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そしてわたしが一人暮らしに戻ると、みんなが心配するから、お貴族様学校の寄宿舎に入ることにした。まぁ転移で自宅にしょっちゅう帰ってくるつもりだけどー。
お貴族様の学校といっても、読み書き計算は簡単だ。歴史や地理は街の学校で学んだので大丈夫。ダメなのはダンス。音感がないから授業は鬼門かもしれない。
テンションがあがるのは、魔法と錬金術の授業。今から楽しみ。
授業は大学みたいに、選択制になっているので、興味のあるものは学べるみたい。せっかくだから、魔物学でも学ぼうかな。素材とかドロップ品とか、お肉とかも食べられるものがわかるかもしれない。刺繍も独学だから、ちゃんと先生に学びたいな。
入学時のテストは上位十位には入っていた。こっちに来てから馬鹿ほど読んだ読書の成果は出ている。
魔法の実技は土魔法で壁を作って防御力を見てもらった。攻撃魔法はいまだ使えないのよね。怖いし。
見た目は15歳、中身は40歳を超えているわたし、エリンとサーラがいるから今更ここで友達を作る気はなかったので、いろんな先生と仲良くなっていった。
先生方の方が精神年齢近いんだもの。
錬金術師の先生とはマジックバッグについて熱く語った。
市販の手作りマジックバッグがよれよれの薄汚れたものが多い理由がはじめてわかった。
それはマジックバッグを作れる上級錬金術師が慣れない皮のバッグを手作りしているからだそうだ。
マジックバッグの元になる皮バッグを作る時間がかかるから、マジックバッグがたくさんできないのだとか…。バカがいる…。
錬金術の先生には、バッグは皮工芸の得意な人に作ってもらって、出来たバックをマジックバッグにすればいいじゃないですかって言えば、目を見開いて驚いていた。
最初から全部自分で作るものだと思っていたそうだ。市販のバッグがマジックバッグになるし、布のバッグでもマジックバッグにできるって言って、お財布代わりに使っている小さめの巾着袋みせたら驚いていた。迷宮品と同じ皮じゃないとダメだって思い込んでいたらしい。
いろいろ試せねばって言っておられたから、マジックバッグが世に出ることも多くなるかもしれない。
刺繍の先生とは新たなステッチとか可愛いワンポイントの刺繍の話で盛り上がった。
いちごやサクランボ、りんごなど果物を刺繍することはなかったらしい。子猫や子犬もお見せしてみた。
あれもこれも可愛いよと先生を唆してフルーツバスケット柄を一緒に刺繍したのも楽しかった。
先生はこれらを他の方にも紹介しますわねっと鼻息荒かったので、いちご柄のハンカチとか子猫のポーチとか出回ったりするかもしれない。可愛いが増えるのは大歓迎である。
一番仲良くなったのは、魔法おたくの魔法学の先生だ。ちなみに先生は35歳で独身で、子爵家の三男。攻撃魔法が使えなくて宮廷魔術師になれなかっただけで、それ以外魔法の知識量は凄い。もじゃもじゃの黒い髪に無精ひげ。瞳も黒に近い。そして眼鏡男子だ。日本人みたいで親しみがわくのも一緒にいて落ち着く要因なのかも。
「マヤ、状態異常無効の付与のついたピアスって知ってる?」
「知ってるよ。わたしが付与しているシリーズだから。」
「マヤが作ったのか、どうりで出来がいいと思った。それ買える?」
「先生がつけるの?」
「うんにゃ、狙われている生徒に渡そうかなと。」
「狙われている?何に?」
「たぶん、魅了使いだ。あれ。ほら。あそこ。窓の外のベンチの傍で下級貴族に取り巻かれている彼女。男爵家に養子にはいった庶民だったと申請が出ているらしい。マヤには見えないか。ピンクっぽい靄。」
先生が指さす先には、研究室の窓から見える位置で5人ぐらいの男子に女子が一人。男子は相当女子に傾倒しているように見える。逆ハーレムだ。あれ。
「ピンクの靄は見えないです。」
「そうか、マヤには見えそうだと思ったんだけどな。最初は男爵家の嫡男で、次が子爵家、今は伯爵家が一人入っている。だんだん上位貴族の嫡男で顔のいい奴ばかり狙われている。
