ駄目だからね。絶対だよ」

「ん。また一緒に……」

 差し出されたフェリアの右手を僕は力強く握り返した。

 同様にカエラも手を重ねてくる。

 駄目だ。これだけで僕はもう、涙が出そうだよ。

 大事なんだ。本当に大事なんだ。

 だからもう、誰も犠牲になんてならなくていい。


 ――姉さん、大事な仲間が出来たんだ

 ――いつかきっと、皆を僕の故郷に連れて行くよ

 ――もちろん、その時は『騎士』になるっていう夢を叶えて


 あの日、手紙に書いた誓いはもう果たせない。

 本当に奔放で、本当にトラブルばっかり抱えてしまうけど、彼は僕にとって本物の英雄だった。

 あの強さに憧れた。底の知れない自信に身震いもした。

 それが一瞬にして砕け散ってしまった。何の前触れも無く消え去ってしまった。

 

 僕はね――怒ってるんだよ


 必ず生きると誓った彼が、こんなにもあっさりと消えてしまったことに……

 必ず守ると誓った彼が、守るべき人を残していったことに……

 僕は弱いから……あまりにも僕には力が足りないから! 

 心の中で怒ることしか出来ずにいる。 

 

 笑っちゃうよね。この戦に勝利すれば、憧れの『騎士』はもう目前だっていうのに、僕にはまだまだ力が足りなかった。

 足が震えるんだ。

 こんな時になってもまだ、僕の足は震えている。

 たくさんの生き死にを見てきたはずなのに、たくさんの屍の上に僕は立っているはずなのに、まだ僕は君のようにはなれないよ。

「全体、前へ! 駆け足前進!」

 否が応にも開戦の時は迫ってくる。

 僕は果たして生き残れるんだろうか?

 僕こそがさっきの約束を守れるんだろうか?


『阿呆か、気張りすぎだ。背負い込むな、前だけを見ていろ――おまえの背中は俺が守る』


 そう言ってくれた人は、もういない。

『騎士』を目指すのなら、本当の意味での『騎士』を目指すのなら、今立たないでどうする。

 彼ならきっと、僕をそうやって鼓舞してくれるはずなのに……

「ん。緊張しすぎは良くない」

「……そうだね、ありがとう」

 そうだ、忘れちゃいけない。

 僕にはまだ仲間がいる。

 それだけでも、僕が前に進むには十分な力だ。

「カエラ、僕たちの班は……」

「ん。最前線の右翼、きっと、これ以上ないくらい激戦になる」

 当初の予定通り、貴族率いる主力――『聖騎士』は後続に控え、僕たちが露払いを任されることになっている。

 体の良い露払い、使い捨て、貴族たちの盾――誰もがそう考え、逃げ出した訓練生も少なくはない。

 でも……僕が逃げるわけにはいかない。

 他の誰かがどうであれ、僕を逃すわけにはいかない。

 仇を取ろうとまで自惚れてはいないけれど、守らなければいけない――守りたい人がいる。

「……フェリアが戦場に着く頃には終わってるかもね」

「ん。その意気や良し。私も全力を尽くしてまっとうする、絶対に守り抜いてみせる」

「……ぷっ」

「……ん。笑うのは失礼、先に真似をしたのはニーア」

 どうにも、僕らはやっぱり彼頼みになってしまうみたいだ。

 こんな時ですら、あの面影が僕らに力を与えてくれる。

 彼ならきっと、こう口にするだろう。

 彼ならきっと、この状況で笑ってくれるだろう。


 僕等はそんな、彩霞律の戦友なんだ

 

「必ず生きて帰ろう。生きて帰って、祈梨ちゃんにちゃんと伝えてあげないと」

「ん。絶対に生きて帰る、絶対に」

 彼が守りきれなかったものは、僕たちが守り抜く。

 大丈夫――もう、何も恐れることはない

 騎士見習いCクラス――ニーア・カロライン推して参らせて頂きます!



 ……っと、それにしても、モフランのことだけは心配だなあ。

 最近は全然顔も合わせられなかったけれど、きっと彼も律のことは聞いてるはず。

 あまり馬鹿なことを考えてないと良いんだけど…………

 まあ、モフランがいるのは主力後方の部隊だから、大丈夫だよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