↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/3

第一話 「この気持ちは誰にもわからない」

 

 七界輪廻 —終わらない転生—


  第一章 剣を握った少年



 



いつも、周りに合わせていた。


 笑うべきところでは笑う。

 誰かが怒っていれば、一緒に怒ったふりをする。

 話しかけられれば普通に返事をする。


 だけど、自分から誰かに話しかけることはほとんどなかった。


 教室の一番端。

そこが、隼人にとって一番居心地のいい場所だった。


「隼人ってさ、なんか静かだよな」


「まあ、そういう奴じゃね?」


 そんな言葉が聞こえてきても、隼人は聞こえていないふりをした。

別に、嫌われたいわけじゃない。

ただ、目立ちたくなかった。

誰かに嫌われるのが怖かった。

誰かの機嫌を損ねるのが怖かった。

 

 だから、いつも周りに合わせていた。


 そんなある日の放課後だった。


「あの……隼人くん」


 教室に残っていた隼人に、一人の女子が声をかけてきた。


「……どうしたの?」


「ちょっと、話したいことがあって……」


 彼女は顔を赤くしながら、しばらく黙っていた。


 そして――


「私……隼人くんのことが好きです」


「……え?」


 隼人の頭が真っ白になった。

自分が誰かに好かれるなんて、考えたこともなかった。


「本当に……俺でいいの?」


 ようやく出てきた言葉は、それだった。

彼女は小さく頷いた。


 その瞬間だけは、隼人の胸に温かいものが広がった。


 ――自分にも、誰かを必要としてくれる人がいる。


 そう思った。


 けれど。


 その出来事をきっかけに、隼人の日常は大きく変わった。


「おい、隼人」


 翌日の昼休み。


教室で突然、男子生徒に呼び止められた。


 クラスの人気者――裕太だった。

誰とでも話せて、運動もできて、いつもクラスの中心にいる。


 そんな裕太には、好きな女の子がいた。

昨日、隼人に告白してきた彼女だった。


「お前、あの子と付き合ったんだってな」


「……それがどうした?」


「俺があの子のこと好きなの知ってて付き合っただろ」



 裕太の声が低くなる。

それからだった。


 隼人の学校生活は、少しずつ壊れていった。

持ち物を隠される。

陰で悪口を言われる。

 休み時間になると、わざと聞こえるように笑われる。


 最初は耐えられた。


 ――気にしなければいい。


 そう思っていた。


 でも、一日が終わるたびに、心の中に何かが積み重なっていった。


 家に帰っても、誰にも相談できなかった。


 そんな生活が3ヶ月も続いた。


そしてある日、


「別れよ」と告げられる。


 一瞬時間が止まった。一気に不安が心の中を覆う。


「なんで?」


「隼人は私と付き合うのやなんでしょ?今日裕太が言ってたよ。」


「それは嘘だ」裕太の嫌がらせに決まってる。


「だってみんな言ってるもん!」


彼女は走って帰っていった。


 そうだった。俺をいじめてるのは一人じゃなかったんだ。


——俺の味方はいなくなった。

 

そしてその夜。


「……ただいま」


 勇気を出して、親に話そうとした。


「学校で、ちょっと……」


「また学校の話?」


 返ってきたのは、冷たい言葉だった。


「そんなの、自分でどうにかしなさい」


「でも……」


「もう疲れてるんだよ」


 その一言で、隼人は何も言えなくなった。


「……ごめん」


 自分の部屋に戻る。

ドアを閉めた瞬間、静寂が訪れた。


 味方なんていない。

 学校にもいない。

 家にもいない。


 だったら――。


 隼人は、明日を迎えることすら怖くなった。

ベッドに横になる。


 部屋は暗い。


 時計の針だけが、静かに動いている。

眠れなかった。


 何度目を閉じても、今日までのことが頭の中に浮かんでくる。


 ――死んだほうがマシなのかな。


 そう考える。


 けれど、その瞬間。


「……まだ、生きたい」


 自分でも驚くほど小さな声が漏れた。


 涙が一粒、頬を伝った。

本当は怖かった。

本当は、まだやりたいことがあった。


 本当は――。


誰かに「生きていていい」と言ってほしかった。

だけど、そんな人はどこにもいない。

そう思いながら、隼人は静かに目を閉じた。

 そして――眠りに落ちた。


   


