第7話 力になりたい
瑠奈と颯姫が顧問になってくれる先生を探しに職員室へ行っている(であろう)時、私と花蓮ちゃんは三年三組の教室で、ポスターの図案を考えていた。
「ここはもうちょっと大きくした方がいいかな…でもそうしたら、イラストとバランスが取れなくなっちゃうのよね……」
私は呟きながら、学校のプリントの裏紙にシャーペンを走らせる。一応言っておくけど、私のプリントをまあいっかー、って使ってるわけじゃないわよ?各クラスにゴミ箱と共に設置している、余ったプリントなんかの紙ゴミ専用ゴミ箱から拝借したの。ここに捨ててある紙は誰でも使っていい紙だからね。
ふと紙から顔を上げると、向かいに座る花蓮ちゃんが少し俯いていた。心なしか表情も強ばっていて、机の上の手はシャーペンをぎゅっと握りしめている。
「花蓮ちゃん、どうかした?大丈夫?」
と私が声をかけると、花蓮ちゃんは俯いたまま言った。
「大丈夫で…あ、大丈夫」
敬語がまだ抜けきってないところが可愛いな、なんて思ったけれど。
これは大丈夫じゃないわよね…さすがにここまでわかりやすかったら私でも気付くわよ。
「大丈夫じゃないでしょ?言いたくなかったら言わなくてもいいけど、なにか悩んでいることがあったら言って。私も花蓮ちゃんの力になりたいの」
私は言った。だって、せっかくできた後輩で、チームメイトなんだから。大事にしたいし、可愛がってあげたい。
すると、花蓮ちゃんは、下を向いたまま話し出した。
「大したことじゃないんですよ…別に。ただ……少し、昔のことを思い出して」
昔の、こと……?
「昔、読モやってたって話はちなちゃんから聞いてますよね?あ、一応言っときますが、中学生読モっていうちゃんとしたやつです、年齢偽ってたりはしてないです。そのとき、クラスメイトから無視されたりしてて……」
「無視されてた……?」
私が言うと、「はい」と言い、花蓮ちゃんは続ける。
「そもそも私、小学生の時、よく街角スナップ的なやつに載ってたんですよ。カメラマンさんやスタッフさんと仲良くなるくらいには常連でした。それで、小六の時、中学になったらこんなのできるよ、やってみない?って仲良しのカメラマンのお姉さんに言われて、オーディションを受けてみたら、通っちゃって。小さな地方の新聞や雑誌ではあるけど、読モをしてたんですね。それを見たファッション好きの子たちが、なんでアイツなのって思ったらしくて。そこから、そのグループの人達に、ずっと無視されて。先生がみている時は仲良しのフリをしてきて、でも先生が居なくなった途端足踏んできたりからかってきたり、ブスって言ってきたりして。だから、少し怖いんです。高校生アイドルになったことをあの人たちが知ったら、またなにかしてくるんじゃないかなって思ってしまう………」
話している間、ずっと下を向いていた花蓮ちゃん。その手はさっきより強く握られていて。
そんな過去があったんだ…きらきらしてる世界としか思ってなかったけれど、大変なこともたくさんあるのね。
それなのに、私たちと一緒にやるなんて言ってくれて……なんて、なんていい子なんだろう。
私は思わず花蓮ちゃんを抱きしめていました。
「みのりさ……みのりちゃん!?」
驚く花蓮ちゃんをさらに抱きしめ、言う。
「花蓮ちゃん。辛かったよね、今まで良く頑張ってきたね。それでも、その人たちの悪口を言わない花蓮ちゃんは凄くかっこいいよ。でも、無理なんかしなくていいんだよ。本当はやめたかったら、やめていいよ。知り合ったばかりだけど、私は花蓮ちゃんのこと、大切な友だちだと思ってる。花蓮ちゃんには笑顔でいて欲しいから、思ったこと全部、言って欲しいな。我慢しないでいいから、私たちに気を使わなくていいからさ」




