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獄門ループ ―家族が消えた日―  作者: ダダ太郎


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119/125

すると郁美は、

相変わらず俺の携帯を手にしたまま、

何かを操作している様子だった。


嫌な予感が胸をかすめたが、

もうどうでもよくなっていた。


……なるようになれ。


俺は冷蔵庫から牛乳を取り出し、

コップに注いで一気に飲み干す。


「寝る時は、

うちの親の部屋のベッド使っていいから」


それだけ言い残し、

俺はぶっきらぼうに背を向けた。


階段を上がり、

自分の部屋へ向かう。


体力が完全に底をついていたのだろう。


布団に潜り込むと、

考え事をする間もなく、

意識はすとんと落ちた。


――そして、朝。


ぼんやりと浮かび上がってくる意識の中で、

普段は嗅ぐことのない、

甘くて柔らかい匂いが鼻をくすぐる。


同時に、

胸のあたりにわずかな重み。


不思議に思い、

ゆっくりと目を開ける。


……そこにいた。


俺の腕の中で、

郁美が静かな寝息を立てている。


驚くほど無防備な表情で、

すやすやと眠っていた。


長いまつ毛が頬に影を落とし、

その顔つきには、

まだどこか幼さが残っている。


だが、それとは相反する

大きな胸が俺の脇腹に当たっている。


一瞬、現実なのか夢なのか分からなくなって、

俺は息をするのも忘れて、

ただその光景を見つめていた。


――なんで、こうなった。


胸の奥に、

戸惑いと、言葉にできないざわめきが

広がっていく。


眠っている郁美は、

昨夜のあの豹変ぶりが嘘だったかのようで、


まるで――

以前の、心優しかった頃の郁美に

戻ったみたいに見えた。

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