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両腕
「おい!! 待て!! この野郎!!!!」
背後から叩きつけられるような怒声が響いた。
けれど、もう振り返らなかった。
俺たちはなりふり構わず、ただ走った。
息が切れ、足がもつれそうになっても、
止まる理由はどこにもなかった。
――光の門。
一人、また一人と、
吸い込まれるように潜り抜けていく。
次の瞬間。
気づけば俺たちは、四人並んで立っていた。
見慣れたはずの風景――
多摩センターの駅ビルの下。
人の気配。
コンクリートの冷たさ。
現実の音。
……帰ってきた。
帰って来れた。
そして――帰ってきてしまった。
胸の奥に、重たいものが落ちる。
助かったという安堵と、
置いてきたことへの後悔が、
同時に押し寄せてくる。
父の姿が、脳裏を離れない。
あの声も、あの光景も、
何一つ消えてくれない。
俺は、これから……
どうすればいいんだろうか…
ふと気づくと、
郁美が俺の腕をぎゅっと掴んでいた。
「郁美!腕!」
郁美の両腕が元に戻っていた。
そのことにみんなが気づいて
歓喜に湧く最中、
俺は自分の腕が、
異様なほどの力で
掴まれていることに気づいた。
そして――
郁美の様子が少しおかしい。




