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砂糖産業は一大事業として大成功をおさめ、日常に砂糖が使われだした頃、わたしは、15歳になった。エリンは17歳だ。そして何故かわたしはお貴族様の学校に行くことになった。王宮からの推薦状が届いたからだ、逃げられない。
エリンは街の学校を卒業しただけで、お貴族様の学校には行っていない。
ユーリと結婚したからだ。
モーリさんのご家族とはことあるごとに交流してきた。二人っきりのわたしたちを同情したのか、庇護下に入ったからなのか、めいいっぱい構っていただいた。
そのうち、魔道具馬鹿のユーリが、いつでも素敵ね、凄いねって褒めてくれるエリンのことが気に入りだした。
エリンにとってもユーリは優しいお兄ちゃん。物づくりの話で盛り上がったり、便利な魔道具プレゼントしてもらったり、お菓子を一緒に作ったり、4歳年上のユーリは焦らず、魔道具馬鹿なのに、エリンの心が成長するのを待ってくれた。
花がほころぶようにエリンが笑う。糸目がとってもセクシーなのと凄い魔道具を作る姿が素敵なんだとエリンが惚気る。
モーリさんが義父さんでサマンサ先生が義母さんになる。カーラが義姉でサーラは義妹になる。エリンにとって、強力な味方になると思うとほっとした。
あの日、衝動的にエリンを助け無理やりうちの子にしてしまったけど、本当にあれで良かったのか何度も自問自答してきた。答えはでなかったけど。
助けたからにはと、できるだけ幸せになってもらいたいと甘やかして育ててきたけれど、エリンは我儘にもならず、ちゃんと好きな人を見つけて、ちゃんと自立できた。良かった。本当に良かった。
セバスとマーサはエリンについていく。ユーリは結婚を機に、モーリ商会の近くに家を借り、魔道具職人として独立するそうだ。まぁ納品先はモーリ商会なんだけど。
セバスとマーサは自宅から近くなったので、夜は毎日自宅に帰ると聞いた。新婚さんの家であまり邪魔はしたくないだろう。
エリンの結婚式は頑張った。ドレスはこっちの世界は白いドレスじゃなくて、綺麗目の色であれば好きな色で良いみたいだ。
エリンの好きなピンク色にした。デザインから布からレースから全部こだわって手縫いで頑張った。
式は教会で誓いの言葉を神様に、披露宴は身近な家族だけだったけど、エリンは始終嬉しそうだったし、ユーリは緊張していた。
エリンおめでとう。
家を出る前の日二人で女子会をした。最後の最後エリンはわたしに抱き着いて泣いた。でも、これが一生のお別れではないよ。これからもよろしくエリン。
エリンはその後ユーリの仕事のアドバイス(昔わたしが音楽録音できる機械欲しいと言っていたのを覚えていて、ユーリに伝えたりして新しい魔道具ができたり、わたしのこっちの世界あったら良かったのにシリーズをちゃんと覚えていて順番に作っているようだ。)をしたり、マーサと一緒にお人形作りを始めた。
エリンのお母様のお人形を基本に、着せ替えのドレスや靴、おままごと用の小物、これは売れると、見込んだサーラが売ってくれているのだと言う。時々フェルトや総柄の布の注文が入る。
エリンは自分の子どもが生まれたら、絶対に可愛い人形を作るのだと張り切っているらしい。子どもが生まれたらまたいろいろ作ろうね。