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Galaxy War Online  作者: Chilly
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第二八話 ~ 会戦前の作戦分析 ~

「こちらVG研スレイプニル。至急用件にて、通信許可願う」


 ミッション用部隊通信にTakuが繋いですぐに、α任務部隊の旗艦“初瀬弐式”にてYDN44ZEが答え、Takuの前にある通信モニターに苦虫を噛んだような表情のカイゼル髭の蓄えた顔が映る。


「急に戦列を乱してどうしたと言うんだ?」


 通信が繋がるとすぐにYDN44ZEは、眉間に皴を寄せて目を細め、口を開こうとしていたTakuを制して吐き捨てるように問いかける。


「ま、理由は言わなくとも判る。このまま先鋒はVG研に任せる」


 その問いかけに答えようとTakuは口を開きかけるが、YDN44ZEは自分で問いかけておきながら、それさえも封じ込めるように手をあげて動きを制して、間を開けずに言葉を続けてスレイプニルの行動を追認した。


「Takuはどう見る?」


 まるで親の敵に会ったようにTakuを睨み付けていたYDN44ZEは、一通り厭味を言ったことで溜飲を下げたのか、その目に入れていた力を抜いて溜息と共にドカッと深く椅子に腰掛けると、手で顔を覆って上を向きながらモニターに映るTakuに問いかけ、今度はそのままの態勢で答えを待つ。


「完全にこちらの情報はあちらに流れていて、手薬煉引いて待っているかと」


 Takuも肩を竦めて疲れたように溜息を吐いて、YDN44ZEの問いかけに答える。


「今、阿求亜ちゃんに別行動の右翼集団の現状を調べてもらってます。ま、確認みたいなものですけどね」

「それはこちらでもやっている。残ると思うか?」


 Takuが苦笑しながら、右翼集団の現状を阿求亜に調べるように頼んだことを言うが、その内心は右翼集団の生存を諦めている節が見える。YDN44ZEもそれがわかっていながらも、確かめずには居られなかったのか、瞑目して右手で自慢のカイゼル髭を弄りながらTakuに確認をとる。


「正直に言って難しいでしょうね。モシン・ナガンがどこまで力を入れてきているか、右翼集団の方に何人向かわせているのか、その辺次第でどうとでも変わりますが、最悪を想定していた方が気が楽です」


 Takuは苦笑していた顔を真剣なものに引き締め、右翼集団が攻撃を受けている想定で、現在どうなっているかについて自分の考えを口にする。そして自分で口にした内容に、苦虫を噛む潰したような表情を浮かべる。


「サテライトは今回のPVを防衛をメインにするつもりなのか。あいつは何も言わなかったが……」


 Takuの言葉を聴きながらYDN44ZEは、自分の考えに没頭するようにカイゼル髭を弄り、今回のミッションを依頼されたときのことを思い返す。

 思考の海に潜ったYDN44ZEを邪魔しないようにTakuは、黙って議論が再開されるのを待つ。


「罠に嵌ったようなものか。一旦無理をしないで下がるのも手だが」


 ふぅと溜息を吐いて、閉じていた目を開けるとYDN44ZEは、髭を弄っていた手を下ろしてコンソールを弄る。


「それは愚策でしょうね。スナイパー特化師団ともなると、うちよりも索敵性能は上でしょうから、すでに相手に捕捉されていると考えられます。ここで下がる素振を見せれば……」

「一気呵成に襲い掛かってくるか。まぁ今の狙撃に対しての警戒を見せている段階で、襲い掛かられても不思議ではないがな」


 YDN44ZEの言葉尻を引き継いだTakuの濁した言葉を引き継いで、YDN44ZEは険しい表情を見せるも、すぐに緊張感を持ちながらも、肩の力を抜いて苦笑いを浮かべる。


「とりあえずはこのまま進むしかないか。相手の後手に回るのは正直、好きではないがな。ん? すまん、ちょっと待ってくれ」


 YDN44ZEはTakuに向かって、手の平を見せてすこし待つように頼むとコンソールを操作して通信の回線を切り替えたようで、Takuの目の前のモニターから消える。

 YDN44ZEと話したことで現在の取り巻く状況が、最初から悪い方へと転がっていたことを再確認したTakuは、深く息を吐き出しドッと身体を投げ出すように深く椅子に腰掛けた。


