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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
05.三人目の魔法少女
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第40話 聞きたいことがある

  活動報告書    作成者:S4ku

【魔法少女について】

 7月△日。三人目の魔法少女の人員確保に成功。

 八雲唯。13歳。日本○○県△△市□□町に在住。花園中学校の生徒。一年一組。日和の幼馴染で、日和の力になりたいという夢を持っているため、魔法少女適正あり。

 魔法少女名はマジカル☆ローゼ。蔓を出現させて自在に操るのが特徴。必殺技の時はステッキが扇に変化。


【セーフクについて】

 佐々木優亜という30代の母親と佐々木真央という1小学生の男の子の負の感情が利用され、ダークモンスターが生成された。ダークモンスターは□□町の駅前に出現。魔法少女マジカル☆チェルアと魔法少女マジカル☆リリィ、新たに加わった魔法少女マジカル☆ローゼによって浄化される。経過観察中。


【その他】

 初めてダークモンスターが2体出現した。今後も2体以上が出現する可能性があるので注意する必要あり。




 魔法少女が三人確保できた。仕事は順調である。百合の漫画や小説は半田の押し入れにあるのでいつでも楽しめる。百合について話せる仲間だってできそうだ。俺自身は何も問題はない。だけど、――。

 俺は扉の向こうを見る。


「料理って難しいですネ~……」

「琉亜は見てるだけじゃん」

「当たり前じゃないですカ。ミーは食べないんですからネ」


 半田と琉亜の声が聞こえる。俺は二人に何も言えていない。

 半田にはまだ伝えられていないことがある。半田の兄が、魔法少女の敵のボスであるということ。居場所が分かったわけではないので、話したところで不安を煽るだけだろう。

 琉亜には話を聞けていない。きっと琉亜は俺のような普通の妖精が知らないことを知っている。妖精がいらないと琉亜が思っているのも、理由がある様子だ。


 ――知りたいですカ、咲センパイ。


 琉亜の声を思い出す。一度遮られてから、改めて聞く勇気がない。いったい琉亜から何が飛び出てくるか全く予想がつかなかった。


「……はあ」


 ため息をついて、考えていたことを忘れる。

 そもそも、俺は魔法少女たちが仲良く楽しく過ごしている様を楽しみにここに来たのだ。俺の仕事自体は順調に進んでいる。余計なことは考えなくていい。ただ、命令に従えばいいのだ。そして、命令に違反しない程度に百合を楽しめばいいのだ。


 そういえば、最近は百合を摂取できていない気がする。だからこんなにも心が不安定なのかもしれない。

 心の安寧を求めるように、押し入れに入れてある百合本を手に取った。


「そろそろご飯ができるから、咲を呼んできて」

「ラジャー!」


 琉亜の元気な声とともに部屋の扉が開け放たれる。


「咲センパイ、ご飯ができましたヨ!」

「ああ、今行く」

「ストップ! 咲センパイ、手に持っている百合本は置いて行ってください」


 俺は手元に目線を落として、ふっと笑う。


「俺にとっては心の栄養だ」

「相変わらず百合のことになるとトチ狂ってますネ。また半田さんに没収されますヨ」

「……置いてくる」

「最初からそうして欲しかったですが、良しとしましょうカ」


 俺は琉亜と半田の元へ向かう。夕飯のいいにおいがした。俺は隠し事をしているのに、半田や琉亜は俺に優しくしてくれる。そのズレが胸をちくりと刺す。

 ずっと隠しているわけにはいかない。どこかで、ちゃんと話さなければ。そう心に決めて食卓に着いた。



 ***



「咲の奴、元気ないよな」


 半田さんが唐突にミーに話しかけてきた。

 ご飯を食べ終わって咲センパイは早々に半田さんの部屋に戻っていった。最近妖精の国から支給されたパソコンとやらを試しに使ってみるらしい。

 別に不自然なところはない。ミーは首を傾げる。


「そうですカ?」

「だって、前は隙あらば百合語りしてたけど、最近はしてこないから」

「半田さんの判断基準はそこなんですカ」


 けれど確かに、言われてみれば最近百合語りする咲センパイを見ていない気がする。けれど、それをしないことのがどれだけ異常なことなのかまではミーには分からない。


 ミーが半田さんの家に住み着いてからは、ミーに対しては指導ばかりでそもそもそういう話をしているところをあまり見たことが無いのだ。半田さんが引っかかっていることのほうが、ミーには理解できない。


