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変化
喜びもせずただ、
その視線は、明らかに怒りを帯びていた。
何をそんなに睨んでいるんだ?
そう思って視線の先を追うと、
反対側に、俺の手を握ったままの桜がいた。
次の瞬間だった。
「ねえ、桜ちゃん!!」
郁美の声が、鋭く空気を裂いた。
今まで一度も聞いたことのない、
低く、刺々しい声色。
「達也くんから離れてよ!!
近寄らないで!!
手、握らないで!!」
あまりの剣幕に、桜は目を見開き、
完全に面食らった様子で固まる。
「ど……どうしたの、郁美……?」
「どうしたの? じゃないよ!」
郁美は一歩踏み出し、
噛みつくように言い放った。
「達也くんに色目使わないでって言ってるの!」
「つ……使ってないよ……?」
桜は慌てて俺の手を離し、
両手を小さく振る。
「使ってたよ! さっきまで!」
郁美は一切引かない。
「いい?
これから達也くんの
半径五メートル以内に入らないで!」
――……え?




