第10話 頑張るから
「やー!食べた食べたー!」
瑠奈のノーテンキな声に、「ほら、さっさと終わらせちゃいましょ!」と返す実莉。その様子を見てあはは……と笑う花蓮。
いやー、なんか今日は長い一日だなぁ…ま、ポスター清書して印刷して貼るっていう仕事がまだ残ってんだけどさ。
ていうかさ。
「早く終わらせて帰ろ!?」
おっとっと……思わず本音がこぼれてしまった。
だってさ、今日は午前中で帰るはずの日なんだよ!?あたしたち、なんでのんびりしてんの!?先生に早く帰れって言われるよ!?ていうかあたしも早く帰ってゴロゴロしたいよ!?
そんなあたしの気持ちが伝わったのか、なんとも言えない表情で見てくる実莉と花蓮。……なんかこの二人似てきたな?会ったばっかのはずなのに。
「確かに!早く帰ろ!私、先生に紙貰えないか聞いてみるね!」
そして、あたしのツッコミに我に返ったのか、さっきまでのんびりしていたはずの瑠奈がぴょこんと立ち上がり、そのまま駆け出した。
行動が早いのは瑠奈のいい所だけど、猪突猛進気味なのはちょっとねぇ……
なんて思ってたら。瑠奈がすごい勢いで開けたドアを眺めながら、実莉が言った。
「さて……私たちもやりましょうか。私と花蓮ちゃんで下書きをするから、颯姫はペンでなぞって。白黒印刷でしょうから、塗りは必要ないし、ペンでなぞっていた方がコピーしたものでもわかりやすいからね」
なるほど、わかりやすい。そしてあたしには下書きをやらせないという魂胆だな?前衛芸術って言いたいんだろ?
……冗談です、画家さん、すみませんでした……慰謝料だけは勘弁して……
なんて、脳内に登場したベレー帽にエプロンの画家さんに脳内土下座をしていると、花蓮が呆れた顔で見てきた。……エスパーかな?
きまり悪くなったあたしがひゅーひゅー口笛を吹いていたら。
ガラッ!
騒々しい音を立てて、瑠奈が入ってきた。
「じゃーん!教頭にもらってきたー!さっさと書いてコピって貼って帰ろ!」
瑠奈は簡単に言うけどなぁ……実働部隊(実莉と花蓮)は大変だよ?
「あ、ありがとう、瑠奈。ついでにお願いしていいかしら?先生に掲示物の許可をもらうのと印刷カードを借りてきて欲しいの」
実莉が瑠奈の手から紙を受けとりながら言った。
その言葉に瑠奈はうん!と頷くと、また走り出す。元気だなぁ。
「さてと。こっちも仕上げましょうか、花蓮ちゃん。私が絵を描くから、花蓮ちゃんは文字をお願いするわ」
おっと、あたしたちがいない間に役割分担をしていたみたい。手際がいいな、さすが実莉。花蓮も「了解です」と言い、別の紙に沢山文字を書いている。何パターンか作ってるみたい。
にしても暇だなー。あたし、なぞるしかやることないし。そう思ったあたしは腕を枕に突っ伏していると………
ペシッ。
「こら、颯姫!起きなさい!もう作業終わったわよ!」
実莉に頭を叩かれた。……ん?
どうやら、いつの間にか寝ていたらしく、実莉に冷たい目で見られている。
「颯姫ちゃん寝てたから、全部終わらせたよ。さ、早く帰ろう」
引きつった笑みを浮かべる花蓮の隣で、「そーだよ!私ちゃんと仕事したのに颯姫寝てた!」と怒る瑠奈。……瑠奈にも言われるとは。
「まあ過ぎたことは仕方ないわよ。アイドル活動の時、今日の分も頑張ってもらいましょ」
そう言い、実莉はカバンを手に持つとドアの方へ向かった。実莉にならい、瑠奈と花蓮もカバンを手に取り、ドアへと進む。
「あ、ちょ、ごめんってば、ちゃんと頑張るから待って〜!」
あたしが急いでカバンを手に持って駆け寄ると、三人は笑いだした。
……ちゃんと頑張るからさ、許して?ね?




