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エリンと一緒に学校に行ったら、サーラが駆け寄ってきた。
「マヤ、読んだ。あのひろいんのお話。面白かった。あんなの初めて。お話って初めて。もう家族みんなで読んではまったよ。だから、あのピアス欲しい。家族分売って~。」
「サーラ、あれはお話で現実じゃないよ。本当にはならないと思うよ。でも、まぁあんなのが出たら怖いなって思ったのは事実だけど。」
「現実じゃなくてもピアスはもともと可愛いから欲しいかな。それと、お話ってあんなに面白いんだね。夢中になって、みんな集中して読んだよ。他にもあんなお話ってあるの?」
物語の話になったらエリンの目が輝きだした。
「サーラお話あります。マヤがくれたの。魔女の女の子が修行をするお話と、女神様が降臨する女の子が頑張るお話、竜の住む星で庶民として育った王女様のお話持っています。全部面白いです。何度読んでも面白いのです。」
「いいな。エリン、貸してくれる?」
「いいよ。返してくれるのなら貸せますよ。」
「サーラ、お話の本って少ないの?」
「マヤ、本気で言ってる?お話の本って、マヤが貸してくれたのが初めてだよ。普通本って、勉強するためのものだもの。」
娯楽の本がないなんて。それは寂しい。
「娯楽が少ない?」
「ごらく?って何?」
「遊んだり、楽しんだり、わくわくしたり、どきどきしたりするようなものなんだけど。」
「この間貸してくれたお話がごらくっていうのであれば、ほぼないと思う。」
「じゃ、毎日何しているの?」
「ご飯食べて、勉強して、お金儲けのこと考えているかな。あ、お金儲けのことを考えている時は、わくわくしたりどきどきしたり楽しいよ。」
サーラさすが商売人の子。お金儲けが楽しいのか。でも、楽しいことがないなら、少し作ってもいいか。
わたしが娯楽を考えている隣で、エリンとサーラが物語の感想をお互いに言い合っている。
サーラが本を借りに家まで行くと言い出したので、複製したものをマジックバッグの中にもともと入っていたような感じで取り出し、渡してあげた。
とりあえず1種類だけね。自分で読もうと思ったから入れていたっていうことで。サーラが感激して読みだした。いや、もうすぐ授業だよ。
授業中も魔女の少女が修行する話を読んでいたサーラをサマンサ先生は怒らず、早く読み終わったらこっちに貸してと耳打ちしている。まぁ学校といっても自習がメインだし先生お母さんだし、いいのか。いいんだろうな。
ピアスは次の日全種類渡すことにした。全部並んでいると可愛いし。献上した分を複製しただけなんだけどね。家族それぞれ好きなのを取ったら、残りはモーリ商会で売るそうだ。
売り上げは口座に入れてくれるらしい。まいどあり。