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小説のハウツー  作者: Lauro
38/50

夜の孤児院

フエルテをライザに渡した張本人であるラシェルを見たが、特に何かライザが期待していたような反応は得られなかった。

「そうよ?バレたら捕まるから実力疑われないように頑張りなさい?」

なんとも無責任な返事が返ってきた。

「え、え?え?ちょっと待って、落ち着かせて………そうよぉっ?!お姉さん今そうよって…!?」

ライザは悪びれもしないラシェルに詰め寄った。

「あの…」

「ちょっとゴメン今取り込み中だから!」

ライザは右耳に入ってきた女性の薄明な声を遮った。

「おじさん!話し聞いてよっ」

「おじさんっ?!ぼく今俺のことおじさんって言ったよね!?」

女性の次に聞こえてきた大人の諍いに嫌悪を示すような子供の声に視線を引っ張られた。

「あれ?君達は昼間の…」

ラミエルもライザの視線を追っていくとそこには夜の闇の中に漂う蒼白い肌をした儚げな女性が立っていた。夜風が彼女の長く色素の薄い髪を遊んで走り去っていく。

「あの時は本当にありがとうございました。」

女性は純白の法衣に包まれたその細い腰を折ってライザに深々と頭を下げる。

「いえ、ご無事で何よりです。どうかされたんですか?」

メリナも和かにお辞儀と質問を返した。

「えぇ、ここでは人目をはばかるので宜しければ私達の孤児院に…」

女性はそう言ってライザ達を導いていった。


「ここが孤児院ですか?」

自警団の詰所の前から女性についていっておよそ5分程、少しロンキドスの街の大通りから離れた所にその建物があった。しかし、夜であるせいかラミエルの想像するような子供の姿はなかった。

「そうだよ、僕達はここでみんなと一緒に暮らしてるんだ!」

少年は本当に邪気のない屈託の無い笑顔を浮かべた。変な話しだが、孤児院というのはあまり子供にとって良い環境だという偏見があったためであるが。

「ここは、周辺の街で親からの虐待や争い等で家族を失ってしまった子供が集う孤児院なんです。」

そう女性は廊下をライザ達を率いて説明した。言われてみると、廊下には子供達が描いたであろう素直な表現の絵が壁に飾られ、開いたドアの隙間を覗き込むと子供達が安らかな寝息を立てて夢の中の世界でも遊んでいるようだ。

「それで、どうして私達をここへ連れて来たんだ?」

ラシェルが招きいれられた机の多く並ぶ教室のような部屋で改めて女性に質問した。

「はい、その前に申し遅れましたが私、ロンキドス孤児院の院長をしておりますソフィアと申します。先程は内のリュクを助けていただいて本当にありがとうございました。」

ソフィアと名乗った女性はリュクの肩に後ろから手を起き深々と頭を下げた。

「あ、いえ…」

ライザはこういう風に人から改まって感謝されるのには慣れておらず、色素の薄い女性の瞳から視線を逸らして誤魔化した。

「おじさんは名前なんて言うの~?」

そこにリュクと紹介された少年は直球でライザに聞いてきた。

「このおじさんはライザというお名前なんですよ、私はメリナって言います。よろしくお願いします、リュク。」

メリナはライザが彼女を二度見するのも気にせずにリュクの蒼白い瞳と彼女の夜のような穏やかな瞳を屈んで目線を合わせた。

「おい、メリナ……リュク、だっけ?俺はおじさんじゃないからな。俺まだ18だからな!」

ライザはリュクの癖のある少しウェーブがかかった銀髪をくしゃっと乱暴に撫でる。

「あれ?ライザ、私と同い年なんですか?」

メリナは意外な事実にライザを見上げる。彼女の肌の艶からこれで同い年かと改めて思い知らされてしまう。

「歳の割には老けてるよねライザって…因みにボクは15歳のラミエルって言うんだ。よろしくね、リュク!」

ラミエルはライザの胸に言葉の槍をグサリと刺しながらリュクと握手を交わす。

「老けてるって言われんの気にしてんだぞ…」

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