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Galaxy War Online  作者: Chilly
12/30

第一一話 ~ 姉からの電話 ~

 トルーパー操縦技術訓練担当教官により悠陽は長い方形のトンネルの中に敷設されたレールの端に付いたリニアカタパルトの上に送られた。

 そこで訓練担当教官から説明を受け、何度か発艦と着艦の訓練を繰り返す。

 ここのチュートリアルクエストは練習の後に一度でも発艦と着艦を成功させればクリアということで、悠陽は危なげなくクリアすることが出来た。

 そしてクエストが終わったところで悠陽はそろそろ昼食の時間になるとログアウトする。

 VRゲーム特有の真っ暗な空間を抜けて現実世界へと戻っていった。


「く~、結構疲れたなぁ。やっぱり五、六時間連荘でやると体が強張るかな?」


 優はベッドから降りながら、左手を右肩の上において肩をぐるぐると回す。

 ひとしきり柔軟体操をベッドの脇で行い強張った体を解すと、机の上に放置していた携帯電話を片手に自室を後にし、一階のリビングへと昼食を取りに階段を下りていく。

 銀河大戦にログインしていたときに着信があったのか、机の上に放置していた携帯電話にメールの着信を知らせるランプが点滅していたので、階段を下りながら優は携帯を開きメールの差出人を確認した。


「あれ? 姉貴からか。そういえばキャラ名を後でメールしろとかも言ってたっけ」


 携帯を弄りメール本文を開く操作をしながら優はリビングへと入った。

 メールの中身は案の定、優のキャラ名と現在どこまで優が終わらせているのかをさっさと知らせろと言う催促であった。


「ほんとに催促かよ。えぇと後チュートリアルってどれくらいあったっけかな?」


 キッチンに入り、冷凍庫から冷凍食品のボロネーゼのパスタをとり、中身のビニル包装のまま皿の上に乗せ電子レンジへと放り込みながら、優は指折り残りの受講しているチュートリアルクエストを数えてみる。

 現在トルーパー操縦訓練の発艦着艦訓練まで終わっており、この後総合宙間戦闘訓練に生産クエストが数種類に販売クエストがまた数種類、タウンお使いクエストが数種類あって卒業総合試験クエストと優のチュートリアルクエストはまだまだ残っていた。


「結構数残ってるなぁ。あと……一日以上かかるか?」


 それでもとりあえずは現在の状況を瞳に知らせておくかと、優はメールの返信をレンジのパスタが出来上がるまでの時間にポチポチと両手の親指を器用に使い瞬く間に本文を作成、ざっと確認した後瞳へ送信した。


「さ、飯食ってさっさと続きをしてチュート終わらせないとね」


 返信の終わった携帯電話をポケットにしまい、出来上がったパスタをレンジから取り出し、優は火傷をしないよう気をつけながらダイニングの机へとフォークを口に咥えて運ぶ。

 中身が熱され膨らんだ包装のビニルを慎重に破き、さぁ食べようとフォークを突き刺したところで、ズボンのポケットにしまった携帯電話が着信を知らせるメロディーを奏でながら、さぁ自分に気がつけと自己主張するように元気に震えだした。


「これから飯だってのに、誰だよ」


 優は一旦フォークを置き、ズボンから携帯電話を取り出し着信の名前を確認すると携帯電話の画面には先ほどメールを返信した瞳の名前が表示されている。

 現状を報告し終わったのに何の用だといぶかしみながら通話ボタンを押し、携帯電話を耳に当てる。


「優っ!」


 耳に当てた瞬間聞こえた瞳の大声に、優は思わず携帯電話を耳から離した。

 興奮した瞳の大声が携帯電話から流れてくるが、優はしばらく放置して携帯電話を机の上に置いておく。

 机の上に放置して三〇秒は放置したところで、瞳の大声が聞こえなくなった。

 そこで優は漸く再び携帯電話を耳に当てるのだった。


「姉貴、何の用だよ。そんなに怒鳴って」

「優……あんた、聞いてなかったわね……」

「そりゃあんだけ怒鳴ってりゃ、携帯耳から離すよ」


 落ち着いた声で話す優に、息を切らせた瞳が恨み言のように優が瞳が延々と話している間、聞いていなかったことを低い唸るような声で問い詰めるが、優はしれっと気にした風もなく事実を告げる。

