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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
07.黄色い魔法少女

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第53話 密かに企む

「――、――。こうして、どっちつかずのこうもりさんは、獣からも鳥からも追放されましたとさ」

「こうもりさん、かわいそう」

「裏切り者とはいつもこういう運命になるものさ。さて、次はどの絵本を読んであげようか」


 久美子お姉ちゃんが机に並べた絵本を眺める。ころねは、研究室の扉を向いた。ボスがやってくる気配はない。


 本当は、ころねはアジトの会議室に行きたかった。いつもみたいに李依奈お姉ちゃんの教育を受けるつもりだったから。だけどこーすけにダメだと怒られた。

 どうしても行きたいと訴えたら、アジトの研究室ならいい、と久美子お姉ちゃんと一緒にここに置いて行かれた。李依奈お姉ちゃんに会うのはダメだけど、久美子おねえちゃんなら会ってもいいとボスは判断したみたいだ。


「ころね、次はどの絵本を読みたい?」


 久美子お姉ちゃんが聞いてくる。

 さっき、ボスがアジトの会議室に向かった後で久美子お姉ちゃんにこっそり李依奈お姉ちゃんに会いたいとお願いしたら、「ダメだよ」と却下された。久美子お姉ちゃんとしては、李依奈お姉ちゃんにころねが近づくのが面白くないのかもしれない。


 もし今日会えなかったら、次に李依奈おねえちゃんに会えた時にきっと怒られちゃう。だから、会いたいのにな。


「こ~ろね。アタシの美貌を前にして余所見をするなんて、いいご身分だね」

「わっ」


 久美子お姉ちゃんに目を塞がれる。戸惑っていると、耳元で久美子お姉ちゃんの声がした。


「キミは、誰かの言いなりのままでつまらなくないのかい?」

「言いなり……?」

「そう。アタシは自分の意志で李依奈様に跪いている。けれどころね、キミはボスと李依奈様の意向に従っているだけで、自分がやりたいこともせずに流されているだけ。本当にそのままでいいのかい?」


 ころねは何も言えなくなる。ボスにも、やりたいことをするといいって言われた。頭に浮かんだのは、黄色い服を着た女の子。あの子に会いたい。でも、どうしたら会えるのか分からない。何度もダークモンスターを召喚させに行ったけど、ころねがあの子に会えたのは、たった一度だけ。


「ある……けど、……どうしたらいいか、分かんない」


 ころねは久美子お姉ちゃんに、黄色い服の女の子について話をする。ころねを心配してくれたキラキラした女の子に、ころねはまた会いたい。


 ころねがお話ししたら、久美子お姉ちゃんが手を外して目隠しをやめてくれた。久美子お姉ちゃんがころねの目を見る。


「それなら、アタシが一緒に探してあげようか?」

「ほんとう?」

「嘘は吐かないさ。李依奈様に誓って、アタシがその子を一緒に探してあげるよ」

「それは我が許さん」


 振り返ると、ボスが立っていた。


「ボス」

「アロファ、やはり貴様に任せたのは間違いだったか」

「何言ってるんだ。アタシほど適任はいないよ」


 ボスは疑うように目を細める。やがて、ふよふよと小さい体を漂わせて外へ向かった。


「今日は我が現場に向かう。貴様らの持ってきた情報(データ)が正しいか、見定めるとしよう」

「信用してないなあ」

「信用してほしいのなら、それなりの態度を見せることだ、アロファ」


 ボスはそう言い残すと部屋を出て行った。


「ボスはよほどころねにここから出て行ってほしくないようだね。……ころねはそれでいいのか? 言うことを聞いて、ここから出ないでおく?」


 久美子お姉ちゃんは目を細めて笑う。

 ボスは前に、ころねに好きにしろって言った。ころねは、黄色い服を着たあの女の子に会いたい。

 だから、ころねは立ち上がった。



 ***



 もう一人の魔法少女である半田の話を終えると、みんなは困惑した様子で互いに顔を見合わせた。


「……大学生の男の子」

「偶然手違いで魔法少女に……」


 以前から半田の存在を知っていた日和と怜奈はようやく正体が分かったことに納得しつつも困惑した様子だ。


「ピンチヒッターの魔法少女なんていたんですね」

「確かにあたしたちが動けない時にダークモンスターが出たら大変だものね」


 唯香と有栖は初めて知った半田の存在をゆっくりと受け入れている様子だ。


「今日が魔法少女の集まりだと言うのなら、彼も来たら良かったのにね」

「俺もそう言ったんだが、半田本人が遠慮しているんだ」

「私たちもまだ会ったことないのよ。ねえ、日和」

「うん。一回くらいは会って、お礼が言いたいなって思うんだけどね」


 日和がしょんぼりとした様子で視線を落とす。みんなは意外と会いたがっているようだ。これなら、半田のことを説得して連れて来た方が良かったのかもしれない。今さらそんなふうに思ったところで遅いのかもしれないけれど。

 ふいに、有栖が何かを思いついたようにぱんと手を叩いた。


「今から、半田さんをここに呼んだらどうかな?」

「今から? 来てくれるだろうか」


 あまり想像がつかない。断られて終わりな気がする。


「そこは、ダークモンスターが現れたから協力してほしい、とかお願いしたらどうかな」

「……嘘を吐くのか?」

「月詠さん、それはダメじゃないかな」


 日和が顔をしかめる。俺も日和に同意見だ。嘘で呼び出すと言うことは、できればしたくない。


「嘘も方便と言うだろう?」

「私は反対よ。日和が反対しているし、半田さんのことをよく知っている守里がダメって言うなら、止めておいた方がいいに決まってるわ」

「……でも、このまま会わないのも変だよね。魔法少女の仲間なんだから。どうしよう」


 日和の言葉に、沈黙が流れる。誰も答えを持っていない。魔法少女の仲間としては会うべきだ。しかし、本人が嫌がっているところを無理やり呼ぶのはどうなのだろうか。みんな、俺と同じことを考えているのだろう。

 ――ふいに、嫌な気配を察した。


「みんな。……有栖の意見、嘘ではなくなった」

「……守里さん、それって」

「ああ。ダークモンスターが現れた」


 ――さすが魔法少女たちである。すぐにみんなステッキを構えて臨戦態勢に入った。


「俺は半田を……ミクシアを呼ぶ。みんなはダークモンスターのほうを頼むぞ」


 みんなは頷いて、立ち上がった。

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