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わからない
わからない。
今の郁美は、
一体何を考えているのだろうか。
甘えた仕草も、唐突な独占欲も、
どこまでが本心で、どこからが壊れているのか――
境目が見えない。
胸の奥に重たい靄を抱えたまま、
俺は祖母と並んで警察署を出た。
外はすでに夕方の色を帯びていて、
空気はひやりと冷たい。
事情聴取の疲れもあってか、
足取りがやけに鈍い。
「自宅まではお送りしますよ」
そう言われ、俺は小さく頭を下げた。
正直、今は一人になるのが怖かった。
甘えられるなら甘えようと思った。
そのときだった。
「達也くんと一緒に帰る」
背後から、はっきりとした声。
振り返ると、
郁美がまっすぐこちらを見ていた。
その目は笑っていないのに、
口元だけが柔らかく上がっている。
「いや……今日は……」
俺が言いかけると、
郁美は一歩近づく。
「一緒に帰る。だって彼女だもん」
祖母が驚いたように俺を見る。
警察官も微妙な空気を察して、視線を泳がせた。
「いや、今日は一回帰ろう。
きっとお母さんも心配してる。」
「嫌だ!離れたくない!
達也くんと一緒じゃなきゃやだ!」
「昨日一泊までって約束しただろう!」
そう言い残して、
半ば郁美から逃げるように、
足早にパトカーへ向かう。
背中に視線が突き刺さる。