 そんな様子の優に瞳も自分がそのような電話を受けた場合を考えてしまい、とっさに言葉が続かなかった。

 “ゴホン”と一つ咳払いをした後、瞳はとりあえずこの携帯電話から耳を離していた件については棚に上げて、本来の目的を達成することにする。


「……まぁいいわ。それよりも優! チュートリアルが後一日以上掛かるってどういうことよ」


 瞳は優の返信内容が気に食わず返信を読んですぐに電話をよこしたらしく、彼女の声の後ろからざわざわとした大勢の人間の気配がするのにくわえぼそぼそと小声で話し始めたことに、大学かどこか外から電話しているのだろう。さらにあんな大声を出して、さぞ瞳はその場で注目されて羞恥に顔を真っ赤に染めているかもしれないと優は考える。

 そして用件も当然と言うべきか、優の返信の内容についての文句であり雰囲気的にすでにチュートリアルを終わらせていたのではないかと瞳が考えていたように優は感じた。


「いや、だってチュートリアル多くない? 銀河大戦って」


 チュートリアルの数を優は頭の中で数え、瞳が何ですでにチュートリアルを終わらせていると思い込んでいたのか考えてみるがわからない。


「はい? 確かに多いけどいらないのばっかりじゃない」


 瞳は瞳で銀河大戦のチュートリアルが取捨選択できる仕様なので、優がなぜチュートリアルを終わらせるのに時間がかかるのか理解できない。


「いらないのばっかって」


 瞳の言葉に“確かに未実装部分が多いよなぁ”と思いつつ、優は苦笑を浮かべてしまう。


「だってそうじゃない。未実装ばっかだし」

「確かにそうだけどさ。個人戦闘の射撃訓練とか面白かったよ」


 優の言葉に瞳はさらにいらない理由を付け加える。

 優も瞳の言葉に同意しつつ、いらないことはないと一応の反論を試みてみるも、瞳の反応は今一で鼻で笑うような音が携帯電話のスピーカーから聞こえてくる。


「いつ実装するかわからない機能のチュートリアルなんて受けたって時間の無駄だし、実装されてから受ければいいじゃない」


 この瞳の考えは大多数の銀河大戦のプレイヤーの考えと言えるだろう。チュートリアルは出来上がってはいるが、肝心の実装部分に関しては開発が難航しており、いつチュートリアル自体が仕様変更されるかもわからないのだから当然と言える。


「そうかな? 個人戦闘の射撃訓練なんてどこだったか忘れたけど、タイムアタックを開催してたしさ。あとは……」


 瞳の未実装部分チュートリアルについて活用事例を実例もあげて、不要ではないと一応反論するもこれについても瞳の反応は今一で不要論を撤回する気は全くないようだ。


「はいはい、そうやって遊ぶ分にはいいとは思うけどね。でもわざわざ受ける必要性を感じないわね」


 瞳にとってはその部分だけ抜き取って、息抜きついでに遊ぶ分には認めることもやぶさかではないようだが、チュートリアルとしては全く認めていないようで取り付く島もない。


「でも命中とか回避のスキル熟練度はあがったよ?」

「微々たるもんでしょう? チュートリアルで上がるくらいパワーレベリングですぐあがるわよ」


 このメリットならどうだと出した熟練度に対しても瞳の態度は変わらなかった。

 それどころかそれのどこがメリットかと言わんばかりに、プレイヤーを一機落とせば命中スキルの熟練度の上昇率がどうの、さらには相手とのレベル差がどう影響してとWikiにも書かれている熟練度計算式を持ち出し、どれだけチュートリアルの熟練度上昇値が雀の涙か力説しだす。

 滔々と話す瞳の言葉を半ば聞き流しながら、優はとりあえず中断させられていた目の前のパスタを食べるべく、フォークに絡める。


「ということで、未実装部分のチュートリアルは必要ないわよ」


 優にとっては正直言えば経験値効率云々よりも、自分がゲームをしていて楽しければ良いという考えの下ゲームをしているので瞳の話ははっきり言えばどうでもいい。

 しかし瞳達VRゲーム研究会の人間と一緒にやる以上、そのあたりも考慮に入れなければならないだろうと優は思う。

 となると効率厨のごとく経験値効率を求め、より良い場所へとゲームをのんびり楽しむという雰囲気にはなりにくいかもしれない。


「まぁうちはそこまで効率にうるさくないんだけどね」


 と優の考えは瞳によって嬉しいことに否定される。


「それでもレベル差があるからちょっとは効率にうるさくなるかもだけどね」

「結構レベル差って制限受ける?」

「チーム内だとそこまでではないんだけどね。いろいろやり方あるし」


 銀河大戦においてキャラクターレベルは能力値とスキルレベル上限を上げる意味合いしかない。

 たしかに能力値やスキルレベルが高ければ、多少アクション操作が苦手であってもそれを補うことができるが、アクション操作が得意であり高度な操作が可能であれば多少のレベル差は逆転できる。

