電話
コール音が、やけに大きく感じる。
一回、二回、三回――
「……出てくれ」
祈るように呟いた、その直後。
ぷつ、と音がして、通話がつながった。
「達也?……何かあった?」
「いや……なんていうか……
郁美が……今、うちにいる……」
「……え?」
一拍、沈黙が落ちる。
「家でくつろいでたら、
二十二時くらいにインターホンが鳴って……
確認したら、外に郁美が立ってて……」
「……そっか……」
桜の声が、わずかに低くなる。
「帰ってって言ったんだけど……
義父のことでお母さんと大喧嘩したらしくて、
それで家出してきたみたいなんだ」
「……なるほどね……」
短く息を吐く音が、電話越しに聞こえた。
「……私の家……じゃ、だめよね……」
「うん……たぶん……」
言いながら、
俺自身も確信が持てなかった。
「なんでかわからないけどさ……
郁美、本当に……
中の人が入れ替わったみたいに
豹変してて……」
「……うん」
桜は、迷いなく言った。
「獄門から出てきた時から、
ちょっとおかしかったもの」
その一言が、胸の奥に重く落ちる。
「とりあえず……もう遅いし」
「……」
「今日は泊めてあげて。
明日、学校で……
私のほうから郁美に話してみる」
「……わかった……」
「あ……ベッドは別々にするのよ……
えろや……」
「っっ! 当たり前だろ!」
反射的に声が裏返り、
頬に一気に熱が集まる。




