第8話 おかえりなさい
「私たちの前では、弱音を吐いたっていいんだよ。それも全部花蓮ちゃんなんだから」
そう言いながら私を抱きしめてくれる実莉ちゃんの手の温かさが、背中にじんじんと伝わってくる。
友達の手って…こんなにも温かいものなんだなぁ。
正直言うと、やっぱりあの人たちは怖い。
だけど…私は実莉ちゃんたちと離れたくない。
せっかく仲良くしてくれている。話を聞いてくれて、優しく抱きしめてくれている。
こんなに素敵な友達ができたのなんて、本当に久しぶりだから。だから私は、アイドルをやりたい。
今日の、ほんの少しの時間に話しただけだけど、ちょっぴりみんなのことが分かってきた。
瑠奈ちゃんは元気いっぱいで、颯姫ちゃんと実莉ちゃんを引っ張っていく力強さと人を笑顔にする力がある。颯姫ちゃんは大人みたいに振る舞ってるけど、実は少し子どもっぽくて、でもかなり面倒みが良さそう。
そして、実莉ちゃんは。二人のお姉さん的存在で、しっかり者。そして、誰かの話を聞いて、その人に寄り添う優しさを持つ素敵な人。
私、この人たちに出会えてよかった。ちなちゃんに言われた時は怪しさしか無かったけど(そもそも何も説明されてなかったし)、きちんと来てよかった。
「実莉ちゃん…あのね、私は…仲良しの友達とか言える人が居なかったの。でも、今日実莉ちゃんたちに出会って…なんだかとっても、ワクワクしたの。皆とならなんか、なんでも楽しめちゃいそうな気がしたし、瑠奈ちゃんといたら私も前向きになれるかなって思ったの」
実莉ちゃんは私を抱きしめたまま、じっと話を聞いてくれます。
「最初は勢いに流された気もするけど…瑠奈ちゃん、颯姫ちゃん、実莉ちゃんと話して、三人ともっと仲良くなりたいって思った。三人と一緒なら、人前も怖くないかなって思えた!だから私は、やめないよ、アイドル。いつか胸を張れるような自分になる為に、アイドルをやりたい。実莉ちゃんたちと一緒に、行けるところまで行ってみたい!」
これは、紛れもない私の本心で。ほぼ初対面の人に言うのも変かもしれないけど、でも、言いたかった!
「実莉ちゃん……?」
何も言わずに私を抱きしめる実莉ちゃんに、声をかけたら。
実莉ちゃんはとっても優しい顔をしていた。
「ありがとう、花蓮ちゃん。嬉しい」
その言葉を聞いたら、ふわふわと温かい気持ちになって。
友達って、いいなぁ。
「大丈夫、花蓮ちゃん。もし花蓮ちゃんに何かあったら、私たちが全力で守るから。助けるし、話も聞くから。だって、仲間でしょ?」
実莉ちゃんがそう言って、にっこりと笑う。
そっか、仲間かぁ。
読モ時代、私の周りにはライバルしかいなかった。同じ年頃の子達しかいないけど、みんなバチバチしてて、誰もその空気を変えようとはしなかった。私も言えなかった。
だから、仲間って言葉の響きが凄く嬉しい。本当にアイドルみたい。
「ありがとう、実莉ちゃん……これから、よろしくね」
入部届けが配られたら、さっと名前を書いて瑠奈ちゃんに渡そう。いや、入部届けというより、創部願になるのかな?
どっちでもいいけど、楽しくなりそう。きっと、毎日楽しく過ごせる。
この人たちと一緒なら。
そう思っていると、廊下の方から走ってくる足音が聞こえた。と思ったらすぐにガラガラっ!と音をたて、ドアが開いた。
「ただいまー!ねえねえ聞いて、めちゃくちゃ面白いことになったんだよー!」
入ってきたのは、元気いっぱいに話す瑠奈ちゃんと、瑠奈ちゃんを追いかけてきたのだろう、少しぐったりした颯姫ちゃんがいた。
その光景をみているとなんだか笑顔になってきて、私は実莉ちゃんと笑いあって言った。
「「おかえりなさい」」




