第14話 共鳴する記憶
宿の部屋に戻った俺は、ベッドに腰を下ろした。
まだ着替える余裕もなく、剣を握ったままの手が少し汗ばんでいる。
村は今も緊張の空気に包まれていた。
外からは、かすかに人の声と足音が聞こえる。
倒れた家畜の処理や、負傷者の運搬と応急手当──
最低限の対応だけが、静かに、けれど慌ただしく進められていた。
しばらくして、扉の向こうから軽い足音が近づいてきた。
コン、コンとノックの音がして、ミラがそっと顔をのぞかせる。
「アッシュ、大丈夫……? 無理してない?」
俺は軽く首を振った。
「平気だよ。ミラは……?」
「アタシは大丈夫。今、村の人たちが怪我人を運んでるの。少しでも回復手伝ってくる」
そう言って、ミラは自分のローブを握り直す。
「アッシュはここで休んでて」
少しだけ表情に迷いが浮かび、けれどすぐにいつもの笑顔に戻ると、ミラは静かに扉を閉めた。
その足音が、廊下の向こうへと遠ざかっていく。
見えなくなった彼女の背中が、不思議と目に浮かんだ。
その足取りには、迷いがなかった。
自分にできることを、ただまっすぐに選んだ人間の、それだった。
俺は、その姿を思い浮かべながら、ふっと息を吐いた。
──
一人きりになった部屋。
夜の冷えた空気が、肌を撫でる。
それでも、手に握った剣は、わずかに温もりを保っていた。
あの時──
剣に触れた瞬間、確かに、俺の中に何かが流れ込んできた。
名前。
力。
宿る想い。
すべてが、脈打つように、自然と染み込んできた。
まるで、呼吸するように。
──
今も、静かに意識を向ければ、この剣が持つ力や性質が、輪郭をもって浮かび上がってくる。
言葉にしなくても、自然と理解できた。
まるで──身体の奥から、答えが届くみたいに。
──メモリア共鳴
【対象】古剣
【カテゴリ】武器系フラグメント
【出典時代】第三次世界(魔法機械融合時代)
【性能】
攻撃力:95
耐久力:60
属性:風刃付与
特殊効果:高速連撃【Lv1】(連撃発生率+10%)
【貴重度】Aランク
【評価】
精霊シルフの加護を受けた片手剣。
──
(……これが)
手のひらに伝わる、微かな脈動。
この剣に刻まれた記憶。
この剣がどんな時代に生まれ、どれほどの力を持ち、何のために使われてきたのか──
そういった“背景”までもが、感覚を通して流れ込んでくる。
その断片を、今、俺は確かに掴んでいる。
(あの──白い空間で、声が言っていた)
メモリアの力。
これは、その力なのか?
まだ確信は持てない。
けれど、この手に宿った“何か”が、確かに情報へと繋がっている。
(これが……俺の中に、宿り始めている……?)
答えは、まだぼんやりとしていた。
はっきりと形を持っていない。
けれど。
それでも。
剣は、確かに、俺の存在に呼応しているように感じられた。
(けど……)
思考の底で、小さな疑問が膨らんでいく。
なぜ俺なんだ?
この力は、いったい何のために与えられた?
何も知らず、何も覚えていないはずの俺が、なぜ──戦えた?
なぜ、この世界に俺はいる?
──俺は、いったい、何者なんだ?
いくらなぜと問いかけても、答えは出ない。
けれど、何も見えないわけじゃない。
確かにこの手の中に、形になりかけているものがある。
……それを、確かめなければならない。
剣の重みをもう一度確かめるように、俺は柄を握り直した。
窓の外では、月が雲に隠れはじめていた。
ゆっくりと、夜が深まっていく。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
※ちなみに今回登場した表記はアシュトには、「攻撃力95」みたいな数値が見えてるわけじゃありません。
剣に触れたときに「これぐらいの強さだな」とか感覚的にわかる感じです。
数値や性能の表記は、読者の方がイメージしやすいように入れてるだけなので、ステータス画面とかが見える系の能力ではないです。
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