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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: P


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水泳

「あんた、水泳が終わって

家に着くのは何時頃になるの?」


最寄りの駅に着く少し手前で、

桜がそう聞いてきた。


「んー、直で帰れば……

だいたい二十一時半くらいかな」


「わかったわ。

じゃあ、そのくらいの時間に行くから。

首を洗って待っておきなさい」


「え、俺、殺されんの?」


そう言った俺を一瞥することもなく、

桜は「じゃ」とだけ言って、

郁美と並んで駅の方へ歩き出していった。


……こんな状況でも

水泳を休めない自分は、

もはや半分洗脳されている気がする。


『親が失踪したので休みます』

なんて言えば、

さすがに理解はされるだろう。


でもそれはそれで、

事件性が強すぎて、

面倒臭いことになる。


『体調不良で』という手もあるが、

あのコーチ相手だと

後で何を言われるかわからない。


しかも大会は一か月後に迫っている。

安易に休む選択肢は、

最初からなかった。


結局、家にいても

考え込むだけだと思い、

俺はそのまま水泳に向かうことにした。


プールサイドに行くと、

すでに和政がストレッチをしていた。

俺もその隣に腰を下ろす。


「あ、達也くん。

大丈夫だった?」


「ああ、なんとか話はついたよ。

無理言って悪かったな、

桜たちのこと」


「いや、いいよ!

もしかしたら、

達也くんの親の行方も

掴めるかもしれないし!」


「そっか……

ほんと、助かる」


心の底からそう思った。

本当に、いい後輩を持ったものだ。


その後、

鬼コーチの容赦ないメニューを

なんとかこなし、

和政と別れて帰路につく。


スマホを見ると、

時刻は二十一時二十分を指していた。


桜からの連絡は、

まだない。


とりあえず、

二人が来る前に

少しでもマシな状態にしておこうと、

俺はシンク周りの掃除を始めた。


溜まっていたゴミを捨て、

食器を洗い、

油汚れをざっと拭き取る。


完璧とは言えないが、

料理をするには十分だろう。


「……まあ、

これくらいやっとけば

怒られはしないだろ」


自分なりの出来に

ひとまず満足した、そのとき。


――ピンポーン。


インターホンのチャイムが、

部屋に静かに響いた。

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