おまけ 2
翌日、事前の連絡通りにセーリオは挨拶にやって来た。
彼は多少の緊張すら露わにせず、それどころか和気藹々と会話する余裕もあった。騎士団長相手という事を差し引いても、恋人の父親を前に物怖じしない態度は流石の一言である。
彼の働き振りを知る父が事前に人柄を伝えていたためか、母も嬉しそうに出迎え、会合は和やかに終了した。
結婚はまだ先なのに気が早いと文句をつけていた私も、恋人が両親に受け入れられた事に、気がつけば胸を撫でおろしていた。
無理くりもぎ取った休暇だろうから、事が済み次第帰るのだろうと思いきや、もう一日ゆとりがあるとセーリオは言う。
どんな手段を使って融通をつけたのか。聞きたくもあったが、知らないままの方が良い事だってあるだろう。犠牲となった騎士には祈りを捧げておく。
意識が他へ向いていた私に焦れたのか。母がセーリオに提案する。
「アルカイコ様、よければ泊まっていらして。もっとお話しが聞きたいわ」
「都合が悪くなければどうかな、軍曹」
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
事前に話題を打ち合わせていたのかと疑いが過るほど自然な着地であった。この間、私は無言である。
父の申し付けにより、セーリオと共に客室へと移動したのだが、部屋に到着するなり彼の額からは滝のような汗が溢れだした。
「急病か!?」
「見ないでくれ。緊張の糸が切れただけだ……」
羞恥からか「情けない……」と顔を手で覆ってしまうが、耳の赤みは隠し切れていなかった。
その手を退かし手巾で汗を拭えば、セーリオはますます頬を紅潮させる。
その様子が余りに可愛く感じられ、つい笑ってしまった。
「……滑稽だと思っているか」
「いいや? さらりとこなす姿は格好良くて素敵だけれど、今みたいに恥じらう姿も私は好きだよ」
「そう、か」
額はあらかた汗が引いたが、彫りが深いからか目頭まで汗がたまっていた。どうせならここも拭ってやろう。
「セーリオ、目を瞑って」
「……っ!」
ぎゅうっと力強く目を閉じるせいでやりづらい事この上ないが汗が入るよりいいだろう。さっと終わらせて声を掛ける。
「ほら、目元の汗も取れたぞ。……どうした? やっぱり具合が悪いのか?」
「聞かないでくれ……」
頭を抱えて項垂れる彼を不思議に思ったが、本人が言うのだ。茶でも淹れてくると告げ、私は部屋を後にした。
──そうして飲み物を手に戻る頃になってようやく、自分がやらかしていた事に思い至った私は、部屋へ入るに入れなくなるのだった。
渋くなってごめんと謝れば、「お前が淹れただけで美味く思えるからいい」と返され、今度は私の顔が赤く染まった。
まだ続きます…!




