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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: ダダ太郎


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23/201

危機

ザッ、と草を踏む音。


次の瞬間、男がナイフを閃かせ、

一直線に俺の首へ突き出してきた。


「っ!」


反射的に左腕を前へ。


刃が腕をかすめ、

熱い痛みが弾ける。


それでも止まれない。

血のにじむ腕でナイフを受け止めたまま、

男の手首を掴み取る。


「離せやッ!」


怒号と同時に、男が全身でぶつかってくる。


俺たちは絡み合ったまま草の上を転げ、

湿った土の冷たさが背中に刺さった。


気づくと俺が下、男が上。


逆光になった男の影が覆いかぶさり、

月光を受けたナイフが

俺の目の前でぎらりと揺れた。


「くっ……!」


必死に両手で押し返す。


だが男は体重すべてを腕に乗せ、

刃はじわじわと喉元へ沈むように迫ってくる。


川の流れがざわざわと耳元をかすめ、

鼓動の速さがそれに重なる。


呼吸がうまくできない。


草と土の匂い、

そして鉄のような匂いが混じり、

頭がぐらついた。


その時——。


ドスッ。


「ぐっ……!」


男の膝が腹に突き刺さるように押し込まれ、

内側から押しつぶされるような衝撃が走った。


息が漏れた瞬間、

腕の力がわずかに緩み、

刃先がさらに俺の喉へ迫る。


男の荒い息が顔にかかった。


川風の冷たさとは正反対の、

生々しく湿った呼気。


「死ねぇ!!」


叫びとともに、

ナイフが一気に加速した。

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