第三話
道生は、ワンルーム・マンションに住んでいた。独身男の色味の少ない、殺風景な部屋だった。まだ荷解きの終わらないダンボール箱がいくつも置いてあり、部屋は倉庫然としていた。ベランダの窓からは、中央広場が見渡せた。
チェストの上には、簡易な仏壇があり、位牌が二つあった。遺影代わりなのか、楽しそうに手をつなぎ、渋谷の交差点を渡っている若い男女の写真が飾られていた。
道生は、その前に丸椅子を置いて、報告を始めた。
―― 父さん母さん、喜んでくれ。今日やっと妹に会えたよ。
こんな方法しか思いつかなくて、時間かかったけど。
再会に感動して、おもわず大声で泣いてしまった。
でも、うまくやれた。やっとスタートだ、これからだよ。
大丈夫だ、オレの正体には気付いていない。
遺言だからね、死んでも守り通すから、安心してくれ。
近くで見ると、ますます母さんに似ているよ、写真とそっくりだ。
ちょっと想定外の事態に緊張したけど、うまく対処できた。
オレは消防士だから、緊急時の対応には強いよ。
近くの喫茶店で話しも出来た。タメ口だよ、妹は。
オレと同じ左利きだった。そういう所、似るのかな、双子だと。
連絡先も聞いた。興信所で調べたのと同じだった。
鬱病って報告で心配してたけど、会話は普通にできる。
急に泣き出したりして、時々、精神が不安定になるみたいだ。
可哀相に。もっと早く、力になってやりたかった。
また会う約束もしたよ。
これから、少しずつ親しくなって、助けてやらなきゃ。
不幸な境遇から連れ出して、幸せにしてやらなきゃ。
それが、兄としてのオレの使命だから。