 さらに多くのゲームにおいてパーティプレイにおけるレベル差が広がるにつれ悪くなっていく経験値効率に関しても、銀河大戦ではレベル差はあまり考慮されていない。

 基本的にチーム内においても経験値がチームメンバーに分配されることはなく、倒したプレイヤーのみに経験値が入る仕様になっているため、経験値効率がレベル差によって悪くなるということはない。

 経験値をチーム分配がないということでMOBやPCを倒してパワーレベリングがやりにくく、ある意味やりやすいというところではあるが基本的にパワーレベルングのやり方は決まったやり方がすでに考案されている。


「というわけでさっさとチュートリアル終わらせなさいよ。全部受けたわけじゃないでしょ?」


 話が脱線しだしたことに気がついた瞳が本来の電話の目的に話題を戻す。


「受けたよ、全部。やっぱやっとかないと損じゃない?」


 軽くあり得ないだろうという感じの瞳の言葉を優はあっさりと肯定する。

 あっけらかんとした優の様子に瞳は頭痛を感じたように重い溜息を漏らす。


「ハァ……そんなことあるわけないでしょ。さっきも言ったとおり未実装なんて受ける必要はないわよ」

「じゃあ、結構減るかな?」


 瞳の言葉にモグモグとパスタを食べながら優は、残りのチュートリアルクエストにおいて未実装部分を指折り数えてみる。

 残りのチュートリアルクエストの約三分の一が未実装部分に関係ある、もしくは間接的に関係あるため現在そのクエストでしか遊ぶことができない。

 その部分を削れば時間は単純に計算しても三分の一減ることになる。


「あと実装部分でもパイロットには必要ないものもあるわよ? 生産関係とか」

「へ? 生産ってパイロット関係ないの?」

「タウンが拡張されれば違ってくるけど、今はメカニックしか意味ないわよ」


 生産という要素は未実装ではないため、削る部分に入れていなかった優は瞳の言葉に唖然となってしまう。

 たしかにWikiをさらってみたものの、優はうろ覚え、読み違いな部分がかなりあるようで知らない部分や勘違いしている部分が結構あるようだ。

 現在生産で実装されている部分が戦艦の作成とトルーパーの作成に武装、弾薬の作成くらいであるため、多少読んでいれば誤解することもなかったとは思うが、キャラクターの作成時で使用可能な服飾データ関係をプレイヤーが作成できる趣味生産だと勘違いしていたようだった。


「あれはキャラ作成のおまけじゃない。まだ作れないわよ」

「まぁ作る気は無いというか作れる気はしないけどね」

「それはそうよ。ああいったのは、それなりの職人が絶対いるからその人たちに任せればいいのよ」

「たしかに」

「っと、また話が脱線したわね。まぁいいわ。優、どこまでチュートリアル終わってるのよ?」


 再び脱線しかけた流れを瞳は戻し、優に進捗状況を尋ねる。

 優にチュートリアルに関しての決定権を与えると、本当に全部のクエストを受けてしまうと考えたようだ。


「とりあえずトルーパー操縦訓練の発艦着艦訓練まで終わってて、次は総合宙間戦闘訓練かな?」


 瞳の質問に優は別に隠すでもなく正直に答えた。

 瞳は頭の中でそのクエストに関する情報と残りのクエストを検索する。


「なによ、もうそこまで行っていれば後のクエストなんてやらなくてもいいじゃない」

「えぇ! 生産はいいけど、売買関係のクエストとかはいるでしょ」

「却下。そんなのは私たちが教えるわよ。チュートリアルのクエストやっても何にももらえないし意味ないわよ」


 検索した結果、残りのクエストは必要なしと宣言する瞳に対して、自分には必要なクエストがあると優は主張をするが瞳は即座に却下する。


「それよりもさっさとタウンに移って、市庁舎クエストやってお金や装備を貰ったほうがいいわね」

「えぇぇ」


 そして瞳は如何に先に進んだほうがいいか説明しようとするが、優は不満を露骨に表明する。


「決まり! 一時半に宇宙港の第四五埠頭の入口に集合。すぐに集まれるメンバーと顔合わせ」


 不満を表す優を無視し、瞳は強引に話を決めると“遅刻は厳禁、遅れたら折檻フルコース”という優にとって全く有難くない言葉を残して電話を切るのだった。

 

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