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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: ダダ太郎


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距離感

正直に言えば――

それが、俺が祖母を少しだけ苦手に感じている理由でもあった。


この状況なら、

「しばらく一緒に暮らそう」とか、

「うちに来なさい」と言われても、

不思議じゃないはずだ。


それでも祖母は、必要以上に踏み込んでこない。


距離を詰めすぎず、突き放しすぎず、

まるで最初から“ここまで”と決めているかのように。


けれど、その距離感には覚えがあった。


子どもの頃からずっと、

祖母はそうだった。


優しくはあるけれど、寄り添いすぎない。

心配はしているのに、それを前面には出さない。


だから俺は、何も言わなかった。


「どうして一緒に住まないの?」とも、

「もっと来てほしい」とも。


それが祖母なりのやり方で、

そして俺自身も、どこかでその距離を受け入れてきたのだと思う。


「……わかった」


短くそう答えると、

祖母はそれ以上何も言わず、静かに頷いた。


その日から結局、祖母も家に泊まることになった。


「今日はもう遅いし、無理はしないで寝ましょう」


翌日からの数日間は、

慌ただしくも淡々と過ぎていった。


溜まっていた洗濯物を片づけ、

使われていなかった部屋を整理し、


冷蔵庫の中身を確認しては、

買い物に出る。


祖母は手際がよく、

必要なことを必要な分だけ進めていった。


感情的になることもなく、

かといって冷たいわけでもない。


ただ「生活を回す」ことに

集中しているようだった。


俺も言われるがままに動いた。


掃除機をかけ、

ゴミをまとめ、

書類を仕分ける。


父と母の痕跡が残る場所に手を伸ばすたび、

胸の奥がきゅっと締めつけられたが、


不思議と手は止まらなかった。


止まったら、

きっと立て直せなくなる気がしたからだ。

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