ただ、伯爵家より上位のやつも狙われたんだけど、相手にされていないようで、気になってみていたら、彼女を無視できる奴は全員ピアスをしていたのが気になってな。その中でも魔法学を愛している奴に聞いてみたら、父親が王宮からいただいてきたのだとか。
状態異常無効の付与がされていて、この状態異常には、毒、麻痺、魅了、睡眠、石化が防げると聞いてびっくりした。こんな小さな石にこれだけの防御ができるものはなかなかないからな。さすが王宮だなと。でも、王宮につてのない俺はどうやって手にいれようか悩んでいたところだ。」
そういえば、献上後に、王宮には何度かピアス納品したね。
「モーリ商会でも売っているのですが、先生が欲しいのであれば、ここに出せます。」
マジックバッグから出している感じで1セット複製して机の上に出してみる。1セットは20個並んでいて綺麗なんだよね。ダイヤモンドからサファイア、ルビー、真珠、ブラックオパール等20種類。きらきらカットから落ち着いたカボションカットのものなど取り揃えています~って説明したら呆れられた。
「先生が必要なら全部お渡ししますよ。いくらでもわたし作れますから。」
魔法おたくの先生には少しずつだけど、わたしが使える魔法を告白している。どの魔法も先生にとって研究材料でがっついてくれるので、わたしも自分の魔法について学んでいるところ。
先生はMPも多いし、センスもいいので、わたしが告白した魔法を例えば加工魔法は先生もいつの間にか使えるようになっていた。なんだか凄い人なんだと思う。実はひそかに尊敬している。
「ピアスもらえるんなら助かる。支払いは分割か保留にしてくれ。今すぐ20個分払えない。」
「いいよ。先生、生徒の危機を助けるために使うんでしょ。お支払いらないから。その代わり、この件の結果を教えて欲しい。」
「カッコ悪いけど、無いものは払えないからここは感謝しとく。20個あったら、狙われそうな奴に配れそうだよ。」
「結果教えてよー。」
「承知した。早速配ってくるわ。」
先生が研究室から足早に出ていった。
わたしは窓に張り付き、逆ハーレムを確認する。
とうとうか、異世界あるある魅了持ちのヒロインか。ピンク色の髪じゃないけど、テンション上がる。
残念ながら上位貴族のめぼしい方々はピアスをしているのなら、今後どう展開するんだろう。気になる。
わくわくしていたが、数日後には案外あっさり終わってしまった。
ピアスをしていた第一王子の側近に近寄る女。ピアスがちりちりしたそうだ。王宮に報告し、上級鑑定士が先生の助手として学校に出張ってきて、彼女が隣国のハニートラップであると見抜いた。
拘束された女は、上位貴族をめろめろにして、砂糖の秘密を探るために派遣されてきたのだと白状したらしい。
もう少し時間があれば魅了魔法が効かなくても自分の魅力で落とせたはずなのにって悔しがっていたそうだ。
ちなみに15歳だと編入してきたけど、実際は23歳で、結構際どい手も使っていたと言う。
上位鑑定士と先生はお友達だったみたいで、いろいろ教えてくれた。
魅了魔法にかかった生徒は先生が一人ひとり解除していったらしい。見つかったのが早かったので、それほど重症の人はいなかったみたいで婚約破棄した人もいなかったそうだ。良かった。良かった。
ただ、悪役令嬢がいなかったのがちょっと残念。いたらこっそり見たかった。ハニトラの女は王宮でなんとかするらしい。隣国との交渉につかうのだとかなんとか。
実際問題魅了魔法って、本当に実在するんだなって学んだ一件だった。
この後モーリ商会で、ピアスがよく売れた。下級貴族も危機管理として買うようにしたからだそうだ。小さな石だしお安めにしているので、気に入ったものをつけてくれ。
ちなみにわたし自身はピアスの穴を開けるのが怖くてやっていない。先生も同じ理由でピアスしていなかったので、状態異常無効の付与つきの銀にオニキスを入れた指輪をプレゼントした。
こっそりひっそりお揃いを作ったのは許して欲しい。
でもわたしはそれを身に着けていない。作っただけ。精神年齢40過ぎたのに、35歳の先生に好意があるなんて恥ずかしい。
この想いは秘密なのだ。先生も見た目15歳で先生より20歳も若いわたしのことはただの気の合う生徒扱いのままなので、気が楽だ。それでいいと思う。




