事情聴取
「……達也くん、どうするの?」
「どうするって……警察に行くしかないだろ。
父さんと母さんの仕事先からも、
何度か連絡が来てるし……」
「……獄門のことは?」
その言葉に、俺は一瞬だけ息を止めた。
「……秘密にするしかない」
「……そっか」
短い返事。
皮肉なことに、
こうして二人きりで話せる時間ができたことに、
少しだけ安堵している自分がいた。
本当は、
郁美が寝ている間にすべて片付けるつもりだったのに。
俺は立ち上がり、
背中の重みからそっと逃れる。
「準備しよう。
あんまり待たせるのも悪い」
「うん」
警察の車に乗り、署へ向かう道中、
車内は不思議なほど静かだった。
サイレンは鳴っていない。
ただ、淡々と現実へ連れて行かれているだけなのに、
胸の奥がずっと締め付けられていた。
署に着くと、
俺と郁美は別々に通された。
白い壁、簡素な机、硬い椅子。
ドラマで見たことのある光景なのに、
実際に座ると現実味が違った。
警官は穏やかな口調だった。
「最後にご両親と話したのは、いつですか」
「最近、変わった様子はありませんでしたか」
「連絡が取れなくなったのは、いつからですか」
一つひとつ答えるたびに、
言葉が胸に引っかかる。
“事件かもしれない”という前提で話が進んでいることが、
否応なく伝わってくる。
途中、警官が一度席を外した。




