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大好き
場の空気が、一瞬で凍りつく。
俺は状況を飲み込めないまま、
二人を見比べた。
郁美の掴む腕が、まだ離れない。
その力が、さっきよりも
強くなっている気がして――
俺は、言葉を失っていた。
「……ど、どうしたんだよ、郁美?」
俺がそう問いかけると、
郁美は首を傾げた。
まるで本当に、何も問題が
ないかのように。
「ん? どうもしないよ?」
にこり、と笑う。
その笑顔が、なぜか
胸の奥を冷やした。
「ただ私はね、達也くんのことを――
すっごい、すっごい、すっごい、すっごい……」
言葉が、止まらない。
「すっごく愛してて、
大好きで、好きで好きで好きで……
大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大好きで、
愛してるだけだよ?」
抑揚のない声。
感情を詰め込みすぎて、
逆に平坦になっている。
俺は言葉を選びながら、
ゆっくりと返した。




