祖母
「今、ご親族の方に連絡を取らせていただいています」
年に一度、顔を合わせるかどうか。
正直、距離はあった。
それでも、今の俺にとって頼れる大人は、
祖母しかいなかった。
しばらくして、扉がノックされる。
「達也くん、祖母の方が到着されました」
廊下に出ると、そこに祖母が立っていた。
小柄で、背中が少し丸くなっている。
それでも目だけは、昔と変わらず強かった。
「……大変だったね」
その一言で、
胸の奥に溜まっていたものが一気に崩れそうになった。
祖母はすぐに警官と話を始め、
必要な手続きを一つひとつ確認していく。
行方不明届の正式な提出、
今後の捜索の流れ、
家の管理のこと、
学校への連絡。
俺はただ横で聞いているだけだった。
理解はしているはずなのに、
どこか他人事のようだった。
やがて、事情聴取は一通り終わった。
「今日は一度、ご家族の方と帰宅してください」
「今後、進展があり次第、こちらから連絡します」
その言葉が、妙に現実的で、重かった。
署の外に出ると、
空はもう完全に昼の色になっていた。
祖母は俺の肩に手を置き、静かに言った。
「しばらくは、私がそばにいるからね」
その時、少し遅れて、
郁美が警官に付き添われて出てきた。
視線が合う。
郁美は何も言わず、
ただ小さく、にこりと笑顔を見せた。




