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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: P


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22/70

狂人

抗うという選択肢は、最初から存在していなかった。


俺たちは無言で携帯を地面に置き、

ゆっくりと手を上げる。


その間も男のナイフは桜の喉元に吸い付いたように張りつき、

呼吸に合わせて刃先がかすかに揺れ、

そのたびに冷たい光がちらりと跳ねた。


「――上も下も脱げ。

パンツ一丁になれ」


低く濁った声が落ちてきた。


意味が飲み込めず、俺は思わず足を止める。


「脱げって言ってんだろォ!!」


怒号とともに、男は桜の首へ刃を“チッ”と押し当てた。

細い線のように赤がにじみ、

桜が小さく肩をすくませる。


「わかった!

わかったから!

やめろ!

今脱ぐ!」


俺たちは震える手で急いで上着を脱ぎ、

ズボンを足元へ落とした。


男はその様子を見るなり、腹を揺らして笑い出す。


「ギャハハハハッ!

マジで脱ぎやがった!

バァーカ!

アハハハハッ!」


瞳孔は開ききり、

目の奥は焦げついたみたいに黒く沈んでいた。


「ッハー……

笑いすぎて腹いてぇ……

もういいわ」


男は息を荒くしながら、指で俺をビシッと指す。


「じゃあ一人ずつこっちに来い。

まずはその青パンのガキからだ」


完全に“玩具を見る目”だった。


粘りつくような恐怖が背中から這い上がり、

全身の毛穴がざわりと開く。


――もう、賭けるしかない。


俺は男にゆっくり近づきながら、

必死に脳内でシミュレーションを繰り返した。


ナイフが桜の喉元から、

ほんの一瞬でも離れる瞬間。


その一瞬に——


全てを賭けて仕留めるしかない。

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