「……ん」


 朝。

隼人は目を覚ました。


 しかし。


「……ここ、どこ?」


 見慣れない天井だった。ベッドから起き上がる。


壁も、家具も、何もかも知らない。


「……え?」


 隼人は慌てて部屋を見回した。

窓を開ける。


 そこから見えた景色に、言葉を失った。


「……村?」


 木でできた家。石畳の道。遠くには大きな森。

見たこともない服を着た人々が歩いている。

男の人の懐には剣がささっている。


どうやらこの世界では剣を使うらしい。

 

しかも――。


「朝から……酒?」


 道の端では、大人たちが大声で笑いながら酒を飲んでいた。


 まるで祭りのように賑やかだ。


「なんなんだよ……ここ……」


 隼人は混乱した。

スマートフォンもない。知っている建物もない。

知っている人もいない。


「……誰も、俺を知らない」


 その事実に、不思議な安心感を覚えた。


 けれど、すぐに昨日のことを思い出した。


 そして隼人は、また俯いた。


「……もう、いい」


そして、近くにあった山に行き崖の上から飛び降りようとした。


 そのときだった。


「君はそれでいいのかい?」


 背後から声がした。


「……誰?」


 振り返る。

そこには、一人の女性が立っていた。

長い髪を風になびかせ、腰には剣を携えている。

 隼人は警戒する。


「……俺に関わらないでください」


「なぜ?」


「あなたには関係ないから」


「そうか」


 女性はそれ以上、近づかなかった。

ただ、隼人をじっと見つめる。


「それで?」


「……え?」


「そんなに辛いなら、逃げてもいいんだよ」


 隼人の目が僅かに揺れる。


「でもな」


 女性は空を見上げた。


「逃げることと、自分の人生を終わらせることは同じじゃない」


「……」


「今のお前には、明日がどうなるかなんて分からないだろう?」


「……そんなの、どうでもいい」


「本当に?」


 隼人は答えられなかった。


「もし明日、今まで見たことのない景色が見られるとしたら?」


「……」


「もし明日、お前を必要としてくれる誰かに出会えるとしたら?」


 隼人は唇を噛んだ。


「……そんな人、いるわけない」


「いるかもしれない」


 女性は笑った。


「人生なんて、出会ってみなければ分からない」


 その言葉が、胸に刺さった。


「私はな。昔、大切な人を失った」


「……」


「そのとき、何度も思ったよ。あの人がいないなら、生きていても意味がないって」


 女性は少しだけ寂しそうに笑った。


「でもな。時間が経って分かったんだ」


 そして隼人を見る。


「生きる意味っていうのは、最初から与えられているものじゃない」


「……」


「生きている途中で、自分で見つけていくものなんだ」


 隼人の目から、涙が落ちた。

昨日からずっと欲しかった言葉だった。

誰かに否定してほしかった。


 「まだ終わらせなくていい」と言ってほしかった。


 そして今、初めてそれを言ってくれる人がいた。


「……俺にも、見つけられますか」


「ああ」


 女性は即答した。


「だから――」


 一歩、隼人に近づく。


「私の弟子になれ」


「……弟子?」


「弟子というものが欲しかったんだ。」


「なんですかそれ」

 

 隼人は笑った。


「剣も、生き方も教えてやる」


「剣、ですか?俺使ったことなくて」


「使ったことないのか、珍しいな」


女性は少し驚いた。


「俺……強くなれるかな」


「お前次第だ、」


 隼人はしばらく黙った。

そして、小さく拳を握った。


「……それでも」


 顔を上げる。


「やってみたい」


 女性は笑った。


「その顔だ」


 こうして隼人の異世界での生活が始まった。


  



 まずは、この世界について勉強しようと思った。


 隼人は世界の生き物や歴史などを勉強した。

どうやらこの世界には、怪物が現れるらしい。

だから男の人は剣を持ち、家族を守ったり、怪物を倒すことでお金を得ているらしい。

 



そして次の日


 村を見下ろす丘の上で、隼人は空を見上げた。

 昨日までの自分とは違う。


「強くなって、元の世界に戻る」


戻り方なんてわからない。でも何故かできるような気がした。


そして――。


「もう、裕太に怯えない俺のことをいじめてたやつ全員後悔させてやる」


 隼人は強く拳を握った。


「今度は、自分の人生を自分で決める」


 こうして少年は、初めて――


 「生きる理由」を探す旅へ歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。