「Takuさん、右翼集団に関しては通信封鎖していたことと、索敵範囲外ということもあって私だけでは無理そうですね。ただ、第一予想防衛線だったあたりから少し惑星よりに、無人だと思われる偵察ポッドがいた痕跡をいくつか発見しました」


 通信を終わらせたと感じたのか深く椅子に腰掛け、天井の方に向けた顔を手で覆って考え事を始めたTakuに、阿求亜が指示されたことの結果報告をあげる。

 その報告にTakuは覆っていた手をそのままに、髪を掻き揚げるように阿求亜のほうへと顔を向ける。その目は少しでも阿求亜からもたらされる情報から何かを得ようと、自然と鋭く厳しいものに変わっていくが、阿求亜は気にすることなく報告を続けた。


「最低三機、最大で一〇機でしょうね。先ほど予想第一防衛線だったあたりを通過した瞬間、複数箇所から一瞬だけ感知できた放射された赤外線は、アクティブセンサーによるものと思われます。その発信箇所を精査したところ、移動する複数の偵察ポッドの排気炎と思わしき航跡と熱量を感知しました」


 目の前のモニターに映る観測結果を、阿求亜は自分なりに咀嚼して報告しながら、さらにコンソールを操作して、より詳しい解析をプログラムに指示を下していた。


「一応、警戒ラインとしての予想防衛線は合っていたという感じかな。戦力は配置されていなかったが」


 阿求亜の報告からエルフ側にこちら側の動向を調べる意図があることを感じられたTakuは、その先を見通すべく偵察ポッドだけが配置されていたことについて考える。

 YDN44ZEとの話し合いで、エルフ側がすでに準備が終わっていると考えられる現状、予想第一防衛線はそこまで固執する必要性のない位置ではあるが、すこしでも鉱石採掘資源惑星よりも遠い位置で防衛を行い、防衛線に厚みを持たせてこちらの戦力を磨り潰すためには戦力を配置しておくことも一考に価する。


「防衛戦力の集中運用で、こちらを一気に殲滅できるほどの火力を用意してあるのか? それとも一点突破されない自信があるのか」


 資源惑星攻略戦の場合、基本的に惑星直上に配置されているターミナルと呼ばれる惑星統括人工衛星を破壊すれば攻撃側の勝利である。

 しかしこのターミナルを破壊するためにはトルーパーが近距離まで進入する必要があり、長距離からの艦砲射撃にミサイル攻撃、トルーパーによる狙撃に関しては強力な規制がかけられほぼ破壊は不可能、近距離まで肉薄しての艦砲射撃とミサイル攻撃に対しても、本来の攻撃力が発揮されず大幅に減退した攻撃力になってしまう。

 近距離に肉薄したトルーパーの攻撃にしても、ターミナルを破壊するための攻撃力を持たせるためにはそれ専用の火器が必要になり、ほぼターミナル攻略しかできないため守備戦力に対しての護衛が必要になる。

 それでも高出力スラスター等で機動性を極限まで上げた、核武装のトルーパーによる一点突破の自爆攻撃からターミナルの破壊を防ぐためには、何枚も防衛線を敷いて厚みを持たせることが重要で、防衛側がもっとも気をつけなくてはならないことでもある。


「しかし、不測の事態を防ぐためにはそれなりの厚みがないといけないだろうし」


 Takuは今いる地点から鉱石採掘資源惑星までのマップをコンソールから呼び出し、高出力スラスター装備のトルーパーが一点突破したとしてもターミナルまでたどり着けない距離で、防衛に適した宙域が無いか洗い出し始める。

 集合地点L1から予想第一防衛線までは、ほぼなにもない開けた宇宙空間が広がっていたが、予想第一防衛線から鉱石採掘資源惑星の月と言える衛星までの間であれば複数箇所の小惑星帯が横たわっている。そこに伏兵を忍ばせれば発見がし辛くそれなりの効果が見込めるが、それはこちらも考慮していることを相手も判っているだろうから、本当にこの小惑星帯に戦力を配置するとは思えないが、そこまで見越して配置することも考えられる。