「半田さんが百合本を買うなって厳しく言ってたからじゃないですカ?」

「……それは先月の話だし。もう少しで今月のバイト代が入るからもう関係なくなるよ。琉亜こそ、咲のことを困らせてるんじゃないのか?」


 心当たりがないこともない。前に、咲センパイに妖精は必要だと思うか問いかけた。咲センパイは必要だと即答したが、その後からずっともやもやしたような顔をしていた。

 きっと咲センパイなりに引っかかっていることがあるのだ。でなければマジメでカタブツ咲センパイが戯言にも聞こえるミーの話を聞こうだなんてしない。だって、他のみんなは聞いてもくれなかったのだから。


「琉亜のその顔は、心当たりがあるって顔だな」

「気ノセイデスヨ~」

「カタコトすぎるって。まったく妖精ってみんなこうなの?」


 ミーはムッとする。半田さんはそのつもりはないだろうけど、妖精の国にいる妖精たちと一緒にされたくなかった。


「ミーはみんなと違いますヨ!」

「そういえば、琉亜は問題児過ぎて咲のところに送られて来たんだもんね」

「ぐぬぬっ、言い返せないことを……。で、でもミーのこと嫌いじゃないですよネ?」

「なんでそうなる? まあ、嫌いじゃないけどさ」


 ミーは半田さんの頭に乗っかり、見下ろす。


「ミーのことを好きになるのは勝手ですけど、妖精と人間ですし、ミーは返事はしませんヨ?」

「こいつ……。だいたい琉亜だけじゃなくて、僕はそもそも妖精のこと好きなだけだし」


 一拍、思考が停止する。きっと深い意味はないはずだ。咲センパイを見て半田さんはきっとそう思っているのだ。妖精の正体を知ったら、きっとそんなふうには思わない。けれど、どうしても理由が聞きたくなってしまう。だって、あまりにもはっきりと妖精を好きだと半田さんは告げたから。


「どうしてですカ?」


 半田さんが不思議そうにミーを見てから、ああと納得したように頷く。


「そういえば、琉亜には話してなかったな。僕の兄貴が前に魔法少女……あれは魔法少年か……とにかく妖精と一緒に動いて敵と戦ってたんだよね。その時家にいた妖精と、僕は良く話してたんだよ」

 頭が追いつかない。授業をサボっていたミーでも、男が魔法少女に選ばれないことは知っている。どうして半田さんのお兄さんが魔法少女ならぬ魔法少年をしていたのか。そもそも、日本で昔にも魔法少女を集めて戦っていたなんて話は聞いたことがなかった。


「オニーサンと一緒にいた妖精って、誰か分かりますか?」

「うーん……確か、英太って言ったかな」


 ミーは目を丸くする。だって、その人間名は、管理官が名乗るものだったから。

 まさかの繋がりにミーの心臓がバクバクと嫌な音を立てる。聞くのが怖い。だけど、確かめずにはいられなかった。


「半田さん、もしかしてその妖精さん……こんな話をしましたか」


 ミーは半田さんに打ち明ける。いつの日か居残りの時に聞いてしまったお偉いさんたちの話を、誰にも耳を傾けてもらえなかったを、ミーは人間の半田さんに全て話した。

 ミーの言葉に、半田さんはあっさりと頷く。


「ああ、うん。知ってるよ。むしろそれを聞いて、妖精ってすごいなって思ったね」


 半田さんは、まるで世間話の続きのようなトーンでミーに告げた。

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