和政の叫び
「やめろ、優磨!!」
和政の叫びが、空気を裂いた。
その瞬間、辺りの空気がスッと引き締まり、
時間が止まったように静まり返る。
ナイフの刃は、まだ俺の喉元に押しつけられたまま。
だが――
“優磨”と呼ばれた男は、
まるで雷に打たれたみたいに顔を上げ、
ぎこちなく和政を見た。
「……なんでだ?
なんで俺の名前を知ってる……?」
「僕は――
12歳の夏、公園でサッカーしてた時……
一緒にいた和政だ」
「……和政?
和政……和政……」
優磨の眉がゆっくり吊り上がり、
次の瞬間、何かが弾けたように口元が歪む。
「ああ――
あの時、俺を置いて逃げたヤツか!」
「それは……違っ――」
和政は顔を引きつらせ、
言い訳を探すように視線が彷徨う。
だが、優磨はかぶせるように吐き捨てた。
「違わねぇよなぁ!?
あの得体の知れねぇ場所に俺を置き去りにしてよ……
お前、真っ先に逃げたじゃねぇかよ、
このチキン野郎!!」
和政は唇を噛み、
息を呑んだまま固まっている。
だが――
優磨は不意に肩を震わせ、
まるでそれが“最高のお笑い”であるかのように
笑い始めた。
「まあ、いいけどな。
あれのおかげで……
今こうして“楽しい思い”ができてるんだ。
別にお前を恨んでるわけじゃねぇ。
そこはどうでもいい。
――ただ、そうか……
俺を覚えてるヤツがいたのか」
優磨の瞳が、ギラリと爬虫類のように光る。
その光は、
虫を踏み潰す直前の、
ぞっとするほど冷たい好奇心だった。
「そりゃあ……
ますます“殺さなきゃ”いけねぇよなぁ。
ギャハハッ!
まずは――
こいつからだ」
ナイフが再び、
俺の喉に力を込めた。
その瞬間だった。




