125/135
同行
俺は反射的に否定しかけて、口をつぐんだ。
ここで訂正すれば、説明が増える。
今は状況をややこしくしたくない。
「そうか。では彼女さんにも、少しお話を聞きたい。
署までご同行をお願いできますか」
「達也くんが行くなら……」
郁美はそう言って、俺の方を見た。
胸の奥がざわつく。
今の郁美を、警察の前に出して
本当に大丈夫なのか。
獄門のこと、昨夜のこと――
どこまで口を滑らせるかわからない。
そんな不安をよそに、
郁美は俺の背後に回り、
座っている俺の背中に腕を回した。
「……充電♡」
状況にそぐわない一言。
警官は一瞬だけ視線を泳がせ、
軽く咳払いをした。
「と、とりあえずですね。
達也くんも彼女さんも、外出の準備をした方がいいでしょう。
着替えなどを済ませてください。
我々は外で待機します」
そう言って、二人の警官は玄関へ向かい、
扉が静かに閉まった。
家の中に、急に静けさが戻る。
郁美はまだ、
俺の背中にくっついたままだ。




