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初めての作品です。よろしくお願いします。
父のお葬式が終った後に母のお葬式が続いた。
一連の役所の手続きを済ませ、二人の納骨も終わった。
一人っ子だったので、遺産の分配の心配もない。
親戚の方々に常識的な形見分けをして、それほど期待されていたわけじゃないので皆納得して帰られた。家の中に誰もいない。自分だけ。線香の香りがする。
父と母は仲が良かった。
そして二人してほぼ同時に癌になり、同じ病院に入院し、ほぼ同時期に亡くなった。
最後まで仲が良かった。
2人の諸所の手続きや看病のため、仕事を辞めて実家に戻って半年、目まぐるしい日々だった。
それも終わり。
時折遠くの方から電車の走る音が風に乗って聞こえてくる。
駅からは徒歩15分。
まずまずの立地のマンション。
持ち家で既にローンは完済したと聞いている。
自分の貯金と退職金、親の蓄えと癌保険の支払いで、辞めた仕事の年収の数年分ぐらいはある。
しばらくは仕事をせずに暮らしていける。というのか、仕事をする気力が今はまったく残っていない。
食欲はなかったけど、惰性で冷食を温めて食べる。
そして惰性で眠る。