 裏の裏、そのまた裏を考え、思考が袋小路に入りかけたことに気がついたTakuは頭を振って一旦思考のリセットを図った。


「Takuさん。エルフ偵察ポッドの詳細がわかりました。残存放熱量の減衰状況からあの地点を後退したのはこちらの索敵範囲に入る一分前程度。放射赤外線の波長から大型索敵無人機のUF-4Gだと思いますけど、あれはそれほど速度がでませんからその改造機だと思います」


 Takuの思考が一旦止まったことを見越してか、丁度タイミングが良かったのか阿求亜が先ほど発見したエルフ側の偵察ポッドについての分析結果が出たと報告が上がる。


「あの円盤型か。索敵範囲が広い上に搭載燃料も多いから稼働時間が長いんだよな、あれ」


 阿求亜の報告にドライがUF-4Gについての感想を付け加える。

 UF-4Gは地球連邦、エルフ両陣営が使用している戦艦に搭載可能な円盤型の無人索敵機で、オペレーターもしくはキャプテンが戦艦から遠隔操作して、周辺の状況を調べることを目的に使用される。 

 様々な種類の無人索敵機が存在するがUF-4Gは、その中でも一番大型で広範囲に及ぶ索敵範囲と長時間の稼働が可能な無人索敵機だが、機動性が犠牲になっており非常に鈍足な機械で、発見されれば撃墜は容易く、いかに早く見つけ、いかに速くその場を離脱するかが重要であるが使い捨てに近い。

 今回使用されたUF-4Gはその改造機で、多少の稼働時間と索敵範囲を犠牲に機動性を向上させることで、汎用性を持たせて扱いしやすくしたD-GL氏が設計し直し、彼のホームページで公開している造型データから作られたUF-4G高機動汎用型が使用されたと阿求亜は分析していた。


「その改造機ですから、純正機よりも稼働時間は短いと思いますよ。もう移動しているかも知れませんけど、第三か第二予想防衛線くらいに母艦があったと思います」


 阿求亜は、この宙域を映したマップに発見した偵察ポッドの痕跡を中心に、稼働時間で行動できる距離を円で囲み、母艦が居たであろうと思われる地点をピックアップして記録していく。


「わかった。阿求亜ちゃんはそのまま、相手のいそうな地点をピックアップしておいてくれ」


 阿求亜とドライの会話をTakuはそう言って纏めると、YDN44ZEから通信が再度繋がったことを知らせるシグナルがモニターに点ったため、コンソールを操作して通信を繋げてモニターにYDN44ZEを映した。

 YDN44ZEは通信を一旦切る前の緊張感を持ちながらも肩の力を抜いたリラックスに近い状態から、眉間に深い皴を刻み、厳しい表情を浮かべていた。


「L'oiseau bleuのA.T.から通信が入った。現在エルフの待ち伏せを受け交戦中。状況は二方面からの長距離狙撃による十字砲火を受けているとのことだ」


 厳しい表情でYDN44ZEが伝えた右翼集団に投入したエルフ側の戦力に、Takuは驚きよりも予想通りといった表情を浮かべる。


「これで決まりですね。右翼集団の撤退援護のためにも、最大戦速での突撃を進言します」

「そうだな。右翼に向けている戦力が戻る前に攻略できればいいが、それは右翼集団の奮戦に期待するしかないな。先鋒、よろしく頼む」


 Takuの進言を受け入れたYDN44ZEは、これからの戦いに不安を見せるが苦笑を浮かべて割り切ると、表情を引き締めてぎこちなくはあるが多少は様になっている敬礼と共に通信を切った。


「ドライ、最大戦速! このまま先鋒をこちらで受け持つ。ターミナルを俺たちで落とすぞ」

「sir! Yes sir」


 Takuの言葉にドライは答えて舵輪脇のコンソールを操作して、比推力可変型プラズマ推進機のヘリコン・アンテナに投入される推進剤を増やし、スレイプニルの速度を上げていく。

 徐々にスピードを上げていく様子を確認しながら、Takuはコンソールで艦内通信を選び、格納庫に居るコングを呼び出す。


「機体設定で頼みたいことがあるんだが……」


 慌ただしさを増し始めた艦隊のいる宙域の静けさは、迫り来る戦いの厳しさを感じさせるような張り詰めた緊張感を含んだ嵐の前の静けさを、コンソールのモニターを見ながら索敵情報の分析を続ける阿求亜には感じられた